未来を生きる当事者に、“今”活躍できる場を…。ユーグレナ社が「18歳以下のCFO(最高未来責任者)」を設置する理由とは?
東京ウォーカー(全国版)
CEOやCTOをはじめとした、CxO(Chief x Officer)という役職が会社には存在する。「Chief=組織の責任者」と、「x:業務・機能」、そして「Officer=執行役」からなる経営用語で、たとえば、CEOは、Chief Executive Officerの略であり、最高経営責任者という意味となる。
会社にはこのような役職が多数存在するが、微細藻類ユーグレナを活用し、食品や化粧品の販売、バイオ燃料の開発・製造を行っている株式会社ユーグレナ(以下、ユーグレナ社)には、CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)という役職が設けられている。
ユーグレナ社は未来を持続可能な形に変えていくために、未来を生きる当事者である世代が経営に参加していくべきであると考え、2019年に18歳以下限定でCFOのポジションを新設した。このCFOという役職にはどのような役割や期待が寄せられているのだろうか。今回はユーグレナ社 広報宣伝部 部長の北見裕介さんに、CFOについてインタビューを行った。

ユーグレナ社が18歳以下のCFOを採用したきっかけとは?
ユーグレナ社が取り扱うユーグレナとは微細藻類の一種。ワカメや昆布と同じ藻の仲間で、鞭毛を使い動くことができ、光合成によって二酸化炭素を吸って酸素を吐き出し成長するという、動物と植物の両方の性質を持つのが特徴だ。ユーグレナ社がこの藻類を扱うことになったのは、創業者であり代表取締役社長の出雲充さんが、学生時代に経験したあることがきっかけだった。
「社長の出雲がバングラデシュを訪れた際、そこに住む人たちの栄養状態が非常に悪いことに気がつきました。そこで、バングラデシュに簡易に持っていけるような栄養豊富なものを探していたところ、現在のCTOを務める鈴木健吾が、『それだったらユーグレナだよ』とアドバイスしました。当時、ユーグレナの大量培養方法は編み出されていなかったのですが、出雲は『世界の栄養失調問題を解決する可能性』に賭け、培養の方法を研究し続けました。そのさなかに作られた会社がユーグレナ社です」


創業より社会課題の解決を目的に事業を行ってきたユーグレナ社。現在ではフィロソフィーとして「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げて、ユーグレナを食品や化粧品、バイオ燃料、飼料、培養土・肥料、バイオマスプラスチックなど、さまざまな用途に利用している。このようなプロダクトにより、ヘルスケアやバイオ燃料、ソーシャルビジネスなどの事業を展開しているユーグレナ社だが、2019年に18歳以下のCFOのポジションを新設したのにはどのような意図があったのだろうか。
「弊社は人と地球のため、未来のために事業を行っています。ですが、私たちが思う未来と、30年後に40代を迎えている世代が思っている目指したい未来は果たして同じなのか、という疑問がありました。であれば弊社を通して、今の10代とともにどのような未来をつくるのかを実証していくのが、『18歳以下のCFO』です。ユーグレナ社が未来を持続可能な形に変えていくために、未来を生きる当事者である世代が経営に参加していくべきであると考えてポジションを設置しました」

CFOの募集条件は、18歳以下であること。求めるCFO像は年によって異なるが、大きくは以下の3点。ユーグレナ社を通して社会インパクトを起こしていく意思があること、未来志向であること、そしてユーグレナ社やCFOとともに活動するFutureサミットメンバーと協力して業務を進められることだ。主な役割はユーグレナ・グループのサステナビリティに関するアクション、および達成目標の策定に携わるサミット(会議)の運営で、最高未来責任者の名前に応じた活躍が求められる。
「18歳以下のCFO」がもたらした変化とは?
ユーグレナ社が2019年よりCFOの採用を始めて以来、初代CFOに小澤杏子さん、2代目に川﨑レナさん、そして3代目に渡部翠さんが就任。その活躍ぶりは大人も驚くものばかりだ。彼女たちの意見や見解は、環境負荷の軽減や社員のウェルビーイングなど、ユーグレナ社のサステナビリティに関する議論をけん引し、経営判断の指標のひとつとなっている。では、実際に彼女たちはユーグレナ社にどのような影響を及ぼしたのだろうか。
「初代CFOの小澤杏子さんは、『ペットボトル商品全廃』という実績を残してくれました。ペットボトルは使い勝手がいい反面、リサイクルの制度が整っていなかったりします。当時、弊社はペットボトルの商品を展開していたのですが、小澤さんの提言により、ペットボトル商品を全廃することにしました。ちょうどスーパーに商品が並び始めたタイミングだったので、ここで私たちがペットボトル商品をやめたらどうなるか、という社会実験的な側面もあり、ペットボトル商品の全廃に踏み切りました。ほかにも『商品に使用する石油由来プラスチック50%減』という提言も受けて実施しています」

また、2代目の川﨑レナさんは、定款をSDGsの項目に沿った内容に刷新した際の監修、取引先飲食店のSDGs観点プロデュース、新しく入社する仲間のための制度導入などを実現。特に3つ目のものは「ペアレンツ制度」と名付けられていて、より早期に会社に慣れ、自分らしく活躍してもらうために、年齢や役職に関係なく新しい仲間をサポートする2名(ペアレンツ)を設定する制度だ。
「川﨑さんは未成年だったにもかかわらず、私たち大人以上に社会人の世界を理解していましたね。弊社はまだまだスタートアップなため中途入社の方が多いのが特徴です。どこの会社でもそうかもしれませんが、ほとんどの人が新しい職場環境になじむまで時間がかかると思います。弊社では社員のことを『仲間』と呼ぶのですが、新しい人がどう仲間になっていくかという部分に、川﨑さんは深く切り込んでくれました」

そして、3代目の渡部翠さんは現在実績を積み重ねるべく奮闘中だ。渡辺さんは海外在住経験があるため「ユーグレナ社が海外展開を進めるなかで、日本だけでなく展開先の国の未来世代の声も聞く必要がある」というCFOの在り方に対する提言をしている。「国境」という意味でのボーダーを乗り越えることに着目しているそうだ。また、ポストSDGsを見据えたユーグレナが優先すべきサステナビリティ項目の社内浸透などにも力を入れているという。渡辺さんの今後の活躍に期待だ。

2024年の「4代目CFO」に望むことは?
現在、ユーグレナ社では2024年に活躍する「4代目CFO」を選考中だ。2023年10月に応募を締め切り、現在はエントリー課題を通した書類選考の段階だ。今後、書類選考を通過した候補者と1次面接、最終面接を行い、2024年にCFOの発表がされる予定だ。これまで初代、2代、3代のCFOを採用してきたユーグレナ社は、4代目にどのようなことを望んでいるのだろうか。
「初代CFOの実績は環境問題の解決だけでなく、大人vs子どもという構図を突破してきてくれたことにあると思っています。そして2代目は性差や年齢差といったアンコンシャス・バイアスに注目し、3代目で国境や文化背景といったことに対してチャレンジをしてくれています。やはりどのCFOも何かしらの“ボーダー”に挑戦していっているので、4代目はどのような部分に着目するのかが楽しみですし、私たちがCFOに望んでいることですね」


最後に、北見さんにCFO制度の今後の展望について聞いた。
「『環境や社会をよくしたい』という意識を持って行動している中高生って、周囲から『意識高いよね』と言われることがあると思いますが、その一言で済ましてはいけないと思っていて、そのために弊社の『18歳以下のCFO』制度は存在していると考えています。そういう10代が大人になったら行動したいって思っていることを今、行動できるようにしていく。それがこの取り組みの意義だと思います。CFOは弊社のものだけである必要はないので、これからはさまざまな会社で採択してほしいですね!」

「4代目CFOにどのような10代が応募してくれているのか、とても楽しみです」と北見さんは言う。ユーグレナ社がCFOの条件のひとつとして掲げるのは、「未来の当事者」という意識。これからCFOとして活動する10代は、どのような新しいボーダーに着目し、チャレンジしていくのだろうか。2024年の4代目の発表と、その活躍がいまから楽しみだ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・今を生きる子どもたちこそ、未来を動かす当事者
・社会を維持するためには、今と未来の目線を持つことが大事
・持続可能な会社を目指すことで、会社だけでなく社会も良くなる
取材・文=越前与
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