結婚しない。子供もいない。世間の"普通"から外れた氷河期世代のアラフォー女性を描いた「Ready go,Lady!」に注目【作者に聞く】

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

41歳で心機一転、憧れの職業に転職した主人公。仕事を通して世間のステレオタイプに直面していくアラフォー独身女性を描いた「Ready go,Lady!」がpixivやTwitterに投稿されている。「結婚することが女の幸せ」などの価値観にモヤモヤを抱き、時には疑問を投げかける姿は多くの人の共感を呼ぶのでは。作者のアサノヒロ( @D6RyXu6RT8Sz )さんに話を聞いた。

40歳を過ぎて結婚もしていない女は"普通"じゃない?アラフォー独身女性がさまざまな人と出会いながら、世間の価値観に疑問を呈していく画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


「喜怒哀楽いろんなことが描けそう」人生折り返しを迎えた氷河期世代の女性を主人公に

「子供のころから漫画が好きで何かしら絵を描いていましたが、一時期漫画自体に興味を失っていた時期がありました。本格的に始めたのは、2016年に漫画制作ソフトを購入してからです」と話すアサノさんは、商業電子レーベルでの連載経験を持つものの、自らをあえて「駆け出しの漫画家」と称している。現在はパートなどの傍らインディーズで漫画を創作して、出版社への持ち込みやコンテストへの投稿をしているという。

「前の商業連載を終えたときに自分が何を描きたいか完全に見失ってしまい、次の仕事の話もお断りして、創作から少し離れていました。そんななかで、『結婚も出産もしないかもしれない人生が見えてきた40代女性を主人公に』『地方都市を舞台に』何か描きたいと思いました。思いつくことをとりあえず全部入れて、リハビリのような感じで描き始めたのが最初です。そういう経緯なので主題がボヤけていて、冒頭のインパクトが薄く漫画としてはかなり荒削りです。いくつかの雑誌の編集者に見ていただきましたが、かなり厳しい反応でした」と、「Ready go,Lady!」を描き始めたころを振り返る。

Ready go,Lady!(1-2)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


同作の主人公は、「自分のために」生きると決めた女性・小田原真由。41歳にして、地元の印刷会社から憧れの雑誌編集者に転職を遂げる。「平均寿命を仮に80歳とすると、40歳は折り返し地点です。今の40代は、かつての就職氷河期で生活のために希望の仕事を諦めた人がかなりいると思います。さらに女性は、比較的景気が良かった学生時代は女性の自立など多様な生き方が謳われたのに、いざ社会に出たときには不況で就職もままならず、女の幸せはやっぱり”結婚すること”だと言われ…そんな風に生き方や幸せの価値観が大きく揺らいだ世代だと感じました。景気に翻弄され、自分で選んだようで選ばされた人生にモヤモヤしているけど、年齢がネックになって結婚・出産・就職など選択肢は狭まる一方、そんな世代が心機一転新しい環境に飛び込んだらーー辛いことも喜びも、いろんなことが描けそうだと思いました」

主人公は、雑誌編集者としてさまざまな人と関わっていく。「主人公が立場や年齢の違う人と出会い、対立したり和解したりという話を3〜5話完結のオムニバス形式にしたいと考えていたので、いろいろな人に自然に出会える職業として編集者を選びました。初めは自分に縁のある『漫画編集者』を考えましたが、地方都市を舞台にしたかったので、タウン情報誌の雑誌編集者になりました」

女性キャラには決まったモデルはいない一方で、男性キャラは有名人をイメージしているという。真由の入社と同時期に本社から出向してきた加藤章史は、偏見や固定観念に対する彼女の意見を柔軟にとらえ、周囲との関係をたびたび取り持ってくれる。「以前、商業連載をしたときに王道設定を入れなかったため苦労したので、今回はヒロインの相手役を女性漫画の王道である『社会的地位のあるイケメン』にすると決めました。章史は40〜50代の人気俳優を研究して、ある方をイメージして作りました」

Ready go,Lady!(1-6)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)

Ready go,Lady!(1-13)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)

Ready go,Lady!(1-14)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


さらに、真由とは対照的な存在として描かれているのが、31歳で事務員の古澤多美子。「あの歳なら一度は結婚してるのが”普通”、ああはなりたくない」と真由の陰口を言う一方で、飲み会では料理の取り分けから注文など率先して動き回る姿が印象的だ。そのシーンを含め、漫画にはアサノさんの実体験を取り入れている部分もあるという。

「雑誌の取材部分はほとんど妄想ですが、記事の写真はスマホカメラで撮影することがよくあるというのは、記者をしている知人に聞いた話を元にしています。真由たちの歓迎会部分の『自分はほとんど食事せずに給仕係に徹する女性』は、飲み会や法事ではしばしば見かける光景です。自分は気が利かないタイプなので単純にすごいと思っていました。でもあるとき『少し食べたらいいのに』と勧めたら、取り皿が全く汚れていないのに『大丈夫ですよーいっぱい食べてますよー!』と返ってきて…。当時は本人が好きでやっているならいいやと思ったけど、今考えると実は無理してやっていたのかもしれないな…と。そのエピソードを元に膨らませています」

Ready go,Lady!(1-23)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)

Ready go,Lady!(2-14)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


真由と多美子が関わるシーンは特に楽しんで描いているそう。「飲み会のシーンや多美子が真由をディスる時の顔は力を入れています。気に入っている場面は、真由と章史がタバコを吸いながら話すシーンです。お互いを恋愛対象として認識しないところからスタートしたかったので、『男の前でタバコを吸う女』はどうしても入れたかった描写です。若い人はどうかわかりませんが、アラフォー以上の世代は”女が男の前で喫煙したら恋人やお嫁さん候補から外される”ように感じていましたので」

Ready go,Lady!(2-23)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)

Ready go,Lady!(2-25)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


作品を描くときに意識していることを聞くと、「まだ2話しか描いていないのでわかりにくいですが、今描いているエピソードは主人公・真由と同僚・多美子の『40代独身女 VS 30代独身女』 の対立構図になっています。対立や争いはお互いの事情や考えがわからない、勝手に想像する、決めつけるところから始まるので、物語が進むなかでお互いに相手の考えを知って理解して、関係性がほぐれていくように描いていきたいです」と教えてくれた。

Ready go,Lady!(2-28)画像提供=アサノヒロ(@D6RyXu6RT8Sz)


ちなみに、読者層は「主人公と同じアラフォー女性を意識していますが、男女年齢問わず幅広く読んでいただきたいです」とのこと。

今後は、「主人公を中心とした、3〜5話で完結するオムニバス形式のエピソードを5つほど考えています」というアサノさん。さらに、「今は女性同士の分断や対立に興味があるのでそれを中心に描きたいですが、年代間・男女間の問題などこれから自分が年を重ねていくなかで興味があるものをテーマにしていきたいと思います」と展望を教えてくれた。

憧れの職に就いた真由は、章史や多美子とどう関わっていくのか。41歳から新しい人生を始めた彼女の行く末を見守りたい。

取材・文=上田芽依

この記事の画像一覧(全53枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

お花見ガイド2024

お花見ガイド2024

全国1300カ所のお花見スポットの人気ランキングから桜祭りや夜桜ライトアップイベントまで、お花見に役立つ情報が満載!

CHECK!今が見頃の花見スポットはこちら

ページ上部へ戻る