コーヒーで旅する日本/関西編|当意即妙のサービスで憩いのひと時を演出。風通しのいい“街のコモンスペース”。「common.」

関西ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

すみずみまで、久米さんのこだわりが詰まった店内


関西編の第51回は、京都市上京区の「common.」。バリスタの久米慧さんと美容師の麻衣子さん夫妻が2021年にオープン。コーヒーショップとヘアサロンが一体となった、ハイブリッドなスタイルで注目を集める一軒だ。ニュージーランドで4年間、バリスタの経験を積んだ久米さんの、朗らかな人柄とサービスマンシップもあって、開店からまだ1年ながら早くも地元の支持を獲得。老若男女が気軽に立ち寄る、街の新たな拠り所として定着しつつある。

バリスタの久米慧さん(左)、美容師の麻衣子さん(右)


Profile|久米慧(くめ・さとし)、麻衣子 (まいこ)
1983(昭和58)年、広島県生まれ。ワーキングホリデーで滞在した、オーストラリアのコーヒーカルチャーに触れたのを機に、バリスタの道へ。スターバックスでの勤務を経て、麻衣子さんと共にニュージーランドへ渡り、4年間、現地のカフェで経験を積む。帰国後、京都のKurasuに移りバリスタを務めた後、2021年、麻衣子さんが手掛けるヘアサロンと一体になった、コーヒースタンド「common.」をオープン。

メルボルンで出合ったコーヒーから始まったバリスタへの道

モノトーンの店構えは、町家の趣を生かしながらモダンな雰囲気に

京都府庁のほど近くにある静かな路地。町家をリノベートした店構えは、一見、小さなコーヒースタンド。「ロケーション的に、ご近所でも知らない人が多いですね」という店主・久米さんと話していると、カウンターの脇から奥へと入っていくお客が。その先に、ヘアサロンが続いていようとは、表からはよもや分かるまじ。コーヒーも、サロンも同居する、この店を名付けて「common.」=共通する、とは、言い得て妙。バリスタの久米さんと、美容師の奥様・麻衣子さん夫妻がオープンして1年、お互いの職業を生かしたハイブリッドなスタイルで、じわじわと注目を集めている一軒だ。

「昔から、コーヒーに出合う前から、友人やお客さんが楽しく過ごせるようなことを仕事にしたくて。アルバイトしていた飲食店のホールの仕事も楽しかったから、自分が目指すべきところは薄々分かってた気がします」と、屈託ない笑顔を見せる久米さん。その格好のツールであるコーヒーやお酒を提供する、バリスタの仕事に巡り合ったのは、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していた時。飲食店から農業まで、 さまざまな仕事を経験する中で、メルボルンで飲んだコーヒーに進むべき道を見出した。「それまでコーヒーは好きではなかったんですが、現地のカフェで初めて好きと思えるコーヒーに出合って。どの店に行ってもおいしいから、知らない間にコーヒーを欠かせなくなってました」と振り返る。

店の奥にあるサロンは、中庭を望む町家らしい風情ある空間


この体験をきっかけに、一時帰国した際に早速、スターバックスに入ってコーヒーのいろはを学び、再び海外に渡り、バリスタの経験を積みたいと考えた久米さん。当時、美容師として修業中だった麻衣子さんも海外で腕を磨きたいとの思いが一致し、今度はオーストラリアのお隣、ニュージーランドへ共に移住。久米さんは、バリスタとして店を渡り歩き、現地のカフェカルチャーを体感した。「オーストラリアもそうですが、ニュージーランドも提供するコーヒーの杯数が桁違いに多い。1日に1000杯というのも珍しくない。それこそ戦場みたいな忙しさでしたが、世界各国から来たバリスタと一緒に働けたのは楽しい経験でした。現地ではバリスタの移籍もよくあることで、どこの店に入っても、プロとして仕事をこなすことが求められます。その中で、人見知りしない性格がいい方に作用しましたね」

空間からメニューまで、サービスマンとしてのこだわりを凝縮

好みの豆が選べる、ドリップコーヒー・ホット(500円)

天性の人懐こさも手伝って、数々の現場でバリスタのスキルを吸収していった久米さんが、ニュージーランドから帰国したのは4年が過ぎた頃。当時、Kurasuで焙煎士を務めていた、スターバックス時代の同僚からの誘いを受け、心機一転、京都へ。ニュージーランドで培った技術と経験を発揮すると共に、日本ならではのコ-ヒーカルチャーの魅力にも触れて、バリスタとして懐深さを増した。

2021年に独立し、立ち上げた自店は、各国での経験に加えて、サービスマンとしてのこだわりが随所に行き届いている。「根が凝り性なので、使うもの一つ一つ、とことん考えて選んでいます。お客さんの中には、ここで使ったのがきっかけで、後で購入する方もいて、いろんな人に気に入ってもらえると嬉しい」と久米さん。六角形のレンガ式の床や、天井から下がる立体的なスピーカーから、シュガーポットやひざ掛け、おいてある雑誌に至るまで、見るもの触れるものすべてに、理由があるというから恐れ入る。

お菓子は市内のパティスリー・アンフルネと菓子雨の日から。焼菓子も充実


もちろん、そのこだわりはコーヒーにも。豆は古巣のKurasuと、エルサルバドルのコーヒーを専門とする京都・COYOTEから。おいしい時期を逃さず提供するため、常時4、5種に絞って新鮮な風味を提供。カフェラテに、希少なメイプルシロップを合わせるアレンジも好評だ。また、メニューにはアルコールを使ったドリンクもあり、人気のアイリッシュコーヒーは、エスプレッソとスチームドミルクを使った、ラテ風のスタイルがユニーク。「寒い日にぴったりの一杯。お菓子にもよくあうので、セットにして楽しんでいただいても」と久米さん。市内のお菓子屋さん・アンフルネから仕入れる、チーズケーキやサブレ、バターサンドなどのペアリングで、ちょっと大人のコーヒーブレイクも一興だ。

アイリッシュコーヒー(850円)、甘さ控えめ、ミルキーな風味が後引くアンフルネのチーズケーキ(400円)


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