小説家デビューを果たした、お笑い芸人レインボー・ジャンボたかおに迫る!自分を投影しすぎて恥ずかしい限り【インタビューその2】

東京ウォーカー(全国版)

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【写真】小説家デビューを果たしたお笑い芸人レインボー・ジャンボたかお©YOSHIMOTO KOGYO CO.,LTD.


コント職人レインボー・ジャンボたかおの小説 「説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女」 (KADOKAWA)が9月に発売された。筆者はYouTubeチャンネルでも数々のコントを配信しており、登場するキャラクターが魅力的であることも話題となっている。今回はレインボー・ジャンボたかおが、小説やキャラクターに込めた思いをインタビュー形式で深掘りしていく。

【画像】ジャンボたかおのデビュー作「説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女」


読み直して初めて感じたグッとくるセリフたち

――本著に出てくるキャラクターはどれも魅力的で、セリフ回しもテンポがよいのが印象的でしたが、個人的に好きなシーンはありますか。

このインタビューのために小説を読み直したんですけど、そのときに「この空気感いいな」と思う部分はいくつかありました。例えば第3章の冒頭で書かれている、すごくモテる母親とその娘とのやりとりです。どんなにモテても母親にとっての宝物は娘だと、直接的に言葉にはしないけど伝わる部分がすごく好きですね。そして、疑いようのない愛情は娘も理解していて、決して一方通行な気持ちではないというところも表現できている気がします。「明確な信頼関係を表現したい」って、書いているときには意識していなかったんですけど、改めて読んでみると見えてくる部分があっておもしろいなと思いました。

――そういうキャラクターやセリフから、読んだ人にどんなことを感じ取ってほしいですか。

書いた僕からすると、どんなことを感じ取ってほしいなんて崇高な考えがあるわけではないです。読みたい人が読みたいように、そして感じたいように感じればいいと思います。相方や身近にいる芸人にも読んでもらったんですけど、その人たちには「自分自身のこと書きすぎじゃん!」って言われました。

――具体的にはどういう部分で「自分自身がにじみ出ている」と思いますか。

言ってしまえば全体を通してにじみ出ているんですけど、具体的に言うと自分の思想がキャラクターのセリフに乗っているところです。偽善者について語るシーンがあるんですが、それも僕が前々から思っていたことがかなり乗っかっているんです。偽善者という言葉を悪口のひとつとして使う人がいますけど、偽善者の何が悪いんだろうって思う。偽りでもいいからいいことしてたら、シンプルに「いいことをした人」ですよ。例えば、僕のことをどんなに気にかけてくれていても、表に行動や言葉として出さなかったら、伝わるわけがないんですよ。そんなことを考えているよりも、自分が困っているときに手助けしてくれる偽善のほうがよっぽど助かるし、僕はそういう人のほうがいいと思っています。

――キャラクターはそれぞれ違うけど、自分の性格が乗っているということなんですね。

登場する主要なキャラクター4人が言うことは、僕の性格や考え方が乗っかっていますね。だから、読み直したときに「うわ、めっちゃ自分が思ってることが書いてある!」って感じました(笑)。そう考えると、僕自身書いているときには気がつかなかったことに読み直して気付いたからこそ、読んだ人に何かを感じてほしいという部分が希薄なのかもしれません。

ワクワクするほうへと転がるストーリーに身を任せる

――最初の構想と変化した部分はどのくらいあるんでしょうか。わりと最初の骨組みから変わっていないのかなと思うくらいしっかりとした展開でしたが。

体感で言うと、当初の展開から半分くらいは変わっていると思います。だけど、想定と変わるというのも僕はまったく悪いことだとは思ってないんです。もちろん、最初から正解にたどり着けるのもいいんでしょうけど、コントを作っているときにも最初の想定と変わることなんて山ほどあります。そして、そんなときにはたいてい「最初よりもおもしろくなる」と思えるからなんですね。書いている途中でおもしろくなる道を見つけちゃったら、そっちに進むしかないでしょうっていうすごく素直な欲求に従っていると思います。だから、話の展開も自分がワクワクする方向へと転がってくれてよかったなと感じています。

――方向修正は、編集の方にも相談して決めていく流れだったのでしょうか。

ちゃんとした相談ということでもなかった気がします。編集の方に「このあとの展開こうしちゃおうかな」って言うと、必ずと言っていいほど「いいですね!」って賛成してくれるんです。本当に自由に書かせてもらえましたし、出来上がった原稿を「すごくおもしろいです」って褒めてくれるのがうれしかったです。でもその一方で、「担当編集だから褒めてくれてるのかもしれない」と疑心暗鬼になったりもして、自分の小説は本当のところおもしろいのか、というのを評価するのに時間がかかりました。

――まわりの方から小説の感想をもらったときに、心に残った言葉はありますか。

僕の母は読書家で、実家には母が買い集めた本が山のほうに置いてあります。特に司馬遼太郎さんや、藤沢周平さん、宮本輝さんの作品が好きみたいで、よく読み終わると「やっぱり小説はいいわね~」と満足そうに笑うんです。そんな母から、突然電話がかかってきて「……あんたね!すごいもんを書いたよ。これは、あんた誇っていいよ。照れることはないから、ちゃんと胸張って誇りなさい。母さん、最後まですごい没入感だったよ」とまくしたてるような感想をもらいました。いつもは電話でやり取りなんてしないので、何か緊急の要件でもあったのかと思いましたけど、その言葉を聞いたときに僕もいいものが書けたんだなという実感が持てた気がします。


取材・文/山岸南美

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