タザキの投資本案内「賢明なる投資家」/ウォーレン・バフェットの人生を変えた「証券分析の父」が伝えるバリュー投資の極意
東京ウォーカー(全国版)
こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(
@tazaki_youtube
)と申します。
学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。
今回紹介するのは、「証券分析の父」と称され、ウォーレン・バフェットの師としても知られるベンジャミン・グレアム(1894〜1976年)の
「賢明なる投資家 - 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法」(著:ベンジャミン・グレアム、土光篤洋/パンローリング)
です。同書は、ウォーレン・バフェットにとって、人生を変える一冊となりました。学生時代に出会って以来、彼は長年にわたりこの本を繰り返し読み返しています。

1949年に初版が発行され、第4版は1972年に出版。その日本語版は2000年に翻訳され、さらに2005年には、著名な金融ジャーナリスト、ジェイソン・ツバイクによる注釈版「新賢明なる投資家(上・下)」が出版されました。この1949年に初めて出版された本が、今なお読み継がれていることは、その価値と影響力を物語っています。
投資と投機
初版が発行された当時、株式投資は「投機」であるという認識が一般的でした。そんな時代に書かれた同書では、「投資」と「投機」の定義の違いがしっかりと書かれています。
投資とは、「慎重な分析に基づき元本の安全性を確保しながら、適正な収益を得るような行動」。一方、投機は、市場に対するギャンブル的な要素が強く含まれる行為です。
そして、
投機には「賢明な投機」と「愚かな投機」の2種類がある
と説明されています。
「賢明な投機」とは、専門知識を持った人々によって行われる投資行為
で、大きなリターンの可能性を秘めています。このような投機行為は、ベンチャー企業やスタートアップへの投資など、高リスクだが新しい技術の発展に寄与する場合もあります。このため、誰かが行わなければならない重要な行動となっています。
しかし、このような投機行為を行うべきは、十分な知識と資金を持つ真の投資家だけであり、この行為が「賢明な投機」と称される所以です。
一方、「愚かな投機」とは、
(1)投資と勘違いして行われる投機行為であり、これこそが本当の意味でのギャンブル的な行動。
(2)知識も技術もなく投機を行う行為。これは、基本的にギャンブルと同じ意味合いを持っている。
(3)自分が許容できないリスクを負ってしまう行為。
これらを踏まえると、投資行為はギャンブルではない、ということが重要です。きちんとリスクを理解し、適切な投資を行うべきだということを、この本は強調しています。
投資家の種類
投資家は「積極的投資家」と「防衛的投資家」の2つのタイプに分けられます。
「積極的投資家」とは、平均以上のリターンを目指して多くの時間と手間を投資にかける人々
のことを指します。彼らはアクティブな投資を行い、詳細な分析と研究に時間をかけます。リスクを取ることもありますが、その背後にはしっかりとした教育と理解があります。
一方で
「防衛的投資家」とは、失敗や損失を避けることを最優先とし、シンプルな投資戦略を採用する人々
のことを指しています。
一般的な個人投資家に対しては、「防衛的投資家」であるべき
だと推奨されています。
プロの投資家のように一日中個別の銘柄の分析に時間をかけることができない、またそのような専門的な経験もないためです。多くの人々は、主要な職業を持ちながら資産運用を考えるため、慎重で堅実な「防衛的投資家」のスタンスが求められるというわけです。
防衛的投資家のアセットアロケーション
防衛的投資家のポートフォリオ作成におけるアセットアロケーションの方針は、インデックスファンドの組み合わせにも応用できます。この考え方では、ポートフォリオの25~75%を債券に保有し、残りを株式に配分するとされています。
この25~75%の比率は、市場の状況に応じて変動させるもので、リバランスの一環として行います。非常に自信がある場合を除き、株式の割合は50%以下に抑えることが推奨されています。
ただし、株式の割合が低すぎるのも問題で、特にインフレリスクの観点からです。株式はインフレリスクを抑える効果があるため、一定の割合を保持するべきとされています。これらの要素を総合的に考慮すると、
防衛的投資家にとっては50:50の債券と株式の配分が最もシンプルで効果的なポートフォリオとなる可能性がある、という結論が提案されています。
ミスター・マーケットに騙されない
市場では時折、不合理な値段がつくことがあります。そういう時にはグレアムが生み出した「ミスター・マーケット」という存在を思い出すべきです。
ミスター・マーケットは気まぐれな人物として描かれ、「躁うつ病」とまで形容されます。極端に高揚したときもあれば、深く絶望に陥るときもあります。
このミスター・マーケットに振り回されてしまうと、投資での成功は難しいでしょう。グレアムは「持ち株が何の根拠もなく下がったときに、急いで逃げ出したり心配しすぎたりする投資家は、意地になってせっかくの基本的な強みを基本的な弱みにしてしまっている」と警告します。これは、個人投資家には、ミスター・マーケットに追随するかどうかを選択する自由があり、それは贅沢なことだということなのです。
この考え方は、例えば「ピーター・リンチの株で勝つ」(著:ピーター・リンチ、ジョン・ロスチャイルド/ダイヤモンド社)と合わせて読むと、さらに理解が深まるかもしれません。個人投資家には「買わない自由」や「待つことができる自由」があるということが、このミスター・マーケットの概念から読み取れるのです。市場の過剰な反応に惑わされず、自分の分析と判断に基づいた投資を行うことの重要性が強調されています。
最も保守的な投資家の行動
また、最も保守的な人々は信託ファンドを購入しているとの記載があります。この第4版が出版されたのは1972年ですが、インデックスファンドという概念が生まれたのはそれから4年後の1976年頃とされています。
その後、ジェイソン・ツヴァイクによって注釈が加えられた新版が出版されました。この新版では、「グレアムは晩年、ウォーレン・バフェットがそうしたように、個人投資家にとっての最高の選択肢だといってインデックスファンドを称賛している」と書かれています。
まとめると、ミスター・マーケットを無視してドルコスト平均法で買い付け、その後はリバランスに専念するのが保守的な個人投資家の最適な行動の一つと考えられるでしょう。
個別銘柄の選び方について、以下の4つのポイントが挙げられます。
1.
分散投資のバランス:投資対象を10~30銘柄に分散させることが推奨されています。一定の分散はリスクヘッジとして重要ですが、銘柄数が多すぎると管理が困難になるため、30銘柄以下に抑えるべきだとされています。
2.
財務状況の重視:財務が健全な企業を選ぶべきです。具体的には、自己資本比率が50%以上の企業が望ましいとされています。しかし、安定性の高い業種である鉄道や公益事業などの場合は、30%以上の自己資本比率でも良いと考えられています。
3.
配当の安定性:20年以上連続して配当を支払っている企業を選ぶことが推奨されています。このような企業は、経済状況の変動に対しても一定の利益を上げ、株主への還元を続けることができると考えられるためです。
4.
適切なバリュエーション:株価が過去7年間の平均収益の25倍以内、または過去12カ月の収益の20倍以内であることが望ましいとされています。財務が健全で、長期間にわたって配当を支払っている企業であっても、株価が割高であれば投資を避けるべきだという考え方が示されています。
これらの要点をまとめると、リスク管理をしながら、「合理的な収益率で購入できる大企業株」を選ぶことが大衆向けだという結論になります。
防衛的投資家の質的・量的な7つの基準
本書の後半では、防衛的投資家向けに質的・量的な基準が挙げられています。
1. 企業の適切な規模
2. 十分に健全な財務状況
3. 収益の安定性
4. 配当歴
5. 収益の伸び
6. 妥当な株価収益率(PER)
7. 妥当な株価純資産倍率(PBR)
企業規模に関しては、小企業は大きな可能性を秘めていますが、「防衛的投資家」の範疇には入らないとのこと。財務状況は、流動比率の確認。配当歴は、少なくとも過去20年において無配当の年がないことが条件です。これはさすがアメリカといった条件でしょうか。
この中で最も重要なのが、6と7です。
グレアムの経験則から、株価収益率(PER)に株価純資産倍率(PBR)を掛け合わせたものが22.5以上であってはならないと書かれています。
これが有名な
「ミックス係数」
です。
例えば、PERが8倍、PBRが1.5倍の株なら、8×1.5=12なので、検討に値する銘柄と言えます。22.5を下回れば買いと言えるわけではなく、あくまで割高な銘柄をは除外するためのツールと言えます。
積極的投資家が持つべき安全域とは
「積極的投資家の株式銘柄選択」の章では、グレアム・ニューマン社(グレアムのヘッジファンド)の銘柄選択基準が掲載されています。
「この売買法の基本は、正味流動資産のみを考えた(つまり、工場設備を含むその他の資産は考慮に入れない)簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得することである。われわれが買い付けた銘柄のほとんどは、この『スリム化された』資産価値の3分の2以下の価格で入手したものである」とあります。
いわゆる
「ネットネット株」
です。一般的に「解散価値」と言われるPBR1.0倍は、純資産=時価総額を意味しますから、その水準を大きく下回るかなり厳しい基準であることはわかります。

ただし、このようなバリュー投資には弱点がないわけではないと考えられます。実際に、バフェットの投資スタイルが徐々に変わったのも、そこに理由があると思います。あまりにも厳しい条件であるため、素晴らしい企業で、適切レベルの株価の企業を逃してしまう点が弱点でしょう。
まとめ
「バリュー投資の父」とも称されるグレアムの代表作には、非常に厳しい目線で株を選ぶ方法が描かれています。本書では、「株は香水ではなく食品を選ぶように選べ」という言葉で、投資への態度を表現していました。企業規模、収益性、健全性、将来性、配当など、あらゆる観点から企業を精査し、仮に良い企業であっても、価格が一定の水準を超えていれば購入対象にはなりません。
この態度は、スーパーで食料品を吟味する主婦の慎重さにも似ているかもしれません。投資においては、流行りの株に飛びつくのではなく、地味な調査と分析を重ねることが重要だと強調されています。この方法は、感情や市場の波に流されず、しっかりとした価値を見極めて投資をする姿勢を養うための素晴らしい指南となるでしょう。
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