“余白と、暮らす。”を体感できる“北欧の本物”へ。望月社長が描く、これからのメッツァビレッジ
東京ウォーカー(全国版)
森と湖に囲まれた埼玉県飯能市の「メッツァ」。その中核をなすのが、北欧のライフスタイルを体験できる「メッツァビレッジ」と、ムーミンの物語の世界観を存分に楽しめるテーマパーク「ムーミンバレーパーク」だ。両施設は隣接しており、全体として“メッツァ”という空間を構成しているが、それぞれが異なる役割とコンセプトを持っている。

「メッツァビレッジ」は、北欧の暮らしをテーマにした無料の空間。ショップやレストラン、ワークショップなどを通じて、自然と調和するゆったりとした時間を提供している。一方、「ムーミンバレーパーク」は、原作者トーベ・ヤンソンの精神を受け継いだ演出や施設によって、ムーミンの物語の世界に没入できる構成になっている。
2つの施設のうち、メッツァビレッジの運営を行うのが株式会社メッツァ。2023年に西武・プリンスホテルズワールドワイドから招聘され、ホテルやレジャー施設で豊富な経験を持つ望月潔さんが両施設の運営に携わってから約2年が経ち、昨年8月からは株式会社メッツァの社長も務める。この場所とどう向き合ってきたのか、これまでの歩みを聞いた。
余白が生む体験価値。就任からの2年を振り返る
ーーメッツァに着任されてから約2年、どのような時間だったと振り返りますか?
【望月潔】着任したのはちょうどコロナ明けのころで、テーマパーク業界が再スタートを切るタイミングでした。「この場所で何ができるのか」「どうやって前に進めるのか」を考える日々でしたね。マーケティング面などで若干の手直しを加えながら、小幡(現・ムーミン物語社長)もまだ取締役として在籍していて、当時のムーミン物語の社長と私と3人で中心となって動いていました。

ーー前職までの経験はメッツァでの仕事において、どのように活かされていると考えていますか?
【望月潔】プリンスホテルで、ラグジュアリーホテルからスタンダードホテルまで幅広くGMを務めてきました。また、品川プリンスホテルでは、「マクセル アクアパーク品川」や「T・ジョイ PRINCE 品川」、「Club eX」、「品川プリンスホテル ボウリングセンター」などの複合型エンタメ施設の立ち上げを担当した経験もあります。さらに、「横浜・八景島シーパラダイス」を運営するグループ会社で水族館事業にも関わってきました。そうした幅広いレジャーの現場で得た経験は、今のメッツァでも確実に役立っています。テーマパークですから、やはり「Management by walking around(現場を歩くマネジメント)」って大切なんですよね。歩き回ることから仕事が始まる。これは昔からずっと変わらず続けてきたスタイルです。現場の空気を肌で感じることが、私にとっての仕事の第一歩なんです。

ーーメッツァという場の特性をどう捉えていますか?
【望月潔】「ムーミンバレーパーク」と「メッツァビレッジ」、この2つが隣接しながらも全く異なる体験を提供している点が、一番の魅力だと思っています。有料でムーミンの物語の世界観に没入できる「ムーミンバレーパーク」、そして無料で気軽に立ち寄れる「メッツァビレッジ」。テーマ性と自由度、その両方を兼ね備えているからこそ、訪れる人それぞれにとって違った楽しみ方が生まれるんです。しかも、民間企業が無料の公園を運営しているという意味でも、非常に興味深い施設だと感じていました。
ーー「メッツァビレッジ」のコンセプトには、どのような想いを込めているのでしょうか?
【望月潔】メッツァの公式サイトでは、“余白と、暮らす。”という言葉を掲げているんですが、実際ここに来ていただくと、それがどういうことか体感できると思います。自然の中に身を置くことで、心が洗われるような感覚になるというか、やさしい気持ちになれるというか。来場者それぞれが自分のペースで過ごせるからこそ、そういう時間が生まれるんだと思います。

派手なアトラクションはありませんが、その分、たとえば家族で手をつないで歩いたり、カップルが静かに湖を眺めたり、そんなさりげない時間が積み重なって、自然と距離が近づいていく。そういった光景が日常のようにあるのが、この場所の魅力だと感じています。正解がないからこそ、お客様それぞれの感じ方を大切にしたい。そんな思いが、「余白と、暮らす。」という言葉にも込められています。
“北欧の本物”を届けたい。地域とともに育む場づくり
ーー北欧のライフスタイル体験施設として、どのような部分にこだわりを持って運営されていますか?
【望月潔】北欧の文化って、自然との向き合い方や心の豊かさの感覚がとても深いと思うんです。メッツァでも、ただそれっぽく見せるだけではなくて、本物に近づけることを常に意識しています。北欧の生活体験っていう言い方をさせてもらってるからには、“北欧の本物”をやりたいという思いがあるんです。たとえば“夏至祭”は、日本ではあまりなじみのない文化ですが、北欧では大切な行事。フィンランド大使館の方の協力を受けながら、しっかりと本場にならって実施しているんです。

ーーイベントも、かなり本格的に取り組んでいるんですね。
【望月潔】そうなんです。でも、それがなかなか伝わりづらいところがあって(笑)。私たちスタッフも、ちょっと照れながら一緒に輪になって歌ったり踊ったりしているんです。本気で取り組んでいるのに、それが十分に伝わらないもどかしさも感じています。だからこそ、あえて輪の中に入り、思い切って一緒に楽しむようにしているんです。それを自然とできるのが、北欧のスタイルだと思いますし、北欧の人々の暮らしには、無理なく自然に身を任せる感覚がある。そうした空気感まで届けたいですね。
ーー地域との関わりについては、どのように考えていますか?
【望月潔】メッツァという施設があるこの飯能という地域には、もともと“森林文化都市”としての背景があるんです。飯能市と西武鉄道との連携・共生という形も少しずつ広がってきています。たとえば、埼玉西部消防組合とは、災害時に備えた電力供給の協定を結んでいて、駐車場に設置されたソーラーパネルを活用した支援も想定しています。こうした取り組みからも、自然を活かしたまちづくりや地域活性化の一環として、私たちも期待されていると感じています。

さらに、地元の駿河台大学からは「ムーミンバレーパーク」でのインターンシップの受け入れを行っていて、さらに一緒に地域を盛り上げようというプロジェクトもこれから計画しています。
また、最近では地元の観光関係者の方々の間にも「一緒にやろうよ」という気運が自然と広がってきていて、地域企業との連携も進んでいます。たとえば、発酵食品のテーマパーク「OH!!! ~発酵、健康、食の魔法!!!~」とは週末にシャトルバスで両施設間を行き来できる取り組みも始まりましたし、駿河台大学の文化祭のときもシャトルバスで互いをつなぎました。こうした地域のつながりは、これからも大切に育てていきたいと考えています。
湖とともに生きる。メッツァの次なる挑戦
ーー今後の展望として、注力している取り組みがあれば教えてください。
【望月潔】「翔んで埼玉」という映画がありますよね。“海なし県”の埼玉がどう立ち向かうかっていうテーマ、あれはおもしろいなと思っていて、そういう背景もあって「湖畔サミット」に参加しました。埼玉県にとって、海がない代わりに川や湖といった水辺空間をどう活かすかは大きなテーマ。その意味でも、宮沢湖の可能性をもっと引き出していきたいと考えています。実は、「翔んで埼玉」に「ムーミンバレーパーク」が登場してほしいと密かに思っていて、アピールもしています(笑)。

ーーなるほどそうしたアピールも(笑)。近いところでは具体的にどのような取り組みを進めていますか?
【望月潔】まず、入口に「ハイパーミュージアム飯能」を新設しました。現在はヤノベケンジさんの企画展を開催中で、湖に浮かぶ猫のアート作品までボートで向かえるようになっています。湖全体が展示空間になっているような感覚で、ここならではの体験ができると思います。

ーー湖の上でもう一歩踏み込んだ展開を考えていると?
【望月潔】湖畔や水上での体験をより充実させていきたいですね。たとえば、季節によっては、宮沢湖を舞台にフィンランドやスウェーデンなどをテーマにした花火大会を実施することもあります。大使の方々を招き、北欧の音楽に合わせて夜空を彩る演出は、ここならではのものです。こうした取り組みを通じて、北欧各国との関係も年々深まり、開催から5〜6年が経つ今では「認めてもらえたかな」と思いますね。単に景観として湖を見せるだけではなく、体験の場として活かすことで、この場所にもっと広がりが生まれると感じています。

そのほかにも、SUPなど可能性はいろいろあると思っています。そして、将来的には宮沢湖に飛び込むのが私の夢なんです(笑)。それくらい、湖にはまだまだ伸びしろがあると感じています。ただ、宮沢湖は農業用水としての機能もあるので、水質には最大限の配慮が必要です。そこをしっかり守りながら、レジャーとの両立を目指していきたい。湖全体を“余白”として捉えたときに、まだまだ活かしきれていない可能性があると感じています。
ーーコロナ禍を経て、訪れる方々の変化などは感じていますか?
【望月潔】そうですね。消費行動は時代や経済状況によって変わっていくものです。特にコロナ以降は選択肢が広がり、選ばれる側としての意識がさらに問われるようになったと感じています。「余白と、暮らす。」というテーマも、ただ掲げるだけでは伝わらない。やっぱり体験を通じて、それを感じてもらう必要があると思っています。
ーーその中で、どんな層に向けた施設づくりを意識していますか?
【望月潔】ターゲットを絞らず、ご家族からシニア層まで幅広く楽しんでもらえるようにしています。週末には家族連れで賑わいますし、「ムーミンバレーパーク」の花や自然を楽しみに訪れるシニア層の方も多いです。フィンテックグループ全体としても、お子さんの環境格差をなくそうというテーマを掲げており、その一環として子どもたちの支援にも取り組んでいます。今年はムーミン80周年で、“The door is always open(扉はいつでも開いている)”というテーマも掲げられています。まさにムーミンと同じように、メッツァも誰にでも開かれた場所でありたいと思っています。

ーー アイデアはどのように考えているのですか?
【望月潔】他のテーマパークと比較するというよりも、異業種からの学びを大切にしています。おもしろいレストランの工夫や、学校が取り組んでいる教育方法などを見て、それをテーマパークの運営に活かせないかと考えています。そうすることで、ここにしかない体験が生まれる可能性があると感じています。
ーー最後に、これからメッツァビレッジを訪れる方へのメッセージをお願いします。
【望月潔】「メッツァビレッジ」は入場無料です。ぜひ気軽に訪れて、自然の中でのびのびと過ごしていただきたい。宮沢湖を眺めながら深呼吸するだけでも、きっと心が洗われるはずです。湖という自然の恵みと共に生きる場所で、新しい余白を見つけていただけたらうれしいです。

ショッピングを楽しんだり、北欧雑貨を眺めたり、草花に癒やされたり。アートを巡るのもいいし、ボートで湖を渡るのも気持ちいい。「メッツァビレッジ」と「ムーミンバレーパーク」には、そんな自由な時間が流れている。予定を詰め込まず、ふらっと立ち寄ってみてほしい。自然の中で深呼吸するだけでも、ちょっと気分が変わるはずだから。
取材・インタビュー=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=藤巻祐介
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