弟は海外で人気に火がつき“逆輸入”、姉は“幻の技術”。共に入手困難…注目の陶芸家姉弟に迫る
東京ウォーカー(全国版)
水野智路=パンダが定着。しかし悩みも…
伝統的な練り込みの模様には、網代(あじろ)や縞、鶉手(うずらで)などがあるが、智路さんの作品はパンダを中心に、星や相撲など、現代風のポップな柄が特徴だ。
「展示会などで説明してもなかなか絵付けとの違いを理解していただけないので、『なにかキャッチーな作品を作らなきゃ』と思っていたんです。そんなとき、何人かのお客様から『パンダって作れないの?』と言われて、作ってみたら好評でした」(智路さん)

今ではすっかり“水野智路=パンダ”のイメージが定着。「パンダ柄の作品が欲しい」という需要に応えるべく、ひたすらパンダと向き合う日々だ。しかし1つの模様を作っても、1回分の粘土から切り出せるのは約12枚、1カ月で制作できる作品は50点ほど。どれだけ作っても『買えなくて残念だった』と言われてしまう。
「以前、要望に応えようと1週間必死で制作したら、体調を崩してしまって。効率が悪いので、無理のない量を作ることにしました。お金を稼ぐためにはたくさん作って、もっと高値で売るべきなのかもしれませんが…。ずっと前から買ってくださっている方々がいますし、大幅な値上げも考えていません」(智路さん)

フルーツや恐竜など、作ってみたい柄はいくつもあるが、今は手が回らないと残念そうに話す。「でも、来年3月に名古屋で開催する展示会までには新作を作って、パンダ以外の柄も見ていただきたいです」(智路さん)
陶芸×ダーツ!?ジャンルを越えた可能性
ちなみに智路さんは、2021年にプロ資格を取得したダーツ選手という顔も持つ。プロとしてダーツの試合でいろいろな場所に行くが、これは練り込みの営業活動も兼ねているのだとか。

「ダーツをしながら地元・瀬戸や陶芸のことを話したり、僕が練り込みで作っているパンダ柄でダーツのグッズを作ったり。おかげで、ダーツの会場で出会った人に『パンダの人だ!』って言われることも(笑)。ダーツと陶芸という異なるジャンルですが、僕がハブになって垣根を越えて一緒に楽しいことができたらいいなと思っています」(智路さん)
陶芸家として食べていくのは大変
一方、姉の水野このみさんは現在、岐阜県にある窯元で働きながら「陶磁胎七宝」の作家として活動中だ。子供のころから、ものづくりや絵を描くことが好きだったこのみさん。「将来はおもちゃを作る人になりたい」と考え、大学では児童文化学科で発達心理学などを学んだという。

「将来を考えたときに『やっぱり陶芸がやりたい』と思い、大学卒業後は陶芸を勉強できる学校に進むことを考えました。でも陶芸家として作品づくりだけで食べていくのは大変なので、不安になって…。迷った末に大手化粧品メーカーへ就職しました」(このみさん)
それでも、好きだったものづくりに関わる仕事は諦めきれず、転職して得意なイラストの仕事などに携わってきた。本格的に陶芸の道を歩むきっかけになったのは、2011年の東日本大震災と、その翌年に近しい親戚や知人を相次いで亡くしたことだったそう。
「『自分の人生、やりたいことをやらなきゃ!』と感じたんです。ものづくりが好きだということ、祖父と父が陶芸をやっていたこと、そして私しかできないことを考えて、一度は諦めた陶芸の道へ進むことにしました」(このみさん)

そうして陶芸を学ぶための専門学校へ入学したこのみさんだが、「陶芸を学ぶだけでは仕事にならない」と感じていたそう。
「私は本格的に陶芸を始めた時期が遅かったし、絵を描くことは得意だけど、陶芸のまちである瀬戸には絵付けが上手な方がたくさんいる。陶芸で食べていくのなら“自分だけしかできないなにか”が必要だと思いました」(このみさん)
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