コーヒーで旅する日本/九州編|軽い気持ちで飛び込んだコーヒーの道が教えてくれたもの。「樹豆珈琲」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州・山口はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州・山口で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

近所の保育園児が書いてくれた手紙が飾られ、どこかアットホーム

九州編の第112回は大分県宇佐市にある「樹豆珈琲」。四日市商店街という宇佐を代表する商店街の一角に店を構え、ガラス戸の奥に店内の様子が見てとれ、ウェルカムな雰囲気。大分県北では自家焙煎を行っているコーヒーショップは多くないため、宇佐市内はもちろん近隣の市町からも日常的にコーヒー豆を買いに常連さんが訪れるという。なにより店の一角に貼られた近所の保育園児たちからのお礼の手紙を目にすると「樹豆珈琲」が地域に根づいたロースタリーであることがわかる。店主兼ロースターの隈井さんが目指すコーヒーショップとしてのあり方を聞いてみたい。

店主兼ロースターの隈井大介さん

Profile|隈井大介(くまい・だいすけ)さん
大分県宇佐市生まれ。土木関係の仕事に長年従事。最初はフレーバーコーヒーから興味を持ち、自家焙煎店でコーヒーの多様性に触れ、おもしろさに気づく。家庭用の小さな焙煎機を買って、自身で飲む用にコーヒーを焙煎し始めたのを機に、コーヒーショップ開業を目指す。2016年5月、宇佐市の住宅街で「樹豆珈琲」を開業。2020年に市内の四日市商店街に移転。今にいたる。

純粋なおもしろさからコーヒーの道へ

コーヒーのイートインは1杯550円〜

「樹豆珈琲」がオープンしたのは2016年5月。自宅の一角でひっそりと豆売りからスタートした。
「正直、最初はコーヒーをなめてましたね。普通にただコーヒーが好きだったという自分が、喫茶店でコーヒーと一口に言ってもいろいろな産地や種類があることを知って、興味を抱き、少量の豆が焼ける簡易的な焙煎機で焼いたところ、意外とおいしい。これなら売れるんじゃないか、という安直な考えから始めたんです」と当時を思い出し、苦笑いの隈井さん。

産地や生産処理によって味わいが異なることにおもしろさを感じた

その後、ラッキーコーヒーマシン4キロの直火式焙煎機を手に入れるチャンスがあり、思い切って購入したところからが大変だったと振り返る。
「それまでは誰がやっても焙煎できる小型のマシンを使っていたので、普通に飲める味わいのコーヒーが焼けていたんですが、プロ用、しかも4キロと大容量で、直火式の焙煎機だと全くイメージ通りの焙煎ができない。当然ですが相当悩みましたし、落ち込みました」

開業早々、焙煎という壁にぶち当たり、悩んだという

一人ではどうしようもできないことを痛感した隈井さんは、福岡で同じタイプの焙煎機を使用しているロースターの力を借りて、基本だけはなんとか習得。
「見ず知らずで、しかもいきなり電話をして店にやってきた私に焙煎の基礎を教えてくださったのが、福岡市東区にある『SWEET TIME PLUS』の内野さん。私にとっては感謝してもしきれない恩人です。内野さんに教えていただいたやり方で焙煎をやってみると、大失敗はなくなって、それからトライ・アンド・エラーを繰り返しながらなんとか商品として販売できるレベルのコーヒーが焼けるようになってきた。それでも私の場合、ある程度納得の焙煎ができるようになったのは3年ぐらいかかりましたね。もちろんそれでも100点満点ということはありません」と話す隈井さん。

フラワードリッパー。より理想とする味わいを抽出するために補助器具も活用している

もともと土木関係の仕事をしており、前職に戻ることもできたが、やると決めたからにはしがみついてでもやる気概にあふれた人。思い切った転職、独立開業から約4年後に、現在の場所に移転し、より間口を広げた。

挫折を味わいながら、それでも

現在の店は豆売りとドリンクのテイクアウトがメイン

「うまく焼けるようになると楽しくなって、今度は少し調子にのったんですね。直火式では表現しづらいスペシャルティコーヒーのフレーバーや個性をもっと引き出したいと考え、2021年に焙煎機をギーセンの6キロに刷新したんです」

【写真】今ではギーセンの特徴を理解し、理想に近い焙煎ができるようになった

ギーセンは半熱風式で、ドラムの回転数を調整でき、排気量を変えることで内圧もコントロールできる焙煎機。直火式でどちらかというと原始的な構造のラッキーコーヒーマシンの焙煎機とは全くの別物である。隈井さんはそこで再び挫折を味わう。
「なんとなく焙煎のメカニズムみたいなものが自分の中で確立されていたつもりだったのですが、それが全く通用しない。今までの焙煎で積み上げてきたプライドはへし折られ、人生で一番落ち込んだといっても過言ではありません。3週間ほど毎日焙煎して、その間は店舗の営業も休みました。なにより売り上げが立たず、家族を不安にさせたことが一番苦しく、つらかったです」

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