月額サブスク制のいじめ解決支援サービス。「MONSTER」は子どもたちの救世主となるか?

東京ウォーカー(全国版)

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“月額3万円”という金額の妙。第三者がいじめ問題に介入するメリットとは?

金泉さんが言うとおり、“月額3万円”と聞くと「高い」と感じる人は多いだろう。MONSTERでは“3カ月を目安に解決への道筋を示すためのアクションを実行する”というが、そうなると10万円ほどかかる見込みで、なかなかの金額だ。

「通常、いじめ問題で弁護士の方に依頼するとなると、着手金が30万円前後、内容証明を送ったら1通あたり3万円から5万円、報酬金は解決金の20%と言われており、少なくとも50万円程度かかると言われています。弁護士の方にはちょっとした相談をするのが難しく、やればやるほどお支払いの金額も増えます。実費で交通費や印紙代もかかってきてしまいます。MONSTERではこれをシンプルにしたいということで、サブスクという形にし、弁護士からの内容証明の発送に回数制限などは設けずにできるようにしました」

個人で弁護士へ依頼するよりもかなり金銭的な負担を抑えられることになるが、これはどうやって実現したのだろうか?

MONSTERの「解決プラン」でできる6つの事柄。MONSTERからの注意喚起や弁護士からの内容証明の発行(解決プランでは数は無制限)もすべてサブスク内で実施できる【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

「MONSTERでは日程調整を含む面談、相談、証拠の管理やチェック、内容証明の発行依頼もすべてオンラインで、MONSTER上で完結します。通常だと弁護士の方が証拠の整理や依頼人とのコミュニケーションなど手間暇かけてやっていかなければならないことを、MONSTERのスタッフでやっていき、弁護士の方の負担を最小限にしたことでコストを低くすることができました」

MONSTERの使い方はどのようなものなのだろうか?

MONSTERの登録はLINEから。現在はベータ版として保護者のみが登録できる「解決プラン」を展開しているが、おいおい子どもだけで利用できるプランも考えているという【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

MONSTERでは内容証明を送ることが解決への重要なアクションと位置付け。内容証明を送るためにも、いじめた子といじめられた内容(証拠)をきちんと管理していくことを大事にしている【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

日記も証拠として有効。動画や音声がなくても、なるべく詳細に記録していくことが大事なんだそう【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

内容証明を送るために、いじめた子の情報も登録できるようになっている。MONSTERでは高度なサイバー攻撃や内部セキュリティリスクにも対応できるシステムを採用し、登録者・登録内容を安全に保持しているという【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

「まず保護者の方にLINE登録をしていただき、立ちあがったアプリから子どものアカウントを招待してもらいます。アプリ内の『いじめた子』から、いじめてきた子の情報を登録、『証拠』からいつ誰にどんなことをされたのかを登録します。動画や音声、画像をアップすることも可能です。日記でも証拠として使えるので、どんなことがあったのかしっかり記録してもらうようにしています」

日記が証拠として使えるとなると「いじめられている」と捏造してしまうことはないだろうか?

「初期の構想だと子どもだけでの登録だったので、MONSTERがいじめに使われてしまうということがありました。しかし今の状態ですとまず保護者から登録してもらう必要があり、しかも月額3万円(税込3万3000円)という金額もかかりますから、捏造される危険性は低いと考えています。MONSTER側でも証拠のチェックをしますし、仮にそういった誰かを貶めるようなことがあれば、教育的な話にもなりますがそれはどういった罪になるかというのを話すこともできます」

月額3万円という金額が、通常よりも金額を抑えて弁護士依頼できるだけではなく、MONSTERが悪用されることも抑止できる金額になっていることがうかがえる。

弁護士からの注意喚起や内容証明発送もボタンひとつでできる。通常、弁護士にいじめ解決を依頼した場合、やりとりに時間がかかることが多いそうだが、MONSTERではシンプルなシステムにすることでスピーディーに動けるようにしている【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

MONSTERでは内容証明を送ることがいじめ解決に有効と考えているそうだが、実際にベータ版の運用が始まって、その点は実感しているのだろうか?

「はい。内容証明を送って終わりなのではなく、そのあとの相手のリアクションをもって“一定の解決”としているのですが、内容証明を送ったことで実際にいじめはストップしています。まだそういったケースはないですが、例えば内容証明を送ったあと、相手側が反論してきて弁護士を立ててきたり、裁判になったりした場合は弁護士の領域となり、MONSTERとしてできることはなくなります。しかし、裁判になったとしてもサブスク内で弁護士の方に稼働していただけます」

月額3万円のプランは「解決プラン」としてMONSTERの機能がフルマックスで使えるものだという。今後は、機能を少しずつ絞ったプランも展開する予定だ。

「時間をかけて対処したいという人に向けて、解決プランよりも機能を絞り料金も抑えた有料プランや、証拠集めのツールとして子どもたちだけでも使える無料プランを考えています」

いじめ問題に対し、学校や教師ではなく、弁護士に依頼すること。これに抵抗感を覚える人も少なくないだろうが、MONSTERではどの点が有効だと考えているのだろうか?

「いわゆる子ども同士の喧嘩、いざこざは日常茶飯事です。先生や学校が仲裁して、学校教育の範囲内で解決し日常に戻ったという状態と、そこで止まらず発展していじめというものになった状態とでは全く違う対処法が必要だと思います。私たちはいじめ問題に発展したものに関しては、第三者機関が介入したほうがいいと考えています。では、学校や先生が第三者にあたるかというと、そうではないと思うんです。先生や学校はいじめ問題が起きた場所に“一番近い関係者”であって第三者とは違います。実は客観的な第三者でなく、争いを解決する専門家でもない人たちが介入することで、問題解決が進まず、時間だけがいたずらに経過したり、場合によっては問題が悪化していったりしていると感じています。学校や先生は心理学のプロでも法律のプロでもありません。毎日学校の最前線で奮闘されている多忙な先生たちに、プラスアルファでいじめを発見し、解決まで責任を持ってもらうことが、必ずしも解決への最短ルートかというと、そうではないと考えています。双方の主張があり、白黒つけ難い部分も多いからこそ、毅然とした態度でどんどん対処を進めてくれる客観的な第三者が介入することで、解決に向けて進み始める、解決のスピードアップにつながるメリットがあります」と金泉さん。

さらに、MONSTER経由で弁護士に対応してもらえることのメリットとして、次のように話してくれた。

「MONSTERは、単にいじめを受けたという自己申告で対応を進めることはせず、いじめの聞き取り、ご家族や本人の要望、いじめを受けた証拠を踏まえ、MONSTERのカウンセラー、弁護士によるトリプルチェックでいじめを認定し慎重に対応を進めていきます。基本的な進め方として、いじめをやめるように口頭で注意喚起する最も緩やかな対応から始め、口頭注意やその後のやり取りで誠意がない場合にはじめて弁護士からの注意や内容証明という強い対応に徐々に切り替えていきます。また、各段階でMONSTERスタッフや弁護士との面談を設け、最新の状況に応じたリスクや要望に応じて柔軟に対応し、各アクションの実行判断はお子さまとご家族に委ねています。そういった心配をできる限り減らせるように、慎重ないじめの認定と準備・慎重な進め方・慎重な判断・丁寧なサポートを徹底し、慎重な進め方と判断に基づいていじめの認定〜準備〜アクションを実行します。MONSTERはいじめ問題に特化したシステム作り、スタッフ体制を整えていますから金銭面以外でもメリットがあります」

モンスター(怪物)に込めた「完璧な人間なんていない」という想い

「詳細はプライバシーの問題もあってお話できませんが」としつつ、ベータ版の運用が始まり、わかってきたことが多いという(ベータ版は100名までの募集)。

「現状、まだMONSTERとして大きな問題は起きておらず、わかったことが非常に多いですね。第三者がいじめ問題に介入する効果があることは実感しています。特に、問題に対して動かない学校・教育委員会・いじめた子の親などに対しては、内容証明が非常に有効であるということがわかってきました。ただし、事件化するようなケースでは、警察や警備サービスとの連携が必要だと考えていますし、行政や窓口、民間企業などとの連携を模索しているところです。MONSTERが当初目標の『選択肢のひとつになる』ためには、たとえ使われることはなくても、『知ってもらう』ことがまずは非常に重要です。もっとみなさんに知ってもらうため、関心を持ってもらうための施策を検討しています」と今後に向けて意気込みを語ってくれた。

最後に、インパクトのあるモンスター(怪物)というネーミングの意味について聞いた。

【画像】シンボルマークは虹色のハートを抱えたモンスター。「MONSTER」という名前に込めた想いとは【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

「私たちの考えである“人はみんなモンスターである”を反映したものです。これは決して悪い意味ではなく、人はそれぞれいいところ・悪いところ、外見・内面の特徴を表裏一体で持っていますよね。その特徴は自分以外の他人によって見え方や捉え方が変わり、誰かにとっては優しいモンスターでも、別の誰かにとっては意地悪なモンスターになることもあります。“完璧な人間なんていない”ということを、“人はみんなモンスターである”という表現に変換してサービス名にすることで、いじめという問題はいつでも、どこでも、誰にでも起こり得ることであり、だからこそ自分事として捉えてもらいたいというメッセージを込めています。シンボルマークとしては、モンスターが虹色のハートを抱きかかえているものにしていますが、人のいいところ・悪いところ、外見・内面の特徴を“個性”と考え、その多様さを抱えているハートの虹色で表現しています。MONSTERが、子どもたちのカラフルな個性を受け止める味方の存在でありたい、 そして子どもたち自身にも、受け止める力、優しい心を育んでいってもらいたいというメッセージも込めています」

心身が未熟な子どもが成長するにあたっては、いじめ自体は決してなくなるものではないだろう。しかし、有効な解決の道筋が見つかることで、悲惨な結果に終わってしまうことは避けられるかもしれない。すべての子どもが自分の個性を生かし、他者の個性を受け入れる。MONSTERがいじめられた子、いじめた子、それぞれの助けになることを期待したい。

この記事のひときわ #やくにたつ
・問題解決に向けて、常識や既存の枠組みを一度取り払って考えてみる
・問題が起きている現場の声を十分にヒアリングする
・悪用されない抑止力を持たせることも必要
・仮説をもって考えることは必要。しかし、立ち行かなくなったときは仮説を見直すことも大事

取材・文=西連寺くらら

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