コーヒーで旅する日本/関西編|飽くなき探求の先に、常に“思考の余白”を残す。しなやかにコーヒーの可能性を広げる「STYLE COFFEE」

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

店内に小さなカウンターやベンチもあり、常連客との会話に花が咲くことも


関西編の第45回は、京都市上京区の「STYLE COFFEE」。店主の黒須さんは、カフェが生み出すコミュニティに興味を抱いたことから、やがてコーヒーの世界へ。オーストラリア・メルボルンに渡り、バリスタとして働きながら現地のコーヒーカルチャーを吸収。尽きることのない探求心で、今もコーヒーの可能性を追求し続けている。一方で、日々、腐心するのは、「完璧なものではなく、あらゆる人に対して“余白”を残すことで、コーヒーを考える機会を作る」こと。自らの店作りの中で、黒須さんが目指す店の「STYLE」とは。

店主の黒須さん


Profile|黒須工(くろす・たくみ)
1986(昭和61)年、埼玉県生まれ。カフェを介したコミュニティに関心を抱いたのをきっかけに、自らもカフェで働き始め、関東圏の喫茶店やバールなど幅広いジャンルの店で経験を積む。その後、コーヒーのスキルを磨くべく、オーストラリア・メルボルンに渡り、バリスタとして研鑽を積みながら、現地のカフェカルチャーを体感。帰国後は京都のWEEKENDERS COFFEEで約2年、店舗運営・焙煎などに携わり、2019年、京都市上京区に「STYLE COFFEE」をオープン。

メルボルンで吸収した、コーヒーに対するプロ意識

河原町通沿いにある、ガラス張りの店構え

白壁に黒い天井、木製の作業台に並ぶコーヒー器具。無駄を排した店内だからこそ、カウンターでドリップが始まると、立ち上る芳しい香りがいっそう鮮やかなに感じられる。時季ごとに吟味された豆は、「それぞれの風味に合わせた焙煎で、デイリーなコーヒーの質を高めていきたい」。そう話す店主の黒須さんにとって、今なお尽きないコーヒーの探求は、カフェという場への興味から始まった。 

「人が集まり、コミュニティが生まれる場所が好きで、カフェに興味を持ち始めて、そのつながりを介するコーヒーへと関心が移っていったんです」と、地元の関東圏のカフェで働き始めた黒須さん。昔ながらの喫茶店から、エスプレッソを主体とするカフェやバールまで、新旧問わず幅広い店のスタイルを経験した。その目は海外にも向けられ、はるばるアメリカ西海岸に渡り、まだ日本上陸前のサードウェーブ系コーヒーショップを数々訪問。現地でブルーボトルコーヒーのパブリックカッピングに参加するなど、新しいコーヒーの波をいち早く体感した。

ドリップは中央のカウンターで。淹れるごとに店内に香りが広がる


「世界的なスペシャルティコーヒーの広がりを初めて感じたのがこの時。原料の扱いも、ナチュラルワインのようにトレーサビリティを明確にするなど、コーヒーをここまで専門的に追求できるんだという驚きがありました。自分は、かつての喫茶店のコーヒーと今の浅煎り主体のコーヒーの両方を知っているギリギリの世代。その違いを感じてきたこともあり、いっそうスペシャルティコーヒーのインパクトは大きかったですね」と振り返る。

とはいえ、多様なコーヒーのあり方に触れたことで、「このまま日本で経験を積んでも、この先は伸び悩むのでは」と感じて、より刺激のある環境を求める思いが膨らんでいった。ここで、目を向けたのが、オーストラリアのコーヒーシーンだった。「元々、世界各地のコーヒーシーンの成り立ちや違いに関心があって。オーストラリアは、イタリア系の移民が多かったので、エスプレッソベースのコーヒーや個人経営のカフェやバールが多く、一日に3、4回、店に立ち寄るお客も多い。中でも、そうした文化が色濃いメルボルンへの興味が湧いてきて。日本で知った、現地の情報を実際に確かめたいという思いもありました」

好みの豆を選べる、ドリップコーヒー450円~


勇躍、ワーキングホリデーを利用してメルボルンに渡った黒須さんは、バリスタとして働ける場所を探し、現地の店に飛び込みで交渉。いくつもの店を渡り歩きつつ、多様な店の現場を踏む中で日々腕を磨き、新たな発見を得ていった。「一日に300杯とか500杯とか、桁違いの杯数を淹れる店も珍しくなく、提供する量やスピードに対応するスキルも鍛えられました。今では使う場面がないですが(笑)、それだけ多くのお客さんが来てるということ。現地にはコンビニなどほとんどなく、仕事の合間のひと時や週末の家族のおでかけ先として、カフェが大きな拠り所になっていることを実感しました」

また、メルボルンではあちこちの店でパブリックカッピングも盛んに行われていて、黒須さんも当時は毎週1回は参加して勉強。当地のトップバリスタの仕事ぶりからも多くの刺激を受けた。「メルボルンで最も印象に残っている一軒が、マーケット・レーン・コーヒー。ここで、焙煎士として活躍されている石渡さん、通称・トシさんの、コーヒーに対する姿勢には感心しました。例えば、食事の後でカッピングがあるから、今、食べるのはこういうメニューにしておこうとか、店にいる時だけでなく、日常生活のすべてがコーヒーを起点にしているんです」と、そのプロ意識に大いに感銘を受けたという。

焙煎後に欠点豆をハンドピック


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