オリンピックシーズン開幕!注目選手を総ざらい 【ジュニア女子・後編】

東海ウォーカー

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ジュニア女子編、最後は関西の選手を取り上げたい。今年のジュニアをリードする紀平梨花の記事を用意できていないのが残念だが、今週末の西日本選手権での取材を基に後日ご紹介したい。

ジャンプだけではない、表現力の選手へと変貌!滝野莉子


ジャンプの調整には苦労しているが、表現力、スケーティングなどは着実に進歩を遂げている


昨年のサマーカップ、その成長ぶりに目を見張った滝野莉子。予想通り、その後の大会で活躍を見せ、一躍ブレイクしたのは記憶に新しい。今年も夏場までは好調を維持していた。初出場のジュニアグランプリでは、初戦のオーストラリア大会で表彰台に乗る活躍を見せた。順風満帆の滑り出しに見えたのだが、その後、ジャンプの調整に苦労している。成長期が来ていて、1か月に1cm伸びているのだそう。8月のサマーカップの時には145cmと聞いていたのだが、近畿ブロックの時には146cmと答えてくれた。本人は以前から「身長が高くなりたいです」と話しており、背が伸びていることを喜んでいるようだが、さすがにジャンプへの悪影響は避けられない様子だ。

近畿ブロックのショートプログラムでは、ジャンプで二つのミスをしたことがショックだったようで、「毎日頑張って練習してきたつもりだったのに、自分を信じ切れなかったことが悔しい」と、こらえきれずに涙をこぼす場面があった。

ジャンプが本調子ではないとはいえ、表現面では大きな成長を感じさせてくれた。ジュニアグランプリで海外の選手と戦った経験から学んだことが大きかったようだ。

「海外の試合に行って、自分はまだまだ踊れていない、と感じました。特にロシアのトゥルソワ選手に影響を受けました。私とあまり体格が変わらないのに凄い!」

ジャンプ、エッジの深さ、体の使い方など、多岐にわたって学ぶことが多かったようだ。そのことは演技にも表れていて、明らかにサマーカップの演技よりも表現が大きくなっていた。また、今季のショートプログラム、“ポエタ”は、かつてこの曲で演技をしたステファン・ランビエールにも表現の指導を受けたという。

滝野選手は、サマーカップではトリプルアクセルに挑戦した。近畿ブロックでは回避していたのだが、この点については「トリプルアクセルの踏切りが怖い、という気持ちが出てきています」とのこと。身長が伸びて軸が安定しないことが、恐怖心に拍車をかけている様子で、まずは他のジャンプを安定させることを優先して練習する段階のようだ。近畿ブロックでは、6分間練習でも苦労する場面が見受けられ、今は我慢の調整の時期だが、とにかく練習熱心な選手だ。ジャンプが安定するのもそう遠いことではないだろう。

アスリートとして開花しつつある、本田望結


情感たっぷりに演じる本田望結


フィギュアスケートファンでなくとも知っている、ある意味、最も有名な選手の一人だろう。取材に携わる者ならば誰もが知っているが、本当に努力家だ。芸能活動、学校の勉強、そしてフィギュアスケート選手としての練習。これらをすべて、手を抜かずに取り組む姿勢には頭が下がる。ただ、成績が伴わなければスポーツ記事としては取り上げにくく、結果、芸能記事的な取り上げられ方をすることが今までは多かった。それが今季、アスリートとしてもようやく開花の時期を迎えたようだ。夏場のローカル大会では結果を出せずにいたのだが、近畿ブロックでは今まででベストの演技、4位に入る健闘を見せた。

自分の試合のことよりも「真凜お姉ちゃんのジャパンオープンの方が気になった」と軽い冗談で始まったショートプログラム後の会見。その表情は明るい。目標としていた50点を超える、54点というスコアを出せたのだ。

「今までは相手に勝つ、何点出す、順位を取る、そういったことを意識してしまっていました。けれど今回は自分に勝つことを考えて、練習してきたことを信じて取り組むことができました」

この試合で目を惹いたのがルッツジャンプへの取り組みだ。6分間練習では3回転を跳ばず、本番のみ、軸を絞めて3回転にする、という異色の調整を見せていた。これは濱田コーチからの指示だという。「練習では軽く跳べているのが、試合本番では力が入ってしまう」という欠点を克服するため、6分間練習では1回転半で降りる調整を行ったのだ。

続くフリー演技でも89点と高得点が出たのだが、ミスがいくつかあったこともあり、納得はしていない様子。とはいえ、夏場までの試合内容と比較すれば長足の進歩だ。シーズン当初、目標としていた全日本ジュニア出場にとどまらず、もっと上の目標も目指せそうだ。

本田望結の取材でのコメントを聞いていると、非常にクレバーな選手だということが分かる。取材慣れしている面もあるのだろうが、たとえ言葉足らずの質問を投げかけられようとも、その意図を読み取って理路整然と返すコメント力は見事だ。これは取材だけの話ではなく、練習への取り組みについても、理詰めで論理的に考えている様子が伺える。フィーリング、感覚を大切にしている印象の本田真凜とは対照的だ。常々「私はジャンプが得意な選手ではない」と話している本田望結は、他の選手、中でも特に身近にいるきょうだいのジャンプを分析し、論理的に研究することを続けてきた。

「跳べている選手を真似した方が早いと感じています。きょうだいのジャンプのいいところを見て盗むことを心掛けているんです」

限られた練習時間の中で最大の効果を求めるためにも、このやり方は功を奏しているのだろう。ただ理詰めで分析的に考えることは良い面もある一方、考え過ぎてしまう悪い面もある、と自身で分析しているようで、「真凜選手のようにリズム良く感覚で跳べることも凄くいいことだと思います。その方が力を抜いて跳べるのだと思います」と、やはり姉のジャンプを分析的に見つめながらも、その感性に基づく跳び方を習得することを目指しているようだ。練習への取り組み方も含め、他にいないタイプの選手であり、これから先、どんな成長を見せてくれるのか実に楽しみだ。

今季は苦しい戦いが続くが、復活を期待したい、岩野桃亜


”星の王子様”を演じる岩野桃亜。非常にポテンシャルの高い選手であり、復活を期待したい


最後に取り上げるのは、昨シーズン、ノービスで活躍し、満を持してジュニアに上がった岩野桃亜だ。ただ現在、ジュニアの壁に苦しんでいるようにも見える。今季はJGPオーストリア大会に出場。海外の選手の演技を観て、「自分はまだまだ足りない」と痛切に実感したという。特に、自分では自信があった表現力において、海外選手に及ばないことに衝撃を受けたようだ。オーストリア大会で6位に終わったため、2戦目の派遣を勝ち取ることはできなかったが「自分の力を出し切ったと思うので、悔しいよりも、嬉しい気持ちが強いんです。これからの自分にとってプラスになったと思います」と前向きな姿勢を見せた。

近畿ブロックでは2位に入ったものの、ミスの多い演技で不満の残る結果となってしまった。4回転サルコウ挑戦など、大技への意欲を見せる選手だが、まずは回転不足、エッジエラーなど技術面での欠点をクリアにし、世界の強豪とも互角に戦える力を身に着けてほしいものだ。

【東海ウォーカー】

中村康一 (Image works)

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