「たぶんキミにとって辛い事ばかりだよ」忘れてしまった真実を辿る創作漫画に「涙ながらに読んだ」「何度も読み返した」と多くの反響【作者インタビュー】

東京ウォーカー(全国版)

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ポップコーンを片手に、ガラガラの映画館に座る一人の観客。ありふれた光景は、隣に座った見知らぬ人の一声でがらりと姿を変える。この映画館はどこなのか、どうして映画を見ているのか、そして自分は誰なのか――?

映画とともに大切なことを探す観客…『どこかの映画館の話』作:むぴー


とある不思議な映画館を舞台に、自分が誰なのかさえわからない一人の観客に焦点を当てた、むぴー(@mupyyy)さんの創作漫画『どこかの映画館の話』。note・Instagramにて2025年5月に全10話が公開され、さまざまな内容のフィルムと、かわるがわる訪れる人からの、ときにあたたかく、ときに辛辣な言葉で、大切なことを思い出していく物語だ。

『どこかの映画館の話』(1_01)作:むぴー

『どこかの映画館の話』(1_05)作:むぴー


何もかも忘れている観客と、何も知らない読者がリンクするような視点で描かれ、とある人物から「たぶんキミにとって辛い事ばかりだよ」と予告されるように、残酷とも言える真実も待ち受けている。読者からは「涙ながらに読みました」「何度も読み返しました」と多くの反響が寄せられている。

『どこかの映画館の話』(1_12)作:むぴー

『どこかの映画館の話』(1_13)作:むぴー


漫画家・イラストレーターとして活動する作者のむぴーさん。Amebaオフィシャルブロガーとして家族や育児をテーマにした漫画を中心に作品を発表するほか、『子供ができて知ったこと』(扶桑社)、『母がはじまった』(PHP研究所)など、著書も多数刊行。肥前ロンズさんのエッセイをコミカライズした『おはよう、サンテ 不登校の私を救った愛犬との日々』(2025年6月18日(水)発売予定)の漫画も担当している。ウォーカープラスでは、むぴーさんに普段の作風とは毛色の異なる『どこかの映画館の話』の制作秘話を聞いた。

『どこかの映画館の話』(6_20)作:むぴー

「私自身も何もわかっていないまま」描かれた漫画が「人生讃歌」になったワケ


――はじめに、むぴーさんが現在の活動にいたる経緯を教えてください。

【むぴー】子どものころから、落書きしたりお話を考えるのは好きでしたが、あくまでも趣味という感じでした。結婚して、出産し、第一子が卒乳したあとに、少し余裕ができたので「久しぶりに何か漫画でも描いてみよう」と思い、産後の母親についてのセミフィクション漫画を描いたんです。その漫画が育児サイトで連載され、他のメディアさんにお声がけいただいたり、書籍化したりとご縁が広がり、そのまま漫画家・イラストレーターとして仕事するようになりました。とてもラッキーだったと思います。なので、漫画の書き方や絵の書き方は完全に独学です。

――『どこかの映画館の話』を描こうと思ったきっかけは?

【むぴー】もともとのアイデアは、連載向けに設定と始めのシーンだけ思いついたものの、プロットをうまく作れなくてボツになったものでした。今年に入って3番目の末っ子が幼稚園に入園し、約9年間続いた“常に子どもと一緒にいる生活”から自由に時間を使えるようになったので、「せっかくだからこのアイデアを使って好きに漫画を描いてみよう」と思ったのがきっかけです。

――何もわからないまま映画を観る観客がだんだんと事態を理解していく、という構図が読者と重なります。ストーリーや構成で意識したことを教えてください。

【むぴー】この漫画は、はじめの設定以外何も決まっていない状態で「描きながら考えてその場で描く」というやり方で描いたので、描き始める際に構成もゴールがどこなのかもまったく決まっていませんでした。

『どこかの映画館の話』(1_02)作:むぴー


正直な話、私自身はじめは描きながら「今、隣に座ったこの人は誰なんだろう……?」と思っていましたし、「この映画に出てきた3人のうち、誰が主人公なんだろう」と思っていました。主人公や読者と同じく、私自身も何もわかっていないまま描いていたんです。

自分で物語を作っているというよりは、もともと主人公や他の人の人生がすでにあって、私はそれを掘り起こしていくだけ、という感覚がずっとありました。「たぶん、この物語を必要としている人がどこかにいて、その人のためにこの漫画を描いているんだろうな」と思いながら、自然と筆が動いていましたね。

――むぴーさん自身も同じ目線で描かれていたとは驚きです。

【むぴー】なので、本当に続きを描けるのかもわからなくて。序盤からちょこちょこと思わせぶりな描写は多かったんですが、それが一体どこにつながるのかもちゃんと決めていないまま……(笑)。思い浮かんだシーンを描きたいように描いていました。

でも、こうやって自由に好き勝手に漫画を描くのはさきほど言った産後の母親の漫画以来実に8年ぶりだったので、描くのが楽しくて楽しくて仕方なかったです。

――本作ではキャラクターたちが「何がモチーフ」と言えない不思議な姿をしていますが、デザインの源は?

【むぴー】なんとなくですね。本当に。おそらく、カートゥーンの影響は受けていると思います。事前にデザインが決まっていた人は1人もおらず、全員描きながら考えました。後半になると、全員並んだときにバランスがよくなるようなサイズ感と形を意識して作ってはいました。

「だいすきだったよ」とストレートな言葉で主人公に伝える“マル”作:むぴー


――そうだったんですね。その中から、むぴーさんお気に入りのキャラクターを挙げるなら?

【むぴー】お気に入りは先生です。一瞬しか出てきてないけど、すっごくチャーミングな人なんだろうなと思って。あとはマルも好きです。かわいい。

むぴーさんのお気に入りの住人の1人、“先生”。キャラクターはみんな不思議な形をしている作:むぴー


――本作では、育児漫画をはじめ普段むぴーさんが描かれる作品とは画作りの印象も異なるように感じました。

【むぴー】連載漫画や書籍向けの漫画を描くときはクリスタ(CLIP STUDIO PAINT)という漫画に特化したソフトを使用しているのですが、この漫画はあえて普段は落書きするときに使っているソフトで描いています。なので、すごく線が歪んでいるんです。個性が出て私は好きですが、ちょっと読みにくい部分もあったかもしれません。あとは「登場人物を表情豊かにする」というのが私の中の挑戦としてあり、いろんな表情をさせています。ペポの住民はカートゥーンチックなデザインなので、普段より目線や顔の筋肉をたくさん動かしても違和感がなく、描いていて楽しかったです。

――本作を描く上で一番大事にしたポイントや思いがあれば教えてください。

【むぴー】ゴールは決まっていませんでしたが、絶対に希望のある終わり方にしようとは思っていました。「誰かの背中をそっと押すような、隣にそっと座るような、誰かの希望になるような、そんな話を描きたい」という思いが私の中にずっとあります。今までにもいくつか漫画を描いてきましたが、どの漫画でも私が根底に描きたいのは人生讃歌なんだろうなと。今回、一番ダイレクトな形でそれが漫画になったと思います。

映画を見ているうちに何かに気づき始める主人公。主人公がたどり着いた真実とは…?作:むぴー


――本作への読者からの反響や、印象に残った声について教えてください。特にどんな方にこの作品を届けたいですか?

【むぴー】はじめは“謎の不思議な漫画”という感じで全然反響はなかったんですが、毎日更新していくたびに少しずつ読んでくれる人が増え、楽しみにしてくださる方が増え、終盤はものすごい反響があってびっくりしました。

noteとInstagramに投稿していたんですが、ものすごい量の感想やコメントをいただきました。主人公と同じような境遇にある方から長いDMをいただいたり、「この物語を読めてよかった、生きようと思った」と言ってくださる方がいて、皆さんの感想を読みながら何度も泣いてしまいましたし、いまだに感想を読み返すと泣きそうになります。必要としている方にこの物語が届いたのかもしれない、と思って。

2025年6月18日(水)には、むぴーさんが作画を担当した『おはよう、サンテ 不登校の私を救った愛犬との日々』も発売予定。とあることがきっかけで不登校になったロンズさんと愛犬サンテとの出会いから、愛犬を看取るまでを描いたエッセイのコミカライズ版。饒舌で、ガンコで、愛らしいトイプードルのサンテのかわいらしさに癒やされつつ、主人公のロンズが立ち直っていく姿に勇気をもらえるはず。公式X(旧:Twitter)で試し読みもできるのでぜひチェックしてみて!


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