コーヒーで旅する日本/関西編|発祥の地・イタリアのエスプレッソをとことん追求。本場の味を、もっと身近な存在に。「Red Stone Coffee」

2022年11月25日 14:07更新

関西ウォーカー

Twitterで
シェア
Facebookで
シェア

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

スタンドを設置したシンプルな空間は、エスプレッソ講座などの教室としても使用


関西編の第39回は、大阪府堺市の「Red Stone Coffee」。店主・赤石さんはエスプレッソの醍醐味を知って以来、バリスタとして毎年、イタリアを訪ね、技を磨いてきた経験の持ち主。試行錯誤を重ねて追求する本場の味を目当てに、足繫く通うファンも少なくない。一方で、日本ではいまだに馴染みが薄いエスプレッソの魅力を伝えるべく、自店でのレクチャーや教室も積極的に展開。イタリア各地を巡り、現地のコーヒーカルチャーを体験してきた赤石さんが、エスプレッソをより身近にするために目指す店のあり方とは。

店主の赤石将也さん


Profile|赤石将也(あかいし・まさや)
1991(平成3)年、大阪府堺市生まれ。23歳の時に従兄弟の誘いでコーヒーの世界に進み、豊中でカフェを開業。1年で店を閉じ、本格的にエスプレッソを追求するべく毎年、イタリアに足を運び、各地のマシンメーカーや焙煎工場、バールを訪ねて、現地のエスプレッソカルチャーを吸収。その経験を土台に、2018年、地元・堺市に「Red Stone Coffee」を創業。2021年に2号店となる「Red Stone Coffee白鷺公園店」をオープン。

エスプレッソの追求を深める契機となった1年目の挫折

テイクアウトしたドリンクは、店先にあるテーブルやベンチでも楽しめる

堺市の東の端、大阪から高野山へと至る、南海高野線沿線のベッドタウンとして開けた北野田。駅前にあって、目立たぬ商店街アーケードで目を引くのが、『Red Stone Coffee』のスタイリッシュな店構え。店名の由来は、そのものズバリ、店主の赤石将也さんの名前から。カウンターで赤石さんが操る宝飾品のようなエスプレッソマシン、パヴォーニ・ディアマンテは、日本に一台しかない、この店のシンボルだ。「ディアマンテとは、イタリア語でダイヤモンドのこと。“赤いダイヤ”のイメージが店のコンセプトにぴったりだと思って、出合った瞬間、一目ぼれでしたね」と振り返る。エスプレッソの魅力を伝えたいとの思いを持って、2018年にこの店を開いた赤石さんだが、真にその醍醐味を追求し始めたのは、イタリアで本場の味を体験したことに遡る。

ユニークなフォルムとカラーリングで、店を象徴するパヴォーニ・ディアマンテ


赤石さんがコーヒーの世界に進んだのは23歳の頃。カフェで働いていた10歳上の従兄弟に誘われたのがきっかけ。ドリップコーヒーは飲めなかったという赤石さんを惹きこんだのがエスプレッソだった。「ドリップコーヒーが苦手で、1杯でも量が多くて飲み疲れしてしまうんです。でも、エスプレッソは少量で、何より砂糖をたっぷり入れた時の、チョコレートのような味わいにハマってしまって。ラテやカプチーノなどアレンジも幅広くできるところも面白いと感じて、以来、コーヒーはエスプレッソしか飲んでません(笑)」。実は赤石さんは大の甘党。元々の嗜好もエスプレッソの虜になった理由の一つだ。

それからは、独学でバリスタの技術やコーヒーの知識を磨き、早くも2015年頃に豊中でカフェをオープンしたが、1年ほどであえなく閉店。いきなりの挫折を味わったが、ここからが今に至る大きな転機となった。「うまくいかないかった理由は、こだわりがなかったからだと思います。ラテアートに力を入れていましたが、肝心なのはエスプレッソの味なんだと感じました。この時はドリップコーヒーも出していましたが、もっとエスプレッソに特化したスタイルを目指そうと考えを改めました」と、再起を期して動き始めた。

発祥の地・イタリアで本場の味と技術を吸収

今も毎年、イタリアを訪れて研鑽を重ねる赤石さん

まずはエスプレッソを一から考えなおすべく、全国各地を飲み歩いたが、そこで違和感が残ったという。「酸味が強いエスプレッソがほとんどで、自分がイメージしていた味との違いに疑問を持って。それなら、発祥の地のイタリアではどんな味なのか、確かめたくなって現地まで足を運んだんです」。イタリアへと渡った赤石さんは、そこで、まったく異なる嗜好に驚かされたという。「飲んだ時にあまりのギャップにびっくりして。エスプレッソ自体にまったく酸味がないし、みんながどしどし砂糖やチョコレートを入れていて、飲み方も大きく違う。この時に本格的にエスプレッソの虜になりましたね」と振り返る。イタリアのエスプレッソに使われるコーヒーは、伝統的に深煎りで、多種類を配合したブレンドが主流。濃厚な味わいにたっぷりと甘味をつけるのが、赤石さんが求めていたエスプレッソのあるべき姿だった。

ビターチョコに似た香味とコクのある甘みが溶け合う、エスプレッソ(200円)


その後、イタリアと取引のある貿易会社の社長との縁を得た赤石さん。同社が新たにエスプレッソマシンの取り扱いを始めるに際して、専属バリスタとなってたびたび現地に帯同することに。イタリア各地のマシンメーカーや焙煎卸業者などを訪ね、イタリアのコーヒーカルチャーを肌で感じるまたとない機会となった。「北から南まで、マシンや焙煎の工場を巡りました。マシンのメーカーでは社員から直接、機器の扱いや抽出技術を教わったり、本格的な研修を受けたりしたことは貴重な経験になりました」と赤石さん。この時に出合ったのが、現在、店に鎮座するマシン、パヴォーニ・ディアマンテだ。「ちょうどショールームのど真ん中に展示されていて、自分が考えた店名を体現するようなデザインを見て、衝動的に導入を決めました。お金を借りてまでして購入したことで、逆にモチベーション上がりましたね」と、再び店をはじめるにあたっての大きな弾みとなった。

一方、イタリアには街々に数えきれないほどのバールがあり、地方によってもエスプレッソの嗜好が異なる。赤石さんも、各地のバールに足を運び、個性の差を体感しながら、自らが目指す味を模索していた。「南に行くほど味は濃厚になりますが、自分が気に入ったのは北側のテイスト。ナポリ辺りまで行くと濃すぎて日本では馴染まないと感じた。その中でも、フィレンツェで、すごくいいバールを見つけて、その味を再現しようと店で使っている豆を尋ねて、焙煎工場まで行って味作りのノウハウ教えてもらいました」。この時、赤石さんが出合ったコーヒーのブランド・ロロカッフェの深煎りが、店で提供するブレンドのモデルになっている。ちなみに、ロロカッフェは、“食後においしい”をテーマにシェフが監修した豆だったこともあり、赤石さんのブレンドもレストランからの卸の依頼が多いという。

「きれいなラテアートは、しっかり抽出されたエスプレッソあってこそ」と赤石さん


発信力を高めて、イタリアのエスプレッソをもっと身近に

豊中で開店した時から始めた焙煎は、エスプレッソに合わせた味作りに試行錯誤を重ねてきた

イタリアで得難い経験を重ねた約2年を経て、赤石さんが地元の北野田に再び店を構えたのは2018年。豊中で店を始めた当初から、焙煎を始めていたが、再スタートを機に、本格的にエスプレッソのための味作りに取り組んだ。スペシャルティコーヒーが主流となった近年は、浅めの焙煎が主流となっているが、ここでは中~中深煎りが中心に。エスプレッソのためだけに絞った味作りを目指しているというから徹底している。

「とにかく、エスプレッソならではのトロっとした舌ざわりと厚いクレマ(※1)の質感が好きで」という赤石さんが、理想の一杯を出すべく考えた看板のイタリアンブレンドは5種の豆を配合。うち4種はアラビカ種でナチュラルプロセスの豆のみを吟味。さらに、本場の味に不可欠なのがロブスタ種の豆だ。どっしりしたコクと苦味が特徴のロブスタ種は、一般に加工品などに使われることが多いが、イタリアのエスプレッソには欠かせない存在。独特のボディ感と飲み応え、とろみとクレマを生み出す名脇役だ。

深い褐色を湛えたエスプレッソの、まろやかで芳醇なアロマの余韻が後を引く味わいは、しっかりと乗ったクレマと液体の密度が伴ってこそ。ラテやカプチーノでも、よりミルクの甘みとコクが引き立つ。現地さながらの味わいを求めて、足しげく通うイタリア好きのファンも多い。本店はテイクアウトがメインだが、2021年にオープンした2号店・白鷺公園店では、カフェで自家製スイーツと共に楽しめる。また、「本店とは異なるレバー式のマシンで淹れるエスプレッソの味の違いを感じてほしい」という趣向も、エスプレッソに特化した、この店ならではだ。

クレームブリュレラテ(620円)。表面の香ばしい食感とまろやかな甘みが後を引く


一方で、エスプレッソの楽しみ方をさらに広めるべく、週に4回、エスプレッソ講座を開催。今では、講師としての仕事に重きを置いているという。「講座では、開業希望者から家庭で楽しみたい方まで、それぞれの方向性に合わせるために、1回に2人を基本にしています。どの講座でも最も意識しているのは、まず入門として日本とイタリアのエスプレッソの違いから知ってもらうこと。ラテアートの講座もありますが、あくまでエスプレッソありきなので、必ず淹れ方を最初に身に着けてもらうことをモットーにしています」。毎回、ほぼマンツーマン、開業希望者向けには本店のキッチンをそのまま使って、リアルな現場の動きの中で抽出を行う。その熱意に感じてか、何度も通うリピーターも少なくない。

豆はブレンド2種、シングルオリジン4種。ビスコッティなどの焼き菓子も販売


「より講座を充実させて、本来のイタリアの味を知って、学んでもらえる場として広げていければ。いずれはバリスタを育てる学校のようにしたいですね」という赤石さん。本格的なマシンで、バリスタが店で提供する印象が強いエスプレッソだが、より身近なものにしたいとの思いから、講座では“家でも楽しめる”というポイントに最も力を入れている。「エスプレッソに触れる間口をもっと広げるためにも、家庭用のマシンや使い方のコツを広めていきたい。イタリアンブレンドも、パワーがない家庭用マシンでもクレマやとろみが出せるようにと考えたもの。今まで、“家ではそれができないから”と辞める人が多かったので、そこを変えていければ」

店と講座に加えて、さらに最近では、公式YouTubeも開設し発信の場を広げている。「小さい街にある店なので、通常の営業だけでは触れてもらえる機会が少ない。以前は情報が少なく、エスプレッソはハードルが高いイメージがありましたが、今はSNSなどの情報源、発信手段が広がって、知ってもらう接点を作りやすい時代。エスプレッソについて語っていきたいことはまだまだあるし、魅力にハマる人をもっと増やしていきたいですね」

家庭用エスプレッソマシンやグラインダーなど機器の販売も対応


赤石さんレコメンドのコーヒーショップは「HAKUBI COFFEE」

次回、紹介するのは、大阪府吹田市の「HAKUBI COFFEE」。
「店主の西浦さんは、同世代でエスプレッソマシンを導入する際に、相談に来られたのがご縁で交流が続いています。焙煎機の自作に挑戦するほどのメカ好きで、同じレバー式エスプレッソマシンで抽出しているお店として、注目してもらいたい一軒です」(赤石さん)

【Red Stone Coffeeのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジ ローヤル 1キロ(半熱風式)
●抽出/エスプレッソマシン(パヴォーニ)
●焙煎度合い/中煎り~中深煎り
●テイクアウト/ あり(470円~)
●豆の販売/ブレンド2種、シングルオリジン4種、100グラム700円~

※1:高圧で抽出するエスプレッソの表面にできる、滑らかな質感の泡の層。表面をしっかり覆うことで、香りを閉じ込める役割もある。イタリア語でクリームの意。

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

この記事の画像一覧(全11枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

ページ上部へ戻る