“作って壊して”を繰り返してきた「G-SHOCK」の40年。「強すぎる」とアメリカで話題になり大流行!

東京ウォーカー(全国版)

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キャンプをはじめとしたアウトドアのハイシーズンとなる秋。アウトドアを楽しむ際に気にしておきたいのが、身に付けるものの耐久性や防水性、衝撃や汚れに対する強さだ。特に必需品でありながら精密機器である腕時計は、そういった要因から「G-SHOCK」を選ぶという人も多いのではないだろうか。

そんなG-SHOCKは、2023年で誕生40周年を迎える。異素材を組み合わせたデザインの40周年限定モデルの販売もされており、そこには、G-SHOCKが歩んだ40年間の軌跡が盛り込まれているのだとか。

今回は、身近でありながら意外と知らないG-SHOCKの開発秘話について、カシオ計算機株式会社 時計BU商品企画部の泉潤一さんに話を聞いた。

G-SHOCKの累計出荷個数は1億4000万個にのぼる。初代G-SHOCKは現在のすべてのモデルのベースとなっている。(写真はDW-5000C-1A)


作って壊しての繰り返し…「G-SHOCK」開発秘話

ファッションアイテムの1つとしても人気を誇っているG-SHOCKだが、1983年の発売当初、世間では薄いメタル素材のアナログ時計が流行していた。そんななか開発に乗り出したのは時計設計士の伊部菊雄氏で、開発のきっかけは、父親から贈られたメタル製の時計を落としてしまい、壊してしまったことだった。伊部氏はそのとき、「壊れない時計を作りたい」と考えたという。

「当時の流行と真逆なんですが、『世の中に新しいものを出せないか』という思いから、伊部さん、現社長である増田裕一、デザイナーのたった3人でプロジェクトを開始したそうです」

特に苦労したのは衝撃に対する実験だったらしく、まだ落下実験機などなかった当時、研究所があったビルの3階のトイレの窓から放り投げて耐久性を実験していた。素材や部品を何度も取り替え、作り直したものを自らの手で壊し、それを拾うために階段で昇り降りを繰り返したそう。精神的にも肉体的にも相当な負荷のある実験だったことが想像できる。

現在の耐衝撃性の評価実験では、ハンマーを用いて時計の本体を叩き飛ばして耐久性を確認している

泥や砂が混ざった水中でもボタン操作が正常にできているかを検証する耐泥性実験


そうした苦労の末に完成したG-SHOCKは、「G」に「グラビティ」、「SHOCK」には「衝撃」という意味が込められており、衝撃に強いことがすぐにわかる名前が付けられた。

アメリカのメディアによる“抜き打ちテスト”で一躍有名に

苦心の末に生まれたG-SHOCKだが、発売当初は鳴かず飛ばず。流行に乗っていないデザインだったがゆえに、時計店でも端のほうに陳列されてしまい、今では考えられない扱いをされていた。

人気を得る大きなきっかけとなったのは、1990年代に入ってからのこと。アメリカの現地メディアが、G-SHOCKの耐久性実験を抜き打ちで行った。しかし、これが海外で大きな話題を呼ぶことになる。

「アイスホッケーのスティックでパックを飛ばすようにG-SHOCKを飛ばしたり、トラックで踏みつけたりと、めちゃくちゃな実験を行ったそうです。それがきっかけで『日本におもしろい時計がある』と海外でG-SHOCKに関心が集まるようになりました」

実験の結果、G-SHOCKは壊れることなく、何をしても正確な時刻を表示していたという。さらに、アメリカ人の腕にフィットするサイズだったこともあり、特に消防士や警察官といった職業の人々から人気を集めた。その後、アメリカからの逆輸入という形で日本でも脚光を浴び、なかには日本の時計ブランドと知らずに手に取っていた人もいたのだとか。

1990年後半には、ヒップポップをはじめとしたアメリカのストリートカルチャーが日本の若者の間でブームになると、赤や黄、白、スケルトンなど、それまでの黒のイメージを一新するようなバリエーションを展開。「G-SHOCKはストリートファッションとの親和性が高い」というイメージが付き、これを機にG-SHOCKはファッションアイテムとして認識されるようになっていく。

これまでの黒いデザインからポップなカラーリングを展開し、イメージを一新。一気にファッショナブルに。(写真はDW-6900H-4)

ゲームボーイなどでも流行したスケルトンのデザインも人気。(写真はDW-6910K-3)


しかし、2000年になると売上が徐々に低迷。原点回帰して、機能をよりブラッシュアップすることに。時間の精度をアップさせるため、補正技術に電波、Bluetooth、GPSなどを活用し、ソーラー充電を採用してバッテリーを長持ちさせるようにした。すると、離れていたユーザーも戻り、売上も回復。文字盤はそれまではデジタル表示だったが、アナログ表示のものも開発し、より幅広い人に使えるようなモデルを展開した。

「『G-SHOCKは若者が使うもの』と思われがちですが、実はユーザー層は10代から60代までと非常に幅広いんです。G-SHOCKはコンセプト別にサブブランドを展開しており、服装だけでなく使用シーンに合わせて選べるので、選択肢が増えたことでユーザー層の幅も広がったのではないかと思います」

いくつもの転換期を経てきたG-SHOCKは、今年で40周年となり、特別なアニバーサリーデザインを開発(現在は完売)。樹脂とメタルを組み合わせたデザインになっている。

「このデザインは、“作って壊して直して”を繰り返してきた、これまでのG-SHOCKの哲学を再構築したものとなっています。これまでの歴史が詰め込まれているんです。それと、普段は見えない基盤や内部の部品も見えるようにしているんですが、そこには『G-SHOCKの中身まで知ってもらおう』という思いを込めています」

「再構築」をコンセプトに異素材を組み合わせたデザインとなっている40周年記念モデルのDWE-5640RX-7JR。※現在は完売

DWE-5640RX-7は40周年の刻印の入った、特別仕様の裏ブタに。※現在は完売


目指すのは「グローバルなニッチブランド」

衝撃への強さや防水性など、とにかく“強い”イメージがあるG-SHOCKは、アウトドアでも活躍している。「衝撃に強い、水や泥に強い、時間の精密度もバッチリ。アクティビティにはぴったりだと思っています」と泉さん。しかし、最近はスマートウォッチを身に付ける人が増加。健康志向の人が増え、自身の体調管理や運動量などを測定する機能が注目されているようだ。

とはいえ、スマートウォッチも精密機械。落としたりぶつけたりすると壊れてしまうことから、G-SHOCKのような頑丈なスマートウォッチを求める声もあるようで、カシオ計算機株式会社では「G-SQUAD」というサブブランドを展開し、ニーズに応えている。

「スマートウォッチについては、利便性を追求しすぎるより、G-SHOCKの世界観の中で主にアクティビティに活用できる機能を搭載したものを展開していきたいと考えています。“あくまでG-SHOCKである”ということを表現していきたいですね」

アウトドア専用として立ち上げられたサブブランド「PROTREK」の商品には、方位や気圧、温度と言ったアウトドアには欠かせない機能がついている。(写真はPRW-6900Y-1_JF)


今後も時代に合わせた商品展開をしていき、来る50周年に備えたいと語る泉さん。ユースカルチャーを中心に、ファッション、アート、音楽、スポーツといった文化の背景も重んじつつ開発していくという。

「これまでの40年間と同じように試行錯誤を繰り返しながら、時代の流れに合わせた、それでいてG-SHOCKの世界観を保った商品を開発していきます。もちろんニッチさも忘れずに、遊び心のある商品を作っていきたいですね」

2022年で最も人気を集めたのは、伝統的な多角デザインにメタルボディという新旧の魅力が詰まった1本。(写真はGMW-B5000D-1_JF)


ファッション、アウトドア、スポーツ、ビジネスと、さまざまなシーンで活躍しているG-SHOCK。「グローバルなニッチブランドを目指す」という泉さんの言葉から、今後どのようなデザインが登場するのか、楽しみでならない。

取材・文=織田繭(にげば企画)

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