ペットと一緒に通勤が可能!人間と動物の福祉を追求する「アニスピHD」が導入した革新的な制度とは
東京ウォーカー(全国版)
昨今の働き方改革の流れのなかで、従業員がペットを連れて通勤することができる制度があることをご存知だろうか。
日本での導入率は低く、一般的な認知度も高いとは言えない。だが、ペット共生型障がい者グループホーム事業などを運営する株式会社アニスピホールディングスは、「ペット通勤制度」をいち早く採用。
ペットを飼っている従業員からの評判もよく、人材が不足している福祉業界において、この制度がいい広報効果をもたらしているという。
今回は、株式会社アニスピホールディングス(以下、アニスピHD)動物部 部長の西本未里さんに、ペット通勤制度の導入背景や導入時の課題や苦労・工夫した点、さらに今後の展望について話を聞いた。

ペットシッター業の派生から生まれた「ペット通勤制度」
アニスピHDの創業は2016年8月のこと。同社が展開するペット共生型障がい者グループホーム「わおん」「にゃおん」は、従来の障がい者グループホームとは異なり、保護犬や保護猫を積極的に受け入れている。そうした方針に基づき、創業当初からペット通勤制度の導入を検討していたが、なかなか本格始動ができなかった。
「弊社の最初のビジネスモデルは『ペットシッター業』といって、お客さまのご自宅に伺い、飼い主さまの代わりにお世話をさせていただくことでした。こうした事業形態もあって、社員たちもペットを好きな人が多く、かねてより制度を導入してほしいという声はあったんです。ただ、創業当初は普通のビルだったので、規約上ペットを連れてこれませんでした」

その後、2018年ごろに本社の社屋を現在の東京・千代田区九段南のオフィスに移転。西本さんは「ワンちゃんや猫ちゃんと一緒に通勤できる物件を条件に、オフィスを探しました」と当時を語る。都内で動物飼いが問題ないオフィスはあまりなく、決まるまでは苦労したそうだが、移転と同時に制度の本格的な導入にいたった。
「これまで部署内でチームワークが向上していても、他部署との連携は取りづらいという課題を弊社は抱えていました。ただペットに関しては、誰かが連れてくると自然と人が集まり、結果として社員同士の交流が深まり、ランチへ一緒に行くなどの交流につながっているんです」

ペット通勤制度導入により広報効果も!
アニスピHDは、ウクライナ戦争発生時に避難民の受け入れを行い、日本へ移住した人々への住居と就労の支援をしてきた。その一環として、ウクライナ出身の社員が本社で勤務していた時期もあった。
入社時は翻訳ツールを活用しても意思疎通は難しかったが、ペットがコミュニケーションの橋渡しになったそう。「組織内のコミュニケーション促進において、今や必要不可欠な制度ですね」と西本さん。また、導入後にはこんな変化も。
「ペット通勤制度を導入していることが入社の決め手となったという社員は増えています。また、ペットを長時間留守番させることへの懸念を持つ方や、高齢のペットを心配する方もいましたが、制度の導入により『ペットと一緒に出勤できるなんて夢みたい!』といった声が多く寄せられていますね」
一方、本社だけでなく、ペット共生型障がい者グループホーム「わおん」「にゃおん」といった現場の求人状況にも影響を与えているのだそう。
「2018年から障害福祉事業を開始し、この事業が弊社の急成長を牽引し、現在もメイン事業となっています。また、一般的に福祉業界では現場スタッフの採用が困難という課題を抱えていますが、弊社が展開する福祉の現場では、求人広告に費用をかけずとも応募が来ているとのことで、これは大きなメリットだなと感じています」

オフィス内にペットの臭いが充満!自由ゆえの苦労も
ペット通勤制度の導入によって、部署や言語の壁を越えたコミュニケーションが促進されるとともに、福祉の現場での広告効果を含むなど、多角的な効果が見られた。しかし、画期的な制度ゆえに課題も多くあった。
「現在のオフィスは、もともと普通の業務用途で使用していたため、犬や猫用に特化した設計ではありませんでした。そのため、制度導入当初は特にルールを設定しておらず自由だったのですが、次第にオフィス内をペットが汚してしまったり、臭いが充満したりして、その対応が大変だったかなと記憶しています」

また、飼い主が会議中などでペットを自由にしておいたところ、吠えてしまい、ほかのスタッフの業務に影響を与えることもあった。「ペット通勤の数が増えるにつれて、ある程度問題は起きるだろうなとは予想していましたが、これらのできごとをきっかけに適切なルールが必要であると痛感しました」と西本さん。
「具体的なルールとして、発情期による思わぬ妊娠や事故のリスクを考慮し、その時期はペットの出勤を控えていただくようにしています。また、ワクチン接種を推奨していて、高齢や病気など特別な事情がある場合は、事前に相談を受ける体制を整えています」
加えて、代表取締役会長兼社長の藤田さんが飼っているラブラドールが、犬用ロープを誤食して腸閉塞を起こし、手術が必要になるという事故もあったのだそう。そのため、以降はゴミ箱を高い位置に設置したり、安全対策として柵を設けるなど、オフィスの環境をペットにとっても安全なものにするため、日々ブラッシュアップしているようだ。

今後の目標「ペットに対する福利厚生を充実させていく」
2016年8月の創業時、アニスピHDの社員数は5名以下だった。しかし現在、本社での勤務者は約50名、全スタッフの数は合計で400名に増加している。その中にはペット好きの人もいれば、当然そうでない人もいる状況下で、ペット通勤制度を今後どのように展開していくのだろうか。
「福利厚生の充実を目指しています。たとえば提携企業と協力し、添加物のないおやつを低価格で提供したり、家賃手当の支援を検討しています。また、相談窓口の設置も考えていて、先ほどお話したような『ペットはかわいいけど、臭いや作業の妨げとなる鳴き声など控えてほしい』といった指摘もあります。こうした問題に対するマナーや配慮も重要だと感じていますね」

さらに社員だけでなく、顧客の中にも動物を苦手とする人たちにも配慮したオフィス作りを進めていくそうだ。最後に西本さんは、「今後は衛生管理や環境整備に一層の努力をし、ルールの見直しを図っていきます。また、オフィス設備の改善も必要なため、慎重に計画を立て、実現に向けて進めていきます!」と意気込んだ。

ペットを同伴して通勤する制度は、現在の日本ではまだ一般的ではないのが実情。アニスピHDによるペット通勤制度のさらなる展開と成長が、どのような変化を生み出すのか、いちワーカーとしてとても楽しみだ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・ペット通勤制度の導入で社会問題の解決に貢献する
・ペットを介して、社内のコミュニケーションを促進する
・画期的な制度で会社の広告としても機能させる
取材・文=西脇章太(にげば企画)
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