コーヒーで旅する日本/九州編|そこに暮らす人たちの日常に、当たり前にある一杯を目指して。「nai」
九州ウォーカー
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第26回は、長崎県・諫早市にある「nai」。オーナー兼ロースターの近藤彰さんはKARIOMONS COFFEE ROASTERで約6年勤務し、2020年8月に同店をオープン。町工場の中に小屋を建て、そこを店舗にしたユニークなコーヒーショップだ。近藤さんは2015年のエアロプレスチャンピオンシップで全国3位に輝くなど、抽出に関して高い技術を持っているが、「nai」はあえて豆売りに特化。人通りがほとんどない郊外で、利用シーンが限られるスタイルをあえて選んだ理由、そしてコーヒーや焙煎へのこだわり、これからのことを聞いた。

Profile|近藤彰
1990(平成2)年、長崎県大村市生まれ。高校卒業後、医療系の専門学校に進むが、自分が本当にしたいことではないと中退。19歳からカフェ併設の大手ベーカリーでアルバイトし、その後、シアトル系のコーヒーチェーンで働く。そこでの経験から、接客のおもしろさに開眼。接客のプロフェッショナルを目指し、一度はホテルマンを志す。ホテルで働く中、趣味のコーヒーショップ巡りでよく通っていた、KARIOMONS COFFEE ROASTERのオーナー・伊藤さんの誘いを受け、同店に入社。KARIOMONS COFFEE ROASTERでは抽出をはじめ、一部焙煎にも携わる。2019年に退職し、2020年8月に「nai」をオープン。
「コーヒー豆を買いに」を目的に

ここ数年の間に九州各地、さまざまなコーヒーショップがオープンしているが、豆売りに特化した店というのは少ない。ほとんどがカフェを備え、幅広いシーンで利用できるような店づくりをしている。一方で近藤彰さんが開いた「nai」はオープン当初から豆売りオンリー。しかも、好立地というわけではなく、どちらかというと店を開くには不向きな郊外の住宅地だ。それでも開業から約2年、着実にファンを増やし、日常的に豆を買いに訪れる常連がしっかりと定着している。
「当初は長崎市街などを開業地として検討していましたが、なかなか理想的な物件がなく、知人の紹介から偶然、今の場所に出会いました。もともと僕は、店をやるなら地域に根ざしたコーヒーショップでありたいと考えていて、そうなると好立地の繁華街が絶対条件というわけではない。実際に郊外で豆売りのみで、地域住民に親しまれている店の事例をいくつか目にしていたのも、この場所に豆売り専門店を開く決断ができた理由の一つです」と近藤さん。

店は外見からはここにコーヒーショップがあるとは思えない、町工場の中。看板もひっそりと掲げ、偶然見つけてふと立ち寄ってみるということはほぼないだろう。近藤さんは逆にそれを狙った。「『コーヒー豆を買いに来る』という目的を持って来店いただける店にしたいと思ったんです。むしろ、カフェではないので、なんとなく立ち寄って、コーヒーを1杯だけ飲んで帰るというご利用の仕方ができません。“いかにもショップです”といった店構えだった場合、カフェ目的でお客様にご来店いただくと申し訳ないですから」

さらに、近藤さんは「豆売り専門とすることで、当店の柱となる焙煎に関わる仕事に集中できる」とも話す。基本、1人で店に立ち、焙煎から事務作業、接客まで、すべてをこなすため、できることが限られる。ただ、コーヒー豆を買い求める客がひっきりなしに訪れるということはほぼないため、その分、焙煎前後のピッキングなど、味わいのクオリティを上げるための作業をとことん追求できるというわけだ。自分自身が納得できる商品を販売するという理にかなったスタイルかもしれない。

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