“名古屋撃ち”に“100円玉不足”…社会現象を巻き起こしたゲーム「スペースインベーダー」の45年の歩みに迫る

東京ウォーカー(全国版)

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「ゲーム」といえば、どんな作品を思い浮かべるだろう。その答えは世代によって変化するかもしれないが、株式会社タイトー(以下、タイトー)が開発・販売している「スペースインベーダー」を想像した人も多いのではないだろうか。スペースインベーダーは、「迫りくる敵(インベーダー)を撃ち、陣地を守る」というシンプルながらスリルがあるゲーム性で、日本だけでなく世界中で大ヒットした元祖シューティングゲームである。

そんなスペースインベーダーは、発売から2023年で45周年を迎える。現在もアーケードゲームとして 、また「PlayStation」や「Nintendo Switch」など家庭用ゲームとして展開されるなど根強い人気を誇っているが、実は発売前の評価は意外なものだったそう。

今回は、スペースインベーダー開発者で現在はタイトーのアドバイザーを務める西角友宏さんに、スペースインベーダーの誕生秘話と今もなお愛される理由を聞いた。さらに、社会現象にまで発展した発売当時の人気ぶりも明らかに!

スペースインベーダーは、日本で初めてプログラムに著作権が認められた記念すべき作品でもある(C) TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.


発売前は不評?「スペースインベーダー」誕生秘話

1970年代に日本で流行していた、通称「ブロックくずし」で知られる「ブレイクアウト」を、西角さんは好んでプレイしていたという。そんな折、タイトーの営業上層部からも「ブレイクアウトを超えるゲームを作れないか」と言われたことがきっかけとなり、別の作品と並行してスペースインベーダーの開発をスタートしたそうだ。最初は、1978年6月16日にアーケードゲームとして発表された。

スペースインベーダーには、シリーズのアイコンとなっている「カニ」をはじめ、「イカ」「タコ」「UFO」とユニークな敵キャラクターが登場するが、開発の初期は「戦車」「飛行機」「人間」とまったく別の候補があがっていたそうだ。戦車や飛行機に関しては一見良さそうだったが、横移動させると不自然で、人間にしたところ今度は「人を撃つのは倫理的に良くない」という理由ですべてボツになったのだとか。

その後、西角さんが子供の頃に触れたイギリスの小説『宇宙戦争』や、当時公開を控えていた『スター・ウォーズ』から着想を得て「宇宙人を倒す」というコンセプトに変更し、「タコ」「UFO」などの誰もがわかるキャラクターが完成した。「戦車や飛行機ほどではないですが、ドット絵でキャラクターの動きを表現するのに苦労しましたね」と、西角さんは話す。

西角さんはゲーム制作のツールを作るために、開発期間の約6割を費やしたそう(C) TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.


スペースインベーダーは、今やゲーム史にも残る名作として全世界で認知されているが、発売前は意外な評価を受けていたそうだ。

「発売前の業者さんに向けたゲーム発表会では、評価が悪かったんです。業者の人たちはご年配の方が多かったので、シューティングゲームに馴染みがなく、『こんな難しいゲームは流行らないだろう』なんて意見が多かったんですよ。ですがいざ稼働すると、若いプレイヤーから『スリルがあっておもしろい』『やり込める』などの口コミをいただき、瞬く間に人気になっていきましたね」

日本から100円玉が消えた…社会現象にまで発展した人気ぶり

家庭用ゲーム機器が普及して以降、ゲームセンターなどのアミューズメント施設を除き、ゲームをするためにどこかへ出向く機会が減少している。しかし、1970年代後半から1980年代前半頃までは、日本全国の喫茶店にスペースインベーダーのテーブル筐体(テーブルと一体化したゲーム機)が設置され、多くの若者たちが熱中した。

「当時の人気から知ってくださった日本各地の喫茶店からのご要望で、次々に設置していただきました。テーブルとしても使用できる汎用性の高さが好評だったみたいですね。そのほか、子供がプレイできるようにと駄菓子屋に導入されたり、関西では料亭にもあったらしいです(笑)。もともとスペースインベーダーはゲームセンターに設置する予定で開発していましたので、このようなニーズは予想外でしたね」

「テーブル筐体」(テーブル型ゲーム機の通称)。1977年にタイトーらが広めたとされる(C) TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.

タイトーは飲食店にゲームを卸していたこともあり、スペースインベーダーの発売以前にブロック崩しゲーム「T・T ブロック」のテーブル筐体を喫茶店などに設置していた写真提供:株式会社タイトー


また、ブームのピーク時にはすべてのゲームをスペースインベーダーに替えたゲームセンター「インベーダーハウス」が登場。さらにタイトーによる純正品以外にも、許諾品、無許諾品(コピー)が数多く発売され、いつしかこれらを総称して「インベーダーゲーム」と呼ぶようになった。

こうしてゲームセンターはもちろん、普段あまりプレイしない人たちが行き交う場所に設置されたことで、急激に知名度を高めていった。それに伴い、ゲームをプレイするために日本中で大量の100円が使用され、「100円玉が不足する」という前代未聞の社会現象にまで発展。スペースインベーダーだけが要因ではないにしても、ここまで社会に影響を与えたゲームは数少ないだろう。

1978年当時の「インベーダーハウス」の外観写真提供:株式会社タイトー

インベーダーハウスの様子。一体どれほどの100円玉が使用されたのだろうか写真提供:株式会社タイトー


「名古屋撃ち」誕生で“裏技”のパイオニアに

全国のあらゆる場所でプレイできたスペースインベーダーは、当時の20〜30代の男性を中心にそれぞれが思い思いに楽しんだ。そしてこの頃は攻略サイトはおろか攻略本もなかったが、漫画や雑誌などを通じてプレイヤーの間で話題となったのが、バグ(プログラムの欠陥によって発生する現象)を活用した裏技だ。

なかでも最も有名なのが“名古屋撃ち”だろう。「プレイヤーと敵であるインベーダーが接近しているときは攻撃が当たらない」という裏技で、「発祥が名古屋」「あと一段侵略されたら“終わり”であることと、“尾張”がかかっている」などルーツは諸説あるようだ。ほかにも“化石”や“レインボー”といった裏技まで存在しており、“レインボー”は1979年に発売された「スペースインベーダー・パート2」で公式の仕様に昇華している。

「制作時は私含めて2、3人くらいで確認作業をしていましたので、見落としているポイントはたくさんあったと思います。そのため、発売後に普通に遊んでくださっているのを見て『よく致命的な不具合がなかったなぁ』とホッとした記憶がありますね(笑)。今はバグなどプログラムの欠陥がないか念入りにチェックする会社がありますので、発生しづらくなっています」

(C) TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.


1979年には裏技などのテクニックを収録した、日本初と言われるゲームの攻略本が発売され、それ以降、プレイヤーを楽しませる仕掛けとしてバグや裏技を意図的に導入するゲームが増えていった。まさにスペースインベーダーは、今あるゲームのパイオニアとも言える存在だ。


誰でも簡単に遊べるがゆえの愛され方

2023年で発売から45周年を迎えるスペースインベーダーは、アーケードゲームから始まり、これまでさまざまなゲーム機器で展開されてきた。そして時代の流れに合わせて映像が3Dに進化したり、過去作品のリメイクが発売されたこともあったが、1番人気はやはり初期のシンプルな形なのだとか。また、長く続くゲームシリーズならではのエピソードも。

「今から5、6年ほど前にスイスで行われたイベントで、外国人の小さなお子さんがとても上手にプレイされていたんですよ。そこで『どうしてそんなに上手なの?』と尋ねてみると、『親から教えてもらった』って言うんです。このとき、スペースインベーダーが国境と世代を超えて愛されていることを実感しましたね。また、『家庭用ゲーム機器でお子さんやお孫さんと一緒にプレイしている』といったお声もあります」

「アップライト筐体」。アメリカで主流の筐体で、日本でもテーブル筐体が開発されるまでは多くの若者が夢中になって遊んでいたという(C) TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.


現在の主なプレイヤー層は、国内外ともに“当時プレイしていた人たち”で、今では家族とのコミュニケーションツールとしても生かされているようだ。「“誰でもプレイできる”のが最大の魅力だと思っています」と話す西角さん。「今後もシンプルなゲーム性を大切にしつつ、機会があればさらなる挑戦をしてみたい」と意気込む。

発売当時に遊んだ人だけなく、その子供や孫の世代にもプレイされ続けているスペースインベーダー。これからいかにして次の世代に受け継がれていくのか、楽しみでならない。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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