「家に帰ってメシもないとか、何で結婚したのかわからなくなる」という男性!?今どき女性に母親像を求められても困る！【著者に聞く】

「結婚して子どもができたら家にいてほしい」とか「家に帰ってメシもないとか、何で結婚したのかわからなくなる」という男性に対して、主人公の椚木泉(くぬぎいずみ)は「料理くらい自分で作ればいい」「子どもは二人で育てるべき」と論破して、その場を凍り付かせた――。今回は、漫画『地獄の三十路録』を紹介するとともに、著者の結木万紀子(@sogenakogena)さんにインタビューした。

勉強しかしてこなかったフェミ女子は、つい正論を言って論破してしまう

通称：フェミおばさんと呼ばれているのは、主人公の椚木泉。高学歴で大手企業の宣伝部に勤めるが、三十路を過ぎてなお男性経験がない。男性の性的な視線に嫌悪感を抱き、飲みの席で「結婚して子どもができたら家にいてほしい」とか「家に帰ってメシもないとか、何で結婚したのかわからなくなる」と、勝手な母親像を描く男性を激しく論破してしまう。

一方、大学の同期・八熊(やくま)ありさは、「女の人生は男で決まる」と言う母親の呪いに苦しみながら、ゆるふわな容姿を武器に男性をうまく活用する。椚木から見るとありさは、人生イージーモードのように見える。二人は同期で仲が良さそうに振舞ってはいるが、内心お互いのことが嫌い。しかし、出会いのチャンスすら作ることができない椚木は、ある事件がきっかけで八熊に恋愛指南を乞うことになる。

八熊の指南通りに、椚木が職場での態度を軟化させると、突然「こいつ、俺のことが好き」だと勘違いする同僚男子が現われた。一度食事に行っただけで、ストーカー化していく同僚。男性に執着された経験を持つ八熊は、椚木を助ける。家庭環境も複雑な二人が、なぜ恋愛や男性を嫌悪するようになったのか、その背景が丁寧に描かれている。

「友達でもあるけど憎しみもある」友情とも敵対ともつかない女性同士の関係性を描きたかった

――まずは、結木さんが漫画家になりたいと思ったきっかけを教えてください。

自分が漫画家になれるとは思っていませんでした。元々は二次創作を趣味でやっていました。記念受験感覚で初めて描いたオリジナル漫画を賞に投稿したところ、それが受賞しました。そのまま賞投稿にハマってしまい、気づけば漫画家を目指すことになっていました。

――「地獄の三十路録」の制作の経緯を教えてください。

昨今、女性を主人公として女性の生きづらさ・シスターフッドなどを描く作品が増えているなと感じています。そのジャンルの中で「幅」を持たせたかったというのが、本作の制作のきっかけです。「私たちずっと仲良し！」とは言えない、しかし、どこかで連帯してもいる、友情とも敵対ともつかない女性同士の関係性を描きたかったというのがあります。

――人間の醜い部分、えぐ味がしっかり描かれていますが、本作のコンセプトを教えてください

先ほどの質問の回答と重複する部分もありますが、「一言では言えない」キャラクターを描きたかったです。実際、人と人の関係性を「友達」とか「被害者」「加害者」とか分かりやすいひとつの単語では説明できないことがほとんどだと思います。「友達でもあるけど憎しみもある」「被害者でもあり加害者でもある」みたいな。そういう多面性を持ったキャラを描きたかったというのがあります。

――キャラクターにインパクトがありますね。メインのキャラクターである椚木や八熊はどのように生まれたのでしょうか？

椚木のような男性嫌悪を抱きながらも男性との恋愛に積極的な姿勢を持っている、という女性は意外と多いのではないかと思います。なので椚木のキャラは作品コンセプトと同時に割とすんなり出来ました。八熊はそれと対になる存在にしたく、男性にモテて一見「うまくやっている」一方でそんな自分に虚しさを感じている、というキャラクターにしました。

――正反対の二人の女性を描いてみて、いかがでしたか？

一件正反対ではありますが、重なっている部分もあったりするつもりで描きました。ただ、やはり椚木や八熊とは別に私は私で思想があったりするので、「キャラの思想」と「自分の思想」を切り分けたく、それは少し苦労しました。椚木も八熊も、私からすれば共感できない思想を持っていたりするので。

――そのほかにどのような漫画を描いていますか？

過去作で言うと、『地獄の三十路録』の前は、集英社のマンガMeeというアプリで「肉と恋」というギャグマンガを連載していました。今は次の連載に向けてアイデアを探しているところです。今年はくらげバンチやCOMIC OGYAAA!!など、いろんな媒体で読切が載る予定なので、見かけたらぜひ読んでほしいなと思います。あと、別名義でコミカライズのネーム担当もやっており、そのお仕事も募集中です。ぜひご連絡ください。

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