コーヒーで旅する日本/関西編|深夜のコーヒーブレイクもおまかせ。“逆張りの発想”で異彩を放つ都会のエアポケット。「whitebird coffee stand」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

木材やアイアン、タイルなどの素材感を活かしたクラフト感あふれる店内


関西編の第93回は、大阪市北区の「whitebird coffee stand」。店を構えるのは、大規模な再開発が続くJR大阪駅周辺から、南へ歩いて10分ほど。市内随一の繁華街のただ中、大通りの角地にありながら、意外に人目につかない立地は、まさに都会のエアポケットの趣がある。「人通りが少なくて、出店するには微妙な立地でしたが、逆に繁華街の意外な穴場としておもしろいと考えた」という店主の福崎さん。自らが行きたいと思えるカフェのイメージを形にしたここは、いまやランチタイムから深夜まで、シーンに合わせてくつろげる憩いの場として定着。飲食店激戦区でもある界隈にあって、「逆張りの発想」で存在感を発揮するこの店が厚い支持を得る理由とは。

店主の福崎さん


Profile|福崎大介(ふくざき・だいすけ)
1969年(昭和44年)、大阪府東大阪市生まれ。2011年から梅田でボルダリングジムを経営していたときに、事業展開の一環としてカフェの開業を構想。大阪市福島区のBAHNHOFでコーヒーの知識や抽出技術を学び、2014年、梅田に「whitebird coffee stand」をオープン。それまで界隈になかった、クラフト感を打ち出した空間やハンドドリップコーヒーを店の顔として打ち出し、深夜までくつろげる隠れ家的なカフェとして人気を集める。

繁華街のど真ん中にひっそり開いた憩いの空間

黒いタイルがシックな店構え

主要な鉄道路線が集結するターミナルであり、キタと呼ばれる大阪随一の繁華街・梅田。巨大な駅や商業施設の中にあって、路地が入り組む曾根崎界隈は、庶民的な盛り場として人気のエリアだ。近松門左衛門の浄瑠璃の名作・曽根崎心中の舞台となった露天神社、通称・お初天神の門前に広がる一帯には、小さな飲食店がひしめきにぎわいを見せる。「whitebird coffee stand」があるのは、曾根崎エリアの南の端。幹線道路が交わる角地、一見、好立地に見えるが、「実は、意外に人通りが少なくて、店をするには微妙な立地でした。でも、逆に繁華街の中の穴場と考えて、ここに決めたんです」。そう話す店主の福崎さんは、元々は梅田でボルダリングジムを経営していたが、まったく異業種のカフェを出店した。

「先行きの見えないご時世、事業を広げるにしても同じ業態ではリスクが高いので、全然違う分野で店を作りたかった。そのころ、ちょうどアメリカのサードウェーブの流行を見聞きするようになって、いつか日本にも来るだろうと注目していたこともあり、新しい試みとしてコーヒー店がいいのではと思った。今の物件に出合ったのも、2015年にブルーボトルコーヒーが日本に初上陸した前後で、タイミングがよかったですね」と振り返る。

ブレンドコーヒー(550円)は、中深煎りのスタンダード、深煎りのストロングの2種


加えて、梅田界隈で自分が行きたいと思えるカフェがなかったというのも、開店の大きな動機の一つ。「梅田界隈は、どうしても大手資本チェーン系が多く、個人店のカフェはほぼなかった。だからこそ、自分の思い描く世界観を作り込んだ空間を作ろうと思った」と福崎さん。店内は、板張りの壁やアンティークの家具、照明などクラフト感のあるスタイルで統一。福崎さん自身が建築や家具が好きとあって、なかには自作した家具もある。木とアイアンをベースにしたインダストリアル系のデザインが多いですが、無骨さでなく、繊細なデザインを意識したという。

逆張りの発想で“あったらいいな”を形にした店作り

「店名は、自分が酉年生まれということにちなんで考えました」と福崎さん

現在はジムの経営を譲り、カフェ一本に専念している福崎さん。とはいえ、「実は自分はコーヒーをそれほど飲めない、カフェオレとか。でも妻が好きで、家でも淹れたり、飲んだりしていた。そのとき、気に入っていたBAHNHOFの豆を使っていたのが縁で、店でも使わせてもらっています。家でいつも飲んでいたから、味に関しては問題ないという信頼があった」。開業にあたっては、BAHNHOFの教室に参加したりして、コーヒーに関する知識、技術のいろいろなアドバイスを受けた。

また、周辺にはシアトル系カフェが多く、エスプレッソ主体のドリンクがほとんどだったため、ここではオリジナルの中深煎り、深煎りの2種のブレンドを中心に、ハンドドリップのコーヒーを打ち出している。「近年は浅煎りが主流ですが、お客さんの嗜好に合わせて、日本人がイメージする、酸味を抑えた誰もが親しみやすい味わいを考えてもらっています」と福崎さん。加えて、女性客が多いこともあり、アレンジコーヒーも多彩に提案。チョコシロップを加えた深煎りブレンドに、濃厚なクリームをたっぷり乗せたティラミスコーヒー、アーモンドミルクとデカフェのコーヒーを合わせたアーモンドオレをはじめ、夏限定のミルクブリューやグレープフルーツグラニテ添えたコールドブリューなど、季節ごとのメニューもそろう。

ティラミスコーヒー(750円)。チョコシロップのほのかな甘味とコーヒーのほろ苦い余韻があとを引く


また、夜にお酒を飲むお客にはコーヒーカクテルを用意。“大人の”と銘打って、スピリッツを効かせたカフェオレやカフェモカ、アイリッシュコーヒーやカフェグロックといった定番カクテルも幅広く、締めの一杯に好評だ。「whitebird coffee stand」の周辺は、大阪を代表する繁華街・北新地にも近く、夜の人出が多いエリア。実は、この店の照明は、バーの雰囲気を意識して夜に合わせたものにしているそうだ。「お酒を飲んだあとに、スイーツやコーヒーで締める方がよく来られます。深夜も開いているカフェは界隈には今までなかったので、重宝されていると思います。自分はお酒が飲めないけど、バーの雰囲気は好きで、無理やりお酒を飲んで過ごすこともありました(笑)。だから常々、夜も使えるカフェがあったらいいのに、と思っていたんです」。そもそもが自分が行きたい店を作るというのが発端にあるが、結果的に逆張りの発想で界隈になかったスタイルを打ち出し、ユニークな存在感を発揮。それほどに、夜カフェのニーズが高かったことを示している。

ずっしりと重量感のあるクラシックプリン(650円)は、コーヒー風味の生クリームを添えて(要1ドリンク注文)


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