タクシーで巡る心霊ツアー、倍率は60倍超！「実際に不思議な体験も」業界の固定概念を変えるユニークな取り組みに注目

要人になった気分を味わえる「SP風タクシー」、歴史的事件ゆかりの地をめぐる「三和ミステリー調査班」など、ユニークな乗車メニューやツアーを展開するタクシー会社がある。神奈川県横浜市に本社を構える三和交通株式会社だ。特に人気なのは夏季限定で開催される「心霊スポット巡礼ツアー」。昨年は募集枠40組に対して、2492件の応募があった。倍率にして約62倍。恐怖体験に興味のある若年層を中心に人気があるという。広報の小関正和さんと小澤千秋さんに、ツアーが始まったきっかけや、企画を次々と打ち出す理由を聞いた。

過去には心霊写真も…乗務社員の解説で巡る心霊スポット

ーーまずは「心霊スポット巡礼ツアー」について教えてください。
【小関正和】関東の心霊スポットを、弊社の乗務社員がタクシーで案内します。業務中に怖い体験をしたようなスポットに、その体験談を話しながらお客様をお連れするツアーとしてスタートしました。現在は、横浜やふじみ野などエリアごとにコースがあり、1コースにつき最低でも5スポットを回ります。所要時間は2〜3時間。多摩エリアにはスポットが多いので、午後8時から翌朝午前5時までオールナイトで巡るコースも用意しています。

ーーツアー参加者からはどのような感想が？
【小関正和】みなさん「怖かった」というのは言われますね。なかには「楽しかった」と言われる方もいらっしゃいます。調べることが好きな乗務社員が多いので、「こういう事件があったから、こういう心霊現象が起きたのでは」と説明でき、友人同士で行くのとは、また違った楽しさがあるようです。

ーー実際に不思議な体験をされたお客様もいますか？
【小関正和】あるスポットで、乗務社員は「鳥居をくぐらないでください」とご案内していたのですが、男性4人で参加されたお客様のうち、ひとりだけ鳥居をくぐった方がいました。そのあとに写真を撮ると、その方だけ首から上が写っていないということがありましたね。オーブ(写真に写り込む小さな光球)は、ほぼすべてのスポットで撮れるという感じです。

試走10回、コース設計にもこだわり

ーー人気の理由は何なのでしょうか？
【小澤千秋】やはり物珍しさが一番だと思います。タクシーのツアー、しかも企業が心霊ツアーをするということが珍しく、たくさんのメディアに露出できたことも大きかったと思います。また、抽選にしたことでプレミアム感が強まったことも、人気が出た理由かと思います。

【小関正和】ツアー終了後に行っているアンケートの結果によると、乗務社員が同行している安全な環境で、恐怖体験ができるというのも理由のひとつと考えられます。

ーーツアーの準備はいつ始まるのですか？
【小関正和】今年は4月にスケジュールを決めて、ゴールデンウィーク明けからは試走をして、乗務社員がお客様にしっかり説明できるかなどを確認しています。

ーー試走をしているのですね。
【小関正和】本番までに10回ほど行っています。最初は管理職だけでコースを考えていたのですが、現場に行くと乗務社員から運転経路や、現地での歩き方など質問がけっこうあったんです。そこで、2016年から試走をするようになりました。初年度は社員が乗っていましたが、何回もやっていると内容がわかってしまうので、現在は第三者を乗せてます。最近はSNSでコラボしたTikTokerの方に声をかけて乗ってもらいました。スポット名を明かさなければSNSに載せてもいいとお伝えしましたが、その方は「怖くて写真なんか撮れなかった」と言っていましたね。

ーーコースはどのように考えていますか？
【小関正和】スポット間の移動時間は、間延びしない30分を目安にコースを組んでいます。午後8時以降に出発するので仕事終わりで参加する方も多く、あまり移動時間が長いと眠くなってしまうからです。