簡略化する業界の流れにあえて逆行、ローソンが“手作り手渡し”の新サービス『MACHI cafe+』に込めた思い
東京ウォーカー(全国版)
ファンタジスタが手作りすることに意味がある。業界と逆行しながらも展開する理由と効果、今後の戦略展開
ーー『MACHI cafe+』は、近年のコンビニで進んでいる省人化や効率化という観点から考えると逆行しているようにも思えますが、あえて手作りにこだわる狙いについて教えてください。
【笠井詩織】手作りというのは、もちろん時代に逆行している面もあると思います。人材不足や効率化を考えると、やはり注文を受けてから作るというのは全店でできるサービスではないので、店舗は限定されています。ただ、店内厨房スペースで手作りするからこそできることもたくさんあるんですよね。例えば、生のバナナを使ったりホイップクリームの有無を選べたり、お客様の好みに合わせた商品が作れるというのも、手作りだからこそできることだと思っています。

ーーユーザーからの反響はどうですか?
【笠井詩織】やっぱり生のバナナを使っているフレッシュ感や、コンビニならではの価格帯でしっかりした飲み応えが楽しめると好評をいただいています。ジューシーで高クオリティの味わいと、コスパのよさも、魅力のひとつと感じていただけているようです。お客様アンケートでも「コーヒーは酸味が…」とか、「こういうフルーツを使った商品があったらうれしい」という声をいただいているので、これからもレベルアップをしていきます。
ーーユーザーの声を参考にして取り入れたアイデアはありますか?
【笠井詩織】最初は、バナナミルクスムージーしかなくて、「このシンプルなシリーズがいいけど、ほかの味も欲しい」と言われて、ブルーベリーバナナミルクスムージーなどが登場しました。それから、「トッピングするのが楽しい」というクルーさんの声もあったので、ホイップクリームをのせるものだけではなく、チョコソースをかける仕様の商品なども開発しました。
ーーカフェ事業は、すごく競争が激しいジャンルだと思いますが、競合他社との差別化という視点で、強みはどういうところにあると考えていますか?
【笠井詩織】ローソンならではの店内厨房スペースだからこそできる手作りと、一般的なカフェと比べ、コンビニならではの物理的・心理的距離の近さでしょうか。やっぱりカフェは、毎日行くにはちょっとお値段が高く、家から距離がある場所に多いものです。でも、ローソンというコンビニエンスストアは、“マチのほっとステーション”という身近な存在。家からも近く毎日でも立ち寄ることができる場所で専門店のような商品サービスが受けられます。さらに常連さんになっていただければ、顔馴染みのクルーさんから心のこもった接客が受けられます。こういった距離の近さも魅力のひとつだと思います。

ーー確かに身近さは、競合との大きな差別化ポイントですね。そして、セルフに寄った効率面への差別化については、温かいおもてなしという部分で差別化できているというわけですね。
【笠井詩織】そうですね。例えば、お会計がドリンクとお弁当だけで、クイックにこなしたい方はセルフレジを使っていただき、心のこもった接客を受けたい方は従来どおりのレジで、と、ニーズに合わせたコミュニケーションを取れるようになっています。
ーーメインとなる購入者層はどういった方ですか?
【笠井詩織】やはりスイーツドリンクなので、女性やファミリーを中心にご支持いただいています。年齢層としては30代から50代の方が多く、お子様と一緒にイートインスペースで飲んでいただいているシーンも多く見かけます。さらにここ最近は、SNSをきっかけに10代、20代の女性の来店も増えています。
ーー限定店舗というレアさも、SNSに向いていますね。
【笠井詩織】はい。「近くにあるなら、ちょっと行ってみよ」と立ち寄り、「このレアな商品、飲んだよ」といった感じでSNSに投稿してもらえています。SNSを通して広まっている側面もあるので、若い層の方にも支持される商品を今後も展開していきたいと思います。
ーー今後の展開、戦略についても教えていただければと思います。
【笠井詩織】まず、商品でいうと、店内で手作りしているスムージーのなかで華やかなスイーツラインが目を引きますが、人気なのは毎日飲めてリピート率が高い「ノンシュガーライン」と呼んでいる、バナナやミルクの自然の甘さが楽しめる商品なんです。『MACHI cafe+』の人気ランキングでも、1位が『バナナミルクスムージー』(350円)、2位が『ダークチョコバナナスムージーホイップあり』(480円)、そして3位が『ブルーベリーバナナミルクスムージー』(390円)と、ノンシュガーラインが上位(1位と3位)にきています。今後は、このノンシュガーラインのサッパリしたシリーズの拡充を予定しています。それから、今は材料にほぼバナナを使用していますが、スムージーを作る機器を見直し、バナナ以外のフルーツも取り扱えるような展開を考え中です。

【笠井詩織】次に、事業的な面でいうと、『MACHI cafe+』を導入する店舗を増やすことですね。厳しい導入基準があるので、それをクリアできるようにクルーさんの育成に力を入れて、レベルの高い店舗を増やすことを目指していきたいです。今後は、新潟や栃木など、甲信越や北関東圏に出店を予定しているので、地域の方はお待ちいただければと思います。本当は、すべての都道府県に出店したいのですが、まだ関東圏での検証段階でして…。クルーさんの声を聞いて、改良できる部分をブラッシュアップしながらチャレンジしている最中なんです。社員が本部から店舗に足を運ぶので、距離が遠いとなかなかクルーさんの声も聞きにいけないですし、原材料の物流の問題もクリアしないといけないんです。拡大するとなれば、リスクチェックやオペレーションも見直さないといけませんし。
ーービジョンをしっかりと共有する点を含め、オペレーションには時間が必要ですね。
【笠井詩織】そうなんですよ。実は、当初「ピープルビジネスを目指している」というコンセプトをクルーさんにしっかりと伝えることができず、「忙しくなった」とモチベーションを下げてしまったという実体験がありました。ただ、この出来事から、「ちゃんとコンセプトを伝えないといけないね」、「クルーさんが楽しんでやれる企画を継続的に実施していかないといけないね」と、改善点を見つけることができたんです。そのおかげで研修の重要さにあらためて気づくことができ、全体のクオリティを上げられたと思います。私自信も、店舗でお客様にインタビューしたり、クルーさんが「楽しいです!」と話している動画を作成して、今後、加盟する店舗のオーナーさんに見ていただく研修動画の制作をしました。その際に、すごくうれしいコメントをたくさんもらえて幸せな経験でした。

ーーそういう声を聞けると、モチベーションに絶対なりますもんね。では最後に、この『MACHI cafe+』を含めて、“新・マチのほっとステーションへの進化”というビジョンに向けて、ローソンがこれから目指すところを教えてください。
【笠井詩織】ローソンは創業以来、常にお客様に寄り添い、社会の変化に対応してきました。さまざまな商品やサービスを生み出してきましたが、これからもマチに暮らす人々の生活全般を支えさせていただく存在であり続けるために、その時代、時代に合わせて進化を続けていきます。このMACHI cafe+についても、わくわく感や「コンビニなのに!」といった驚きをお客様に感じていただきたくて始めた取り組みなので、お客様の期待を上回る価値を今後も提供していきたいと思っています。「何か新しい発見あるかな?」と新商品を求めて来店されるお客様が多いので、ローソンは「今の社会はこれが求められているんじゃないか」とか「新しい発見を提供しよう」といった、商品サービスを作ることを今後もやっていきたいと思います。
取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=樋口涼
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