コーヒーで旅する日本/九州編|軽い気持ちで飛び込んだコーヒーの道が教えてくれたもの。「樹豆珈琲」
東京ウォーカー(全国版)

100%納得はできずとも、店を休み続けることはできないと、自身を奮い立たせ、なんとか店も再開。ギーセンを導入後の半年ほどは綱渡りをしていような日々で、心穏やかではなかったと隈井さんは振り返る。
一方でコーヒーの世界に入り、9年の間に何度も味わった苦労と挫折は、「樹豆珈琲」のコーヒーの味わいの揺るぎない土台を作り上げたと感じる。教科書はなく、絶対的な正解がない中で、「これはいい」「これは悪い」という指標をしっかりと作り上げられたのは大きい。
自分6、お客さま4の味づくり

そんな紆余曲折もあった9年を経て「樹豆珈琲」は、今どのようなコーヒーを発信していきたいと考えているのか。豆のラインナップを見てみると、宇佐ブレンド、カフェブレンド、樹豆ブレンドと常時用意するハウスブレンドを筆頭に、エチオピア ナチュラル、ペルー フリーウォッシュド、ブラジル ナチュラル、グアテマラ ウォッシュド、ケニア ウォッシュド、コロンビア ウォッシュドと比較的トラディショナルな産地と生産処理をラインナップ。焙煎度合いも極端に浅い、深いはなく、中煎り〜中深煎りがメインだ。その理由を隈井さんはこう話す。

「まず考えているのが、最低でも100人中51人にはおいしい、価格と見合っていると感じてもらう必要があるということ。その51人をさらに増やしていこうと考えると、お客さまに寄り添うことが最適解だと思うんです。たとえば私のエゴで、めちゃくちゃ特徴があるユニークなコーヒーをおすすめしたとして、それはきっと51人にはフィットしない。この地域で愛される味わいがあるなら、そこにこちらが寄せていかなければいけないと考えています。なんとなく全体を10としたら、6が自分らしさ、4が地域性やお客さま目線という感覚。地域の方々においしいと感じていただき、また買って飲みたいと思ってもらえるコーヒーを作り続けるのが私にできることです」

ひとりよがりではなく、より多くの人にフィットする商品を作る。当たり前かもしれないが、それはどんな店でも大切な考え方。隈井さんはコーヒーショップを開業し、店を営んでいくにあたりさまざまな苦労をした分、できる限り多くのファンに親しまれる店にしたいと考えている。その姿勢を一貫し、味わいでも表現している「樹豆珈琲」はきっとこれからも大分県北で、地域のコーヒーショップとして愛されていくことだろう。

隈井さんレコメンドのコーヒーショップは「オセロスペシャルティコーヒーロースター」
「大分県別府市にある『オセロスペシャルティコーヒーロースター』さん。店主の高部さんは私よりロースター歴が長く、焙煎についていろいろ教えてもらうことも。最近、温泉水を使って焙煎したオリジナリティのあるドリップバッグをリリースしたほか、大きな焙煎機も新たに導入。常にチャレンジする姿勢は見習わないと、と心が引き締まります」(隈井さん)
【隈井珈琲のコーヒーデータ】
●焙煎機/GIESEN W6A
●抽出/ハンドドリップ(CAFEC フラワードリッパー)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ)
●焙煎度合い/中浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム850円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)
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