博報堂テクノロジーズってどんな会社?マーケティングとテクノロジーの融合でかなえたい“広告の未来”とは

東京ウォーカー(全国版)

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選べる働き方など、多様な制度・研修が充実した理想的な環境

選べる働き方など、多様な制度・研修が充実した理想的な環境

ーー貴社が社員のために取り組んでいる制度にはどういったものがありますか?
【神部昌彦】個人とチームのパフォーマンスが最適となる場所での勤務を推奨するベストプレイス勤務を採用しているので、ALLテレワーク、OKです。遠隔地からの通勤も朝9時半までに到着できる通勤範囲で、月15万円以内の交通費であれば可能となっています。

【神部昌彦】それから、教育研修はすごく大事にしたいと考えています。会社が形づくられる前に「博報堂テクノロジーズ アカデミー」が立ち上げられたくらいです。この制度は、Udemyなど外部で行っているオープンな研修を受講できたり、スクラムマスター研修やプロダクトオーナー研修など、それぞれの会社で行っている独自性のある研修を推進する制度です。出自を超えて研修を受けられる体制をどう作ろうか、内部研修と外部研修を合わせてどうやるかといったテーマについて、まだまだ試行錯誤中です。8社JVのメリットを活かした、社員のスキルアップにつながる研修となっているので、一つひとつがメンバー間の学び合いの場になっていくと、いい会社になると思っています。ほかにも、自主学習への補助や副業制度なども導入しています。

ーー確かに、もともとそれぞれに存在していた研修を合理的に活用したほうが合理的ですね。
【神部昌彦】そうなんです。「その研修、やらせてよ」といった意見が(社内の)Slack上でやり取りされているのを見かけると、やっぱりうれしくなりますね。

ーーリモート勤務の方の割合は?
【神部昌彦】週2日未満の出社率の方が、全社員のうち7割ぐらい。もちろん、リモート手当も付きます。

ーー働き方の選択肢が増えたことはいいことですよね。集まったほうがいいこともあるし、集まらないほうが効率がいいときもありますし。
【神部昌彦】やっぱり、個人的には選べることがいいんだろうなって思っています。ただALLテレワークは、周りを見ているとつらそうですね。「そういえば…」と、ちょっと聞けば解決しちゃうことを、オンラインミーティングでわざわざ時間を設定しなければならないのも煩わしいものです。でも逆に、育児や介護の両立がしやすいっていう一面もありますからね。

社員の働き方について、時代にあった取り組みについて意見交換【撮影=阿部昌也】

ーー場所も含めてですけど、ご家庭の事情もありますよね。
【神部昌彦】実は、うちの子どもが双子で、私はほとんど残業をせず、育児最優先というキャリアを積んでいた時期があったんですよ。当時はまだ『イクメン』といった言葉もない時代で、周りからすると単なる“変わったやつ”でしたし、あの時代にテレワークがあれば、もう少し違ったかもしれないですね(笑)。でも、あの経験はすごくよかったと思っています。最初の4年間はほぼ記憶がないんですよ(苦笑)。妻とも話すのですが、双子だとすべてが同時に来るんですよね。お風呂でひとりを洗っている間、もうひとりを放っておくと沈んじゃうし、両手で子どもを抱っこしていると病院で診察券が取り出せなかったり…私には3つ子は育てられないなって、本当に思いました(笑)。

テクノロジーの力でコミュニケーションの意味の再構築を目指す!

ーー神部さんご自身のキャリアやシゴト観についても教えてください。博報堂テクノロジーズの設立までは、どういった経歴だったのですか?
【神部昌彦】私自身はもともとマーケティングに従事するマーケターでした。大学時代からマーケティングや経営の勉強をしていたので、新卒で博報堂に入社後にまずマーケティングに配属されました。それから6、7年目ぐらいに経営企画に移動してからはずっと経営企画畑で過ごしていて、アメリカの企業や国内自動車メーカーとの仕事の機会もあり、そこでグローバルマーケティングの仕事も担当しました。世界的なブランドをどうつくるか、各大陸のCMOを集めてブランドフォーラムをやったり、PMI(合併後の統合)で副社長として経営を任されたりといった経験もしました。そして5年前から、「テクノロジー×戦略」という、今の仕事を担当しています。

外部企業へ出向していた時期も、多くの経験と知識が得られ楽しかったそう【撮影=阿部昌也】


マーケターから経営企画、かなり畑の異なるジャンルへの異動ですが、当時はどんなお気持ちでしたか?最初から前向きに楽しめたのでしょうか?
【神部昌彦】いやいや、最初からは楽しめなかったですね(苦笑)。内示があった日は「えっ⁉︎」って驚いて飲みにいったんです。飲みの場で急に周りが騒がしくなったと思ったら、日付が変わってボジョレーヌーヴォーが解禁されたんですよ。そんな出来事もあって、私はそれ以来、ボジョレーヌーヴォーを口にしていません(笑)。そのくらい大きな自分のなかでのチェンジでしたね。ただ、やってみて、自社の経営はやっぱりおもしろいなと、今はそう思っています。これまでは提案で終わってしまう部分があったり、ある程度、意思決定のプロセスを得意先にお任せすることが多かったのですが、今回の博報堂テクノロジーズの設立は文字どおりフルコミット。そのやりがいはありますね。ただ、ボジョレーヌーヴォーはもう飲まないかもしれませんが(笑)。

ーーボジョレーヌーヴォーを楽しめる日が来るといいですね(笑)。神部さんが仕事において大切にしていること、リーダーとして大切にしていることを教えていただけますか?
【神部昌彦】仕事においては「後世の社員に恥じない意思決定をする」と、いつも心掛けています。意思決定をするポイントがあったときに、その後のトラブルを自分でも拾うことがたまにあるんですよね。思い返すと、「あのとき、こんなことを伝えたな」と後悔するんです。ですから、私は絶対に“恥じない意思決定”をしたいなといつも思っているし、目の前の人を喜ばせたいとか、感情に任せて判断することはしないようにしています。「こうしておけば社長が喜ぶよね」みたいな意思決定はしたくありません。いろいろな検証に耐えうる検討を自分がしっかりとしたうえで、正しい意思決定をしているか、それを常に考えています。

「後世の社員に恥じない意思決定をする」ということを自身のモットーとしている神部さん【撮影=阿部昌也】


【神部昌彦】リーダーとしては、「人を残したい」と思っています。将来のリーダーが生まれるために何か貢献したいですね。私は、特に日本企業は「課長や現場のリーダーが動かしている」という持論を強く持っていて、そういう人たちにマーケティングの考え方を注入することが日本企業を強くするんじゃないかと考えているんです。それで、博報堂時代から社内の勉強会やマーケティング講座の講師をしたり、経営について管理職に講義をしたりしてきました。そんな活動のひとつに、グロービス・マネジメント・スクールという場所でのマーケティング講座がありました。そのときに出会った人たちがみなさん出世していて、逆に「今こんなことやっています」みたいな話を教えてもらいながら、交流が続いています。それから最近は、「マーケティング×テクノロジー」の考えから、研究開発などもっと上流にマーケティングの概念が入ったらおもしろいだろうなと思っています。今、東京工業大学の大学院でマーケティング・サイエンスという講座を持っていて、理系の人にマーケティングを教えたらどうなるかという考えで、将来のリーダーの育成に貢献したいと活動しています。

ーーこの先、貴社がより活躍の幅を拡げるためにはどういったことが大事になると思われますか?
【神部昌彦】これだけ優秀なエンジニアが、博報堂グループだけでなく、さまざまなところから集まってきてくれています。この多様性を生かしたチーム運営を現場でできるようにするために、今アイデアを練っている最中なんです。博報堂DYとして長い間、培ってきたクリエイティブな考え方がチームにあるので、博報堂テクノロジーズの場合は、エンジニアの業務の仕方をどうビジネスサイドにもっていけるか、エンジニアの業務の進め方に負荷にならない範囲でどのくらいやれるか、という、やはり融合するようなワークスタイルをつくっていくことが一番なのかなと考えています。ただ、業務の標準化って、やっぱり難しいですよね。マーケティングとエンジニアが歩み寄り、互いが両方できるようになるには、どんどん施策を考えなければいけないんだなと、このインタビューを受けながら思いました。日々いろいろつくっていくこと、それがこれからの博報堂テクノロジーズの課題なんだと再認識しました。

ーー最後に、神部さんの今後の野望を教えてもらえますか?
【神部昌彦】テクノロジーの力でコミュニケーションの意味をもう一回つくることですね。「やっぱり広告っていいよね」とか「このブランドいいよね」という世の中になってほしいと思っています。

【神部昌彦】例えば、映画館。あれって、ぜんぜん嫌じゃないんですね。映画の予告もそうだし、本編と共存する広告もいいじゃないですか。そういう広告にするために「テクノロジーができることって何だ?」と。広告だけでなく、ブランドの設計、アプリかもしれないしWebかもしれないですが、やっぱり嫌なんですよね、企業と生活者が敵対してしまうのは。生活者に受けいれられる広告をつくることが一番の野望ですかね。

「購入して喜ばれる社会になるように、テクノロジーを使った広告で社会貢献を目指したい」と未来への意欲を語る【撮影=阿部昌也】


【神部昌彦】ある動画共有プラットフォームは有料版で広告が表示されないようにしていますし、ある動画配信サイトは逆に広告プランを追加して登録者数を伸ばしています。やっぱり能動的に情報を取りにいったときの、人の行動と広告の相性ってよくないところがあると思うんです。プライベートな空間も同様で、親しい人とのやり取りの画面が、まったく関係のない広告に支配されるなんて、Z世代じゃなくたって嫌じゃないですか。そんなのはありえないと思うので、そうじゃない広告の在り方をテクノロジーで解決したいと思っています。やっぱりいい商品を知りたいですし、商品のいいイメージを持っていたほうが、同じ消費をするにしても楽しいですよね。そういう楽しい社会に、テクノロジーを掛け合わせてもっと貢献したいと思います。

取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=阿部昌也

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