赤福が手掛ける毎月1日だけの限定商品、季節の移ろいと伊勢の風土を月替わりで味わえる「朔日餅」とは?
東京ウォーカー(全国版)
日本の伝統文化と和菓子の魅力が詰まった一品、朔日餅(ついたちもち)。伊勢の名物「赤福餅」を手掛ける株式会社赤福(以下、赤福)が毎月1日限定で販売やお召し上がりを提供している、特別なお餅だ。
300年以上もの伝統がある赤福だが、朔日餅は1978年発売という、赤福の歴史に照らし合わせると比較的新しい商品。このお餅の製造・販売が始まった背景には、伊勢神宮を訪れる参拝者へのおもてなしの心と、赤福が守り続ける「不易流行」の精神があった。
今回は、赤福 広報担当の石上さんに、朔日餅誕生の経緯や季節ならではのこだわり、そして47年にわたる伝統と革新の取り組みについて話を聞いた。

毎月1日の限定販売!「朔日餅」の誕生秘話
毎月1日のみ提供される朔日餅は、季節の移ろいや伊勢の風土を表現した月替わりの味わいが特徴で、地元の人をはじめ、全国から訪れるたくさんの参拝者に愛されている。
伊勢地方には毎月1日に伊勢神宮を参拝し、新たな月の始まりを清らかな気持ちで迎える「朔日参り」という古くからの習慣がある。この伝統にちなんで、赤福は参拝者をもてなすために1978年2月から特別なお餅を提供し始めた。これが朔日餅の誕生の由来だ。
「赤福本店では、お正月を除く毎月1日に朔日餅を用意し、朔日参りのお客様をお迎えしています。月替わりに伊勢神宮に来られる方々に向けて、季節ごとの素材や行事を題材にしたお餅を味わってもらいたいという想いから、朔日餅の販売が始まりました」


赤福餅は餡とお餅を組み合わせたシンプルな作り。そのため、ほかのお餅を作ることによる総合的な和菓子の技術向上や新商品開発の狙いもあり、月々に合わせたお餅が考案され、発売されるに至ったそうだ。
なお、1月1日には朔日餅の販売やお召し上がりは行っていない。その理由は、この日は全国各地からたくさんの人が初詣に訪れるため、ぜひ看板商品の赤福餅を味わってほしいからだという。ぜひ、元日には伊勢神宮にお参りし、1月の朔日餅ともいうべき赤福餅を味わってみよう。

月に一度の贅沢を…!季節を彩る朔日餅の魅力
2月から12月までの11種類がある朔日餅。それぞれの月の初日には、このお餅を求めて開店の4時45分よりも前からたくさんの人が並ぶのだとか。毎月のお伊勢参りとお餅の購入を楽しみにしている人、月に1回しか手に入らないお餅を味わいたい人、取引先への挨拶やお土産として活用したい人など、求める理由は人それぞれだという。
そんな朔日餅は月ごとに種類を変えるため、同じ種類のお餅は1年に一度しか手に入らない。そのために買いそびれてしまうと来年まで待たなければならなくなる。それでも赤福が朔日餅を通年販売しないのは「1日という日が、無事に過ごせたの1カ月に感謝し、自然のいとなみに敬意を払う特別な日であることを忘れないため」という伊勢人(いせびと)の想いがあるからだ。


また、1年間に販売される朔日餅の中でも特に人気が高いのが、8月1日の八朔粟(あわ)餅と、10月1日の栗餅だと石上さんは紹介する。
「八朔粟(あわ)餅は粒を残して作った粟(あわ)餅に黒糖の餡をのせているため、昔ながらの味を楽しめると地元の方たちを中心に人気になっています。」また「栗餅はもち米の食感を残した生地で風味豊かな栗餡を包み、栗の甘露煮をのせているので、秋の味覚を味わえると人気です」と石上さんは話す。
そして、持ち帰り用の朔日餅は小箱、大箱、化粧箱の3種類から選ぶことができる。特に、化粧箱は季節を感じられるデザインになっているのも特徴だ。例えば、2月の立春大吉餅は焙烙(ほうろく)で包まれているため、ずしっとした重みが感じられる。また3月のよもぎ餅はひな祭りで飾られる菱餅の形になっている。
どの月の朔日餅もそれぞれの季節に合わせた化粧箱が用意されていて、購入した人たちの視覚も楽しませてくれるのも大きな魅力だ。


目指すは伝統と進化の両立!赤福が取り組む「不易流行」とは
月に一度しか味わうことができない朔日餅。2020年に発生したコロナ禍では、たくさんの予約をいただくも緊急事態宣言下、苦渋の決断で販売を中止したこともあった。その後、本店の早朝販売では、整理券に時間指定システムを導入するなど利用者が列に並ぶ時間を短縮、利便性を向上するための改善をした。また伊勢の予約会場での販売ではこれまでの電話予約に加え、オンライン予約も導入した。
「コロナ禍ではソーシャルディスタンスの確保やキャッシュレス決済など、その時に浮き彫りになった、課題を解決するため様々な取り組みを行いました。そういったことは2025年現在、お客様が少しでも快適にご購入いただけることにつながる、いい経験になりました」
朔日餅は大人気商品のため、当日購入やお召し上がりには長蛇の列ができることも。早急に売り切れてしまうことも多いので、公式サイトから時間指定券の取得方法や予約方法を確認しておくとベターだ。


赤福が大事にしているのは、変わらない価値を守りつつ新しい挑戦を続けるという「不易流行」の精神が背景にある。300年以上の歴史を持つ赤福餅の価値を守り続けるだけではなく、時代や時勢に合わせて販売方法や製菓の製造技術を進化させていくことを大事にしている。
「時代が急速に変化する昨今、赤福餅の求心力だけに甘んじるのではなく、職人がこれまでない新しい商品を考案したり、インバウンドが増加した現在の日本で、本物志向の外国人観光客が納得できる商品の提供を目指したりと、さまざまな努力を行っています。これからも伝統を守り続けながら、新しいことにも積極的に挑戦していきます!」

朔日餅は赤福の歴史からするとまだまだ新参者だが、赤福の製菓技術が詰まった逸品であり、月に一度しか手に入らない特別感がある商品として、朔日参りの参拝者の心と胃袋をつかんでいる。まさに赤福の不易流行を表現する商品として、朔日餅はこれからも私たちの五感を楽しませてくれるだろう。
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