コーヒーで旅する日本/関西編|普段使いだからこそ質の高い一杯を。コーヒーを起点に多様な人々の日常が交わる「HAKUBI COFFEE」

2022年11月25日 14:06更新

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

店内の壁や天井などは、西浦さん自ら塗装


関西編の第40回は、大阪府吹田市の「HAKUBI COFFEE」。関西大学のお膝元にあって、2年前のオープン以来、学生のみならず地元の人々や各国の留学生まで、幅広いお客が行き交う界隈の新たな拠り所として支持を得ている。店主・西浦さんは、エスプレッソへの興味が高じて自宅にプロ仕様のマシンを導入したり、開店にあたって焙煎機を自作したりと、旺盛な探求心と行動力の持ち主。自らが感銘を受けたロンドンのカフェカルチャーを体現するべく、焙煎や抽出のクオリティを追求しながらも、「コーヒーはあくまでツールの一つ」と言う所以とは。

店主の西浦さん


Profile|西浦瑛(にしうら・えい)
1994(平成6)年、大阪府豊中市生まれ。10代でチェーン系カフェに勤めたことでコーヒーへの興味を深め、バリスタとして技術を磨く傍ら、自宅にマシンを設置してエスプレッソの抽出に熱中。一時は別の仕事に就きながらコーヒー店での間借り営業を経て、大阪市内のカフェのオープニングスタッフとして開業準備に携わり、店長も経験。コロナ禍でカフェが休業したのを機に独立を決意し、2020年、吹田市に「HAKUBI COFFEE」をオープン。

イギリスで憧れを抱いた、“カフェのある日常”

店名の由来は、“特に優れたもの”を意味する白眉から。ロゴは漢字をモチーフにデザイン

関西大学の最寄駅である、阪急千里線関大前駅から線路伝いに歩いて数分。「HAKUBI COFFEE」があるのは、学生街らしい賑やかな界隈でも、人通りの多い交差点の一角。小さなスタンドには、学生から子供連れのママやお年寄り、さらに大学に通う各国の留学生が。一言二言、言葉を交わしながら入れ代わり立ち代わり。土地柄、学生が中心に思えるが、「この辺りは商店街でもあり、実は地元に住む方の方が多いんです」と店主の西浦さん。柔和な人柄に加えて、英語も堪能とあって客層は実に幅広く、開店2年目ながら、まさに街の拠り所として定着しているようだ。

店内ではエスプレッソもドリップコーヒーも提供するが、西浦さんにとってコーヒーの世界への入口となったのはエスプレッソだった。「10代の頃に、エスプレッソメインのカフェで働き始めたのが、コーヒーとの縁の始まり。当時はバリスタが職業として脚光を浴びた頃で、僕もここでラテアートの技術を覚えましたね」。やがて、関心はエスプレッソそのものへと移り、20歳の時には何と、セミオートのエスプレッソマシンとグラインダーをイタリアから個人で直輸入して、自宅に設置するまでに。

好みの豆を選べるドリップコーヒーは、季節ごとに登場する限定ブレンドも楽しみの一つ


「当時で一式30万くらいしましたが、マシンを買ってなかったら、ここまでのめり込むこともなかったと思います」と振り返る。その後、別の仕事に就いても、空いた時間に大阪市内のコーヒー店・田﨑珈琲を手伝ったり、自宅で毎日のようにエスプレッソの抽出したり、コーヒーとの関わりは続いたが、あくまで趣味の範疇だった。それでもコーヒーへの関心はやむことなく、音楽の仕事に興味を持ってイギリスに1年間滞在した際も、毎日のようにカフェ通い。ここで、西浦さんの心境に変化が訪れる。「目的は音楽でしたが、現地のコーヒーカルチャーにも大いに刺激を受けました。日本よりもコーヒーが現地の人々のライフスタイルに組み込まれていて、何気なく立ち寄った店でもお洒落で、メニューのクオリティも高く、バリスタのコミュニケーションも巧みで。日常に溶け込んでいる店の姿が印象に残って、憧れみたいな感覚を抱きました」と振り返る。

ドリップコーヒー(580円~)。アメリカ発祥のお菓子・コーヒーケーキ(250円)は、サワークリーム入りの生地のさっぱりした甘みとシナモンの芳香が印象的


焙煎機を自作してつかんだ味作りの感覚

豆はブレンド2種とシングルオリジン3~4種を提案

帰国後、次はオランダに渡るべく、資金を貯めるために再び田﨑珈琲の手伝いに入った西浦さん。しかし、この時は定休日の店を使って、屋号はそのままに独自のメニューに変えて間借り営業をスタート。「今思えば、開業のリハーサルのような感覚で、店を切り盛りする感覚を体感できました。その後、お客さんの紹介で大阪市内のカフェのオープニングスタッフに入ることになって、一から新規開業に携わり、1年ほどエスプレッソの担当や店長まで経験できたのは、開業準備にも活かされましたね」と西浦さん。しかし、折悪く、コロナ禍の到来で、カフェはあえなく休業し、居場所を失うことに。間借り営業やオープニングスタッフで経験を積んだ西浦さんは、ここで地元でコーヒースタンドを開くことを決意。半年後には「HAKUBI COFFEE」をオープンさせた。

西浦さんが設計から手掛けたオリジナル焙煎機の制作過程。漏斗や空き缶などの既製品を上手く利用している

焙煎機は手書きの設計ノートを元に、ほぼイメージ通りの形に仕上げたという


当時はすでに日本にもサードウェーブの波が定着し、個性的なロースターが増え始めていた頃。開業にあたって、自家焙煎を始めることを決めていた西浦さん。とはいえ、予算的に余裕がないなかで考えついたのは、なんと焙煎機の自作というアイデアだった。「元々がメカ好きで、焙煎機の構造に興味があったので」と、自ら設計図を起こし、アルミ板を切断・加工。ホームセンターなどで揃えたパーツに、寸胴鍋や漏斗などを代用して組み合わせ、見事、半熱風式の焙煎機を完成させた。

「ただ、アルミ製だったので、高温になるとでボディがものすごく歪んでました(笑)。それでも、焙煎自体はうまくいって、開店から半年ほどは稼働していました。実は焙煎機の自作は思わぬ効果があって、中の構造を理解できたことが大きい。通常、機械で焙煎を始める時は、機械の中は見えないままで感覚に頼ってしまう。でも動作の仕組みや過程が分かっているので、うまく焼けない時も理由が具体的にイメージできたぶん、思ったより早く、自分なりの焙煎のプロセスをつかむことができました」

現在は焙煎量が増えたため新たに焙煎機を導入。店の目の前を阪急電車が行き交う


現在の豆の品揃えは、ブレンドが定番の深煎りと季節替わりの2種。エスプレッソには、定番ブレンドと同配合の中深煎りを使用する。「地元のお客さんは深煎りの嗜好が強いので、定番の豆は深めの焙煎。浅煎りはスポットでいろんなシングルオリジンをお試しで楽しんでもらう感覚です。全体に似た味にならないよう、バラエティを持たすことに気を遣っています」。一方で、中深煎りでも果実味が感じられるコロンビアを、シングルオリジンの定番に据えて、店の個性を打ち出す一つの基準として提案している。

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