世界中の人を笑顔にしたい!500種類以上もの味を発売してきた「チロルチョコ」の商品企画の秘密とは?
東京ウォーカー(全国版)
コンビニエンスストアやスーパーのお菓子売り場でよく見かける「チロルチョコ」。コーヒーヌガーやミルクといった定番商品をはじめ、季節限定商品、人気商品のきなこもち、わさびやうなぎといった変わり種、他ブランドとのコラボ商品などが発売されている。見るたびに新しい発見があるのが、このチョコレートの最大の魅力だ。
チロルチョコの企画・販売を手掛けるチロルチョコ株式会社は、これまでに累計500種類以上もの味を発売してきた。この会社が新商品の企画において大切にしていることは、「第一に、社員が楽しいと思えるかどうか」だという。
今回はチロルチョコ株式会社 開発部マーケティング室の川崎佑真さんに、チロルチョコの誕生秘話や企画・開発の裏側、そしてブランドが目指す未来についてインタビューを行った。

子どもたちにおいしいものを届けるため…!チロルチョコ誕生秘話
チロルチョコを製造・販売しているチロルチョコ株式会社は2004年に設立され、今年で20周年を迎える。そんなチロルチョコ株式会社の前身である松尾製菓株式会社(以下、松尾製菓)は、いまから約120年前の1903年に福岡県田川郡伊田村(現・田川市)で創業。当初は駄菓子屋のような形でキャラメルのバラ売りや砂糖菓子の販売などを行っていた。
「創業より60年ほど経過した1962年に、ひと口サイズのものを3つ山連ねた形のチョコレート『チロルチョコ』を発売いたしました。これは2代目社長の松尾喜宣が発案したもので、10円で子どもたちにチョコレートを届けたいという想いを形にした商品でした。初代チロルチョコの中にはヌガーが入っているのですが、これはチョコレートだけを使用すると原価が合わなかったため、ヌガーを入れて組み合わせることで、子どもが買える10円という価格にするための工夫でした」


その後、1970年代にオイルショックが発生して物価が高騰。これに影響されてチロルチョコの原料価格も上がり、1個10円を維持できなくなってしまった。やむを得ず値段を20円、30円と上げるも顧客離れが起こる結果に。そこで2代目社長の松尾氏が「発売当初の10円に立ち戻るべきでは?」と考え、3つ山を1つ山に分割したものを製造し、10円で販売を開始。これが現在も販売されている一粒タイプの原型となった。
「なお、スーパーやコンビニエンスストアで売るためには包装紙へのバーコードの記載が必要だったため、小売店での販売開始と同時に発売当初のサイズより少し大きめにリサイズしました。この際に20円に値上げしたのですが、お客様の中には『10円あったらチロルチョコ』という昔のCMのフレーズを覚えている方もいて、10円でないことにびっくりされることもあります」


松尾製菓は2004年に開発部と販売部を分社化し、チロルチョコ株式会社を設立。その際に東京・秋葉原に本社を移動させた。東京に進出した理由は、東京のトレンドをいち早くつかんで商品開発に活用するためと、東京を拠点として全国にチロルチョコを広げるべく、営業活動に力を入れていくためだったという。
過去に発売した味は500以上!商品開発で大事にしていることとは?
誕生より60年以上経過した現在でも、新たな味を発売し続けるチロルチョコ。このブランドの魅力は、コーヒーヌガーやミルクといった定番商品をいつでも味わえるだけでなく、見かけるたびに新商品が出ていることだ。そんなチロルチョコブランドがこれまで展開した商品は、500種類以上。その中でも、一番のヒット商品となったのが「チロルチョコ〈きなこもち〉」だった。
「きなこもちは、洋菓子であるチョコレートで和菓子の味を再現した味ということで非常に特殊性がありました。この商品の中にはお餅の食感に似せたグミが入っているので、本当にきなこもちを食べているような感覚になれると人気になりました。また、これは2003年発売の商品なのですが、当時はきなこのチョコレートは今ほど一般的でなかったため、独自性を出すことができたのもヒットの理由のひとつだったと思います」


チロルチョコの大きな強みは、お菓子やフルーツ、料理、惣菜など、どのような味でもチョコレートで再現ができる点だ。過去にはメロンパンやカレーパンやピザ、わさび、うなぎといった、ほかのチョコレートメーカーが挑戦できない味も開発している。このようにさまざまな味を作ることができるため、バリエーションが豊富なのも特徴のひとつ。開発ではチョコレート一粒でコンセプトの味の雰囲気を伝えるため、味だけでなく色や食感まで、徹底的にこだわっているそうだ。
「弊社では新味の開発の際、一般的なマーケティングよりもまず自分たちが楽しいかどうかを重視し、そしてお客様に楽しんでもらえるかどうかを基準として開発を行っています。基本的に開発メンバー自身が食べたい味や、作ったらおもしろそうな味のアイデアを出し合っていますね。味の再現において自分たちが満足できないと発売しないので、そこは一切妥協せずにこだわっていますし、苦労している点でもあります」


また、パッケージにもこだわりが。チロルチョコの味を表現するだけでなく、遊び心を大切にしたパッケージデザインを毎回考えているという。小さい包装紙の面積に、消費者が目で見て楽しいと思えることを大事にしながら、なおかつ味も再現していておいしそうに見せるための努力を詰め込んでいる。パッケージコレクターも多いそうで、そのような消費者に向けて「100個に1つだけ、描かれたキャラクターがピースをしている」といった、レアなデザインのものも作っているそうだ。

世界中に“笑顔の連鎖”を広げたい!チロルチョコの目指す未来
一粒ずつ、手軽に食べられるチョコレートとしてロングセラーとなったチロルチョコ。消費者の中にはコアなファンも多く、新しい商品を出すたびに「ちゃんと再現されていておいしい!」「今回のパッケージがかわいい!」といった声が上がる。また、一風変わった味が発売されたときには「すごい味が出た!」とSNSや口コミで話題になることも。チロルチョコ株式会社はこのような消費者とのコミュニケーションを大事にしながら、ブランドの展開を行っている。
「チロルチョコはバレンタインデーの義理チョコやちょっとしたプレゼントなど、ほかの人にあげやすいという大きな利点があります。そのため、チロルチョコはコミュニケーションのツールとしての側面があると考えています。ですので、今後はそのような商品の価値を大切にして、もっと社会に広げていきたいと思っています。また、弊社ではファンのための『チロルフェス』というイベントを行っています。ファンの方々との交流の機会を増やしてファンコミュニティを広げ、チロルチョコの楽しさを伝えていきたいです」


最後に、川崎さんに今後のチロルチョコの展望についてお話を聞いた。
「弊社には“『あなた』を笑顔にする”というミッションがあります。これは現在の4代目社長が制定したもので、『あなた』は社員のことを指しています。社員がまず笑顔で楽しんでチロルチョコを作り、そうしてできた商品こそがお客様を笑顔にし、その笑顔がまた社員の笑顔にもつながると考えています。今後もチロルチョコを通してこの“笑顔の連鎖”を実現していきたいですね」


そして、もうひとつの展望がアジア全体にチロルチョコを広げていくことだ。チロルチョコ株式会社は「ONE TIROL ONE SMILE ONE ASIA」というビジョンを掲げ、アジアでふらっと入ったお店にチロルチョコが置いてある未来を目指している。もちろん味も現地のものを再現するなど、地域に根付いた商品展開を行っていくという。現在は中国で販売を開始しており、2023年にはベトナムに新工場を設立した。今後はより一層、海外進出を強めていく予定だ。

誕生より子どもたちの笑顔を作り続け、日本をはじめ、世界の人々を笑顔にすることを目標に掲げたチロルチョコ。近い将来、アジア各国のさまざまな料理やお菓子がチョコレートになっていくだろう。これから登場する新商品を含め、今後のチロルチョコ株式会社の展開に期待が膨らむばかりだ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・味も値段も消費者のほうを向くことが大切
・自分たちが満足のいく商品は、消費者も満足させられる
・豊かなバリエーションは消費者を飽きさせない
取材・文=越前与
この記事の画像一覧(全15枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介