【閲覧注意?】の血みどろ絵も!全作品撮影OKの「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」が京都文化博物館で開催

関西ウォーカー

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幕末期に活躍した浮世絵師・歌川国芳(うたがわくによし・以下国芳)。卓越した画力と奇想天外な発想で、現代にもファンが多い。そして幕末から明治にかけて活躍し「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年(つきおかよしとし・以下芳年)は、近年若い人を中心に人気が再燃している注目の絵師だ。

「芳」ファミリーの作品150点が一堂に

歌川国芳「朝比奈三郎鰐退治」。第1章の展示。力自慢の朝比奈三郎が鰐(ワニ)を生け捕りにしたという伝説を描いた作品。当時のワニはサメのことだが、国芳は現代で言うところのワニと肴のイメージを融合させて描いた(名古屋市博物館蔵)

この2人に共通するのは「芳」の字。芳年は国芳の弟子であり、その画風は国芳の奇想の上に、和洋の融合を推し進めたことでも高く評価されている。この国芳と芳年、さらにそのほかの国芳の弟子たちの作品150点を一堂に集めた展覧会「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」が京都文化博物館で、2022年4月10日(日)まで開催中だ。

本展で展示されるのは、名古屋市博物館が所蔵する尾崎久弥コレクションと高木繁コレクションから抜粋したもの。国芳、芳年のほか国芳の弟子の落合芳幾や歌川芳藤など国芳門下の作品がそろう。

歌川国芳「忠臣蔵十一段目 両国橋勢揃図」。第1章の展示。仮名手本忠臣蔵の11段目、義士たちが両国橋のたもとに集結したシーンは国芳初期の傑作。(名古屋市博物館蔵)


有名ヒーローを描いたダイナミックな作品や、印刷技術の粋を集めた血みどろ絵も

今回の展示は5章から構成される。第1章は「ヒーローに挑む」。国芳の出世作である武者絵をはじめ、歴史や物語に登場するヒーローたちの姿を描いた作品が並ぶ。特に3枚の紙を横長に並べた3枚続きの作品は、迫力満点でドラマチックだ。3枚続きの手法は国芳以前からもあったが、国芳の大胆な構図や描写力は画期的だった。ここではそうした作品を間近に見て、国芳やその弟子たちが、どんな風にヒーローを描いたのか、見てほしい。

歌川国芳「弁慶が勇力戯に三井寺の梵鐘を叡山へ引揚る図」。弁慶の力自慢伝説を題材とした作品。弁慶も当時のヒーローだった(名古屋市博物館蔵)


また、今回の展覧会では“閲覧注意”的な作品も展示されている。それが第2章の「怪奇に挑む」だ。ヒーローと対峙する怪奇を描いた作品や、血みどろ絵と呼ばれる作品が目を引く。なかでも注目は、いずれも国芳の弟子である芳年と落合芳幾が描いた「英名二十八衆句(えいめいにじゅうはっしゅく)」。芝居から題材を得た作品だがグロテスクな描写があり、リアリティのある表現に思わずくぎ付けになる。

落合芳幾「英名二十八衆句 国沢周治」。第2章の展示。国定忠治の伝記をもとに描かれた作品。生首が描かれているが、英名二十八衆句では比較的マイルドな描写(名古屋市博物館蔵)


だが描写の残虐さだけでなく、背後のストーリーや当時の印刷技術などにも目を向けてほしい。たとえば、血糊を表現するために、絵の具に膠を混ぜていたり、雨の描写に細やかな線が描かれていたり、当時の浮世絵の印刷技術の粋を集めた繊細な表現も見どころの一つだ。

この第2章を飛ばして先に進めるエスケープルートが設けられているので、グロテスクな表現が苦手な人もご安心を。が、秀作ばかりを集めた章でもあるため、見逃すのはちょっともったいない気もする。

歌川国芳「相馬の古内裏」。第2章の展示。妖怪退治に訪れた大宅太郎光国と滝夜叉姫を描く。巨大な骸骨は骨格の描かれ方もかなり正確。よく「がしゃどくろ」と称されるが、こちらは昭和に入って登場した妖怪(名古屋市博物館蔵)


妖艶な芳年の美人画にドキリ

第3章の「人物に挑む」では、美人画や役者絵などが集まる。この章では国芳の描く美人と芳年の描く美人の違いに注目だ。国芳の描く美人は面長が特徴。元気でおおらかで、はつらつとした女性の姿は「現実にもこんな人いそう」と思わせてくれる。一方、芳年の描く女性は妖艶で現代的。「芳」のDNAは感じさせつつ、それぞれの個性も際立つ作品群だ。

歌川国芳「文月の七夕」。第3章の展示。当時の七夕の様子をよく伝える(名古屋市博物館蔵)

月岡芳年「暗さう 明治年間妻君の風俗」。第3章の展示。行燈の光を調節しようとする女性の妖艶な姿を描く(名古屋市博物館蔵)


第4章は「話題に挑む」。雀の遊郭見学を描いた国芳の「里すゝ゛めねぐらの仮宿」は、火災で焼けた吉原遊郭が別の場所で仮営業を行っていることを宣伝した浮世絵。遊女絵の出版が禁止されていたため雀を擬人化している。絵の中からおしゃべりが聞こえてくるような、ユーモラスな表現はさすが国芳。ほかにも亀の顔が歌舞伎役者の似顔絵になっている「亀喜妙々」など、当時の世相や話題を表現した作品は見どころ満載だ。

歌川国芳「としよりのよふな若い人だ」。第4章の展示。顔や髪、着物とすべて人の体を寄せ集めて描いた国芳お得意の「寄せ絵」(名古屋市博物館蔵)

歌川国芳「里すゝ゛めねぐらの仮宿」。第4章の展示。火事で焼けた吉原が仮店舗で営業していることを宣伝する絵(名古屋市博物館蔵)


花開く「芳」の遺伝子

第5章のテーマは「芳」ファミリー。親分肌で面倒見のよかった国芳のもとには、芳年のほかにも多数の弟子が集まった。新聞錦絵で名をはせた落合芳幾やパノラマ歴史画で秀作を披露した歌川芳艶など、弟子たち「芳」ファミリーの作品を展示する。国芳の遺伝子がどのように受け継がれ、弟子たちが開花させたかうかがい知れる。

歌川芳藤「端午の節句」。第5章の展示。おもちゃ絵が得意だった芳藤の作品で、「立版古」と呼ばれるペーパークラフトで、組み立てるとこいのぼりができ上がる(名古屋市博物館蔵)

歌川国芳「浮世よしづ久志」。第5章「芳」ファミリーのフィナーレを飾る作品。中央に大きく「よし」の字を描き、「よし」となるさまざまな場面を描いている(名古屋市博物館蔵)


全作品撮影OK!

展覧会限定のコラボ商品にも注目を。芳年の「おしやくがしたい」にちなみ、観覧券に「京・嵐山上流の蔵 丹山酒造」のあまざけ(180ミリリットル×1本、アルコールゼロ)が付いてくるセット券(1600円)が発売されるほか、前田珈琲文博店では作品にちなんだ「地獄絵図セット」(950円)が登場する。2022年3月22日(火)には「怖の集い」として「血みどろ絵」を中心に、学芸員による解説付きの特別鑑賞会(2500円)も開催。

なお本展覧会は、全作品写真撮影が可能なのもうれしいところ。絵師による作風の違いや、時期による変化など、写真を撮って見比べるのも一興だ。

前田珈琲とコラボしたレギュラーコーヒー。3袋入り500円、9袋入り1500円


取材・文=鳴川和代

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