最初は“熱いきつね”だった?誕生45周年!「マルちゃん 赤いきつね・緑のたぬき」のブランド戦略に迫る
東京ウォーカー(全国版)
「赤いきつねと緑のたぬき♪」というテレビCMでよく見かける「マルちゃん 赤いきつねうどん」と「マルちゃん 緑のたぬき天そば」。赤と緑のコントラストが目立つこの商品は、スーパーやコンビニエンスストアでもよく見かける日本を代表するカップ麺ブランドのひとつだ。
そんな赤いきつねは今年でブランド誕生45周年。1975年に前身の商品が生まれてから1978年に「赤いきつね」が登場した。その後、姉妹品として「緑のたぬき」が生まれておなじみのコンビになったのだが、この2つの商品はどのような経緯で誕生したのだろうか。そして、なぜうどんやそばに「赤」や「緑」といった色の名前がつけられるようになったのだろうか。
今回は赤いきつね・緑のたぬきの疑問について調査すべく、東洋水産株式会社(以下、東洋水産)加工食品部 即席企画課の隅田道太さんを訪れ、赤いきつねのブランド誕生秘話や「赤・緑」の名前がつけられた理由、そしてシリーズのブランド戦略についてインタビューを行った。

誕生時は“赤い”じゃなくて“熱い”だった
赤いきつね・緑のたぬきを販売する東洋水産は、現在こそカップ麺や即席麺を主な商品として展開しているが、もともとは冷蔵庫事業や水産事業などを行う会社だった。そんな東洋水産が即席麺の開発をスタートさせたのは、ある商品の売り上げがきっかけだった。
「当社では現在でも魚肉ハム・ソーセージを販売していますが、当時はこれが主力商品でした。これらの商品は常温で保存できるので、冷蔵庫が普及していなかった戦後の時代にはとても重宝されました。しかし、気温が下がる冬には生鮮食品が保存しやすくなるので、魚肉商品の売り上げが落ちるのが悩みでした」


そこで「寒い時期でも売れるものを開発しよう」となって冬場でも需要のある即席麺に注目し、1961年に東洋水産初の即席麺「マルト印ラーメン味付け」が誕生した。そして1975年には業界初のカップ入り即席きつねうどん「カップきつねうどん」を発売。これまでにない新しいジャンルだったこともあり、きつねうどんは大ヒットした。
「この商品は和風カップ麺ブームの火付け役になりましたが、競合他社からさまざまな同種の商品が発売されました。そこでブランドにテコ入れを行うためにデザインとネーミングを刷新することにしました。このときの名前の候補が『熱いきつね』でした」

「熱い」と名づけたのは、うどんの熱々のおいしさが伝わるようにという理由からだという。またパッケージのカラーリングも今とは異なり黄色だったとか。しかし検討を重ねた結果、店頭で目立つ「赤」を基調色としたデザインになり、商品名もユニークでインパクトのある「赤いきつね」に決定。きつねといえば「お稲荷さん」でよく見る稲荷神社の赤い鳥居やのぼり、きつねの像につけられる赤い前掛けのイメージもあって「赤」+「きつね」という商品コンセプトになった。
「また姉妹品である『緑のたぬき』は店頭での赤いきつねとの相乗効果を狙い、赤の補色に当たる緑のパッケージに決まりました。きつねやたぬきなどの動物の名前が入っている商品名は意外と珍しいので、ブランドの独自性も出せていると思います」

東日本と西日本。そして「関西」向けで全国展開
ブランド誕生から45年。今やロングセラーになった赤いきつねと緑のたぬきは日本全国で幅広くユーザーに愛されている。だが、どちらかといえば東日本での人気が高く、西日本では東に比べてまだまだ知名度が低いのが現状だという。
「“東の東洋水産”と呼ばれるほど東日本での人気が高いのがブランドの特徴です。逆に西日本への展開が課題でもあります。私は島根県出身なのですが、子どものころは赤いきつねをほとんど見たことがなかったですね(笑)。現在は全国津々浦々で営業活動を行っていますが、まだまだ東洋水産という会社も知名度を上げている途中なので、これからも地道に販促を続けていきたいです」

また、地域によって味の好みが異なり、特に「だし」の文化が東西で大きく違いがあることから、東西でつゆの味を変えて展開している。そして2001年からは東西だけでなく「関西」向けの味も発売し、全国での売り上げ向上に取り組んでいる。
「赤いきつねのだしは昆布とかつおがメインですが、東日本はかつお主体で濃口の醤油のつゆ、西日本では昆布主体のだしにいりこを入れた淡口醤油のつゆになっています。また、関西向けのうどんは昆布主体のだしにうるめ鰯、淡口醤油の組み合わせです。発売する地域によって味を変えて全国展開を行っています。なお、緑のたぬきのそばつゆについても同様に、東西でだしの配合を変えています」


ちなみに、中間地点に当たる境目の三重県や岐阜県では、基本的に東日本向けの商品を発売しているという。しかし、お店によっては関西エリアの商品も並んでいることがあるそうで、ごくまれにユーザーから「食べたら味が違ったけど大丈夫?」という声が寄せられることも。
「お客様からは『いろいろな味を食べてみたい』『関東でも関西や西日本向けの商品を発売してほしい』という声がよくあります。やはり関西や西日本出身の方々にとって、故郷の味は特別なものなのかもしれませんね。逆に関西で関東の味を発売してほしいという声はありません(笑)」

また、赤いきつねや緑のたぬきのカップに入っている粉末スープには、かつお節自体を粉砕した粉末を使用している。これは「かつお節からだしを取ったような臨場感をカップ麺でも出したいというのが当社のこだわり」だと隅田さんは話す。
白黒や紺に黄色まで!赤いきつねのブランド展開とは
それぞれが姉妹品として相互的に人気を支えている赤いきつねと緑のたぬき。いまや全国にその名前が知れ渡っている、日本を代表するカップうどん・そばブランドのひとつと言えるだろう。そんな2つの商品だが、お店で買うときにどちらにするか悩む人も多いのではないだろうか。それぞれの人気の比率は赤いきつねと緑のたぬきでおおよそ「55:45」と、赤いきつねの売り上げが若干高いのが特徴だ。
「赤いきつねは主に主婦の方がスーパーで買って家族で食べることが多いため、まんべんなくさまざまな層に売れているというイメージです。緑のたぬきは50代以上の男性にヘビーユーザーが多い傾向にあります。また長野や新潟などのそばどころではたぬきの売り上げが高かったり、そば文化のない沖縄ではきつねの売り上げが7割だったりと、売れ方に地域差があります」

また赤と緑のほかにも「黒い豚カレーうどん」や「白い力もちうどん」、「紺のきつねそば」、「黄色いまめ博多ラーメン」などさまざまな色シリーズのカップ麺が発売中だ。カレーうどんや力もちうどんにはもともと色の名前は入っていなかったそうだが、ブランドをシリーズ化していきたいという意向から黒や白の色名が入ることになった。なお、「おそば屋さんの鴨だしそば」はおそば屋さんをイメージした商品内容であることを優先して、シリーズ内で唯一色がついてない。
東洋水産はブランドをシリーズとしてプロモーションしたり、タレントの武田鉄矢さんのCMを長年続けたりして、認知度を全国津々浦々に広げることに成功した。しかし、定番商品だからこその悩みもあるそうで、しっかりとプロモーションを続けないとユーザーが高齢化していくことが課題だという。ここ数年は若年層にはWeb、中高年層にはテレビCMといった形で、ターゲットに合わせてメディアを選びながら宣伝を続けている。
「赤いきつねシリーズを今以上に身近な存在にしたいと考えています。そのためには常に存在感を出し続けるのが大事だと思っています。そして中身のほうのマイナーチェンジも常に行っています。今以上にもう一段階おいしくするにはどうすればいいかを考えて進化をし続けていくのが課題ですね。今後もブランドの強化により一層取り組んでいきたいです!」

ブランド誕生から45年が経過した赤いきつねと緑のたぬき。今やこの名コンビを知らない人はいないだろう。現在この商品が全国的な知名度があるのは、東洋水産の社員たちの全国展開を目指したさまざまな努力と工夫、そして長年培われてきた信頼があるからだ。今後はどのようなブランド展開がされていくのだろうか。そして次の新商品にはどのような色名がつくのだろうか。今後の展望が楽しみだ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・ヒットの種は、地域の特徴にあわせてプロダクトを作ること
・商品が愛されるものになるためには、なじみやすい名前も大事
取材・文=越前与、写真=後藤巧
この記事の画像一覧(全11枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国1300カ所のお花見スポットの人気ランキングから桜祭りや夜桜ライトアップイベントまで、お花見に役立つ情報が満載!
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介