企業のブランド価値を高めた、常に“人を起点に置く”マーケティング改革とは?ゲッティイメージズ×富士通トークセッション

東京ウォーカー(全国版)

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ブランド価値向上を目指す企業のマーケティング・広報担当者に向けて、ゲッティイメージズ ジャパンが新たに開始したワークショップ型交流イベント「Brand Connect(ブランド・コネクト)」。

記念すべき第1回は、富士通株式会社ブランドエクスペリエンス部の高橋将さんがゲストとして登壇し、社会に根差すブランドを目指し、富士通が取り組んできた実践的なブランディングについて語った。本記事では、その模様をレポートする。

(写真左)富士通の高橋将さん、(同右)ナビゲーターのゲッティイメージズ・富安純人さん【撮影=Jaime Miki】


スピーカー紹介

ゲストスピーカー:高橋将(たかはし・すすむ)

富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 コーポレートブランド統括部 ブランドエクスペリエンス部 シニアマネージャー
ITベンチャー企業でクリエイティブリーダーを経験したのち、2002年、富士通株式会社へ入社。システム画面、WebのGUIデザインを担当。2005年からコーポレートブランドに関わるデザインを担当。2010年ブランドプロミス立上げに携わりiF Award2010を受賞。2021年ブランドリフレッシュのクリエイティブをリードしてiF Award2022を受賞。現在、Vision、重点事業、イベント、広告、TVCM、Web、SNS、刊行物、提案書、施設空間、総務品等のクリエイティブディレクションを担当。

ナビゲーター:富安純人(とみやす・すみと)

ゲッティイメージズ ジャパン株式会社 ビジュアル・ストラテジー キーアカウントエグゼクティブ
新卒で出版社に入社。マーケティング専門メディアの編集を経験したのち、営業職として新規メディアの立ち上げにも従事。この前職の経歴を活かし、現在は広告業界向けにデジタルコンテンツの販売からカスタム型ソリューションの提案、著作権ウェビナー開催までを幅広く行う。2023年9月にローンチした「生成 AI by Getty Images」においては、本社シアトルのグローバルオフィスとも連携し、国内最初となる事例創出に寄与。

ブランド価値向上の裏側にあった課題と、その転換点

ブランディング専門企業であるInterbrand Best Japan Brandsが発表した、富士通ブランド価値の推移

【富安さん(以下、富安)】 早速ではございますが、富士通さんは2020年以降、ブランド価値が大きく向上し、Interbrand Best Japan Brandsの「Best Japan Brands 2024」でも前年比19%アップという結果を出されています。変化のきっかけは何だったのでしょうか?

【高橋さん(以下、高橋)】 2019年6月に現社長の時田が就任し、IT企業からDX(デジタルトランスフォーメーション)企業へと舵を切ることを宣言したことが大きな転機でした。2020年にはパーパスを定め、「パーパスドリブン経営」をスタート。それに合わせて、事業モデルや組織も大きく変えていきました。コンサルティング事業の強化、新規人材の登用、働き方の刷新など、新しいことを積極的に推進したことが、評価された理由だと思っています。そうした変化を社外、特にグローバル市場にきちんと伝える。それが私たちブランドチームの役割だと考えています。

トークセッションの様子。富士通が歩んできた変革の道のりを振り返る高橋さん【撮影=Jaime Miki】


【富安】 時田さんの就任が契機となったということですが、その変革に至る前には、どのような課題があったのでしょうか?

【高橋】 当時は経営戦略とブランド戦略がうまく連動しておらず、全社を巻き込む体制も弱かった。また、富士通は技術やロジックには強いけれど、価値や意味を伝えるのが苦手で、メッセージが人に届きにくいという課題もありました。

【富安】 そのような課題に対して、2020年以降はどう変わっていったのですか?

【高橋】 先ほどの課題の“逆”をクリアしてブランディングしていきました。ブランディングの推進体制を整え、全社を巻き込む形で動けるようになったことが大きいですね。以前は一部の部署だけだった取り組みが、横断的な“ワンチーム”で機能するようになりました。そして、人を起点とした考え方、ヒューマンセントリックを徹底しました。まだ完璧とは言えませんが、ガイドラインを整えたり、説明会を重ねたりしながら、伝え方の底上げを進めています。

パーパスを軸に動き出したブランドと事業の連携

【富安】最後の「ヒューマンセントリック」については、ブランド確立の軸となる部分ですので、後程詳しくお聞きしたいと思いますが、高橋さんのブランドチームでのお取り組みとしては、具体的にどういうことをされたのでしょうか?

広告やWeb、名刺など、オンラインからオフラインまであらゆるタッチポイントを見直した


【高橋】 まず取り組んだのが、パーパスに基づいたビジュアルアイデンティティの刷新です。以前は「shaping tomorrow with you」のもと、お客様に寄り添うスタンスを打ち出していましたが、新たなパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」に合わせて、より主体的に社会をリードしていく姿勢を表現しました。フォントやインフィニティマークにも、そうした意志を込めています。こうした世界観をガイドラインに落とし込み、名刺や広告、Webなどタッチポイント全体に一貫して展開し、おおよそ2年で主要な刷新を完了しました。

【富安】 「2年」と聞くと、かなり早いように感じますが、高橋さんはどう感じますか?

【高橋】 先程の話になるのですが、体制をきちんと整えたことでうまくやれたのではないかなと思っています。さらに、ちょうどそのタイミングで、パーパスを実現するためのキーとなる新たな事業モデル「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」も立ち上げました。テクノロジーを活用して、お客様のビジネス課題や社会課題にクロスインダストリーで向き合う事業モデルで、等々力のスタジアムの名称などにも使用され、さまざまなタッチポイントに展開しています。

「Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu」


全社を巻き込むブランド体制の構築と浸透施策

トークセッションの様子。ゲッティイメージズの素材を使用したスライド資料とともに進む【撮影=Jaime Miki】

【富安】 先程、ブランディング推進のために全社巻き込んで体制整えたという話をされていましたが、そこをぜひ深掘りしたいと思います。

【高橋】 体制整備については、よく“花火”と”じわじわ”をキーワードに話しているのですが、この両方が大事だと思っています。“花火”というのは、ブランドを印象づけるインパクトある打ち手のこと。ブランドは、「お客様の頭の中に作られる評判」だと言われていて、それを作るには、マーケティングコミュニケーションを通じて強く記憶に残す体験を届けなければいけません。そこで、これまでバラバラだった宣伝、Web、イベント、ブランド、メッセージなどの機能を、グローバルかつワンチームで編成しました。今では世界中でおよそ100人規模のメンバーが連携し、統合的な施策を打てる体制になっています。

一方の“じわじわ”は、全社12万人への浸透です。2000人規模での説明会を17回実施したほか、ガイドラインやテンプレート、ツール、ライブラリ集も整備しました。ライブラリにはゲッティイメージズのグローバル契約素材も活用させていただいています。さらに、2021年にはグローバルで約200名のクリエイティブ専任チームも立ち上げました。高い品質をスピーディーに実現する体制が整い、全社レベルでのブランディングがようやく仕組みとして機能し始めました。

【富安】 ガイドラインやライブラリ集には、ゲッティイメージズの素材を活用していただいたということで、ありがとうございます。どのように有効的でしたでしょうか?

【高橋】 弊社は事業領域が広く、業種や生活シーン、ダイバーシティ&インクルージョンへの配慮も必要ですが、ゲッティイメージズの素材はそうした多様なニーズにしっかり応えてくれます。また、抽象的なイメージと具体的なシーンの両方がそろっていて、メリハリのある表現ができる。私たちのメッセージ設計にもすごくフィットしています。

豊富なシーンがそろうゲッティイメージズの素材


【富安】 数ある素材調達先の中で、ゲッティイメージズを選んでいただいている理由は何でしょうか?

【高橋】 ゲッティイメージズは他社に比べてクオリティが高いと感じています。特に私たちはグローバルで事業を展開しているので、各地域のメンバーが納得のいくクオリティが求められるのですが、ゲッティイメージズの素材はそこをしっかりクリアしている。それからネームバリューもありますね。テレビの報道などでもよく目にする名前ですし、コンプライアンスの観点からも信頼しています。

メッセージを届けるための“人"を起点に置いた考え方

【富安】 ここからは、富士通のブランド確立の軸となっている「ヒューマンセントリック」についてお話しいただけますか。

【高橋】 先程も少し触れましたが、ブランドとは、お客様の頭の中にできあがるもの。だからこそ、「誰の中に」「何を」「どのように」植えつけるか。そういう意味で、ヒューマンセントリックの視点は欠かせません。マーケティングの基本であるものの、実際の組織運営では意外とブレやすい。常に視点を人に戻すことを意識しています。

【富安】 せっかくなので、実例を交えながら詳しく参りたいと思います。

事例紹介の画像。「どちらがヒューマンセントリック?」


【高橋】 こちら2つの画像、どちらがヒューマンセントリックだと思いますか?そもそもこれが何かと言いますと、働き方の推進を促す資料の表紙画像です。左側は「ネットワークを強化して、さまざまな人の働き方を変えていきます」と言いたいあまり、情報を詰め込みすぎて、ごちゃごちゃした印象になってしまったケースで、これまでもありました。しかし、ヒューマンセントリックで考えると、「誰の中に」「何を」伝えるかを明確にすることが大事。たとえば経営者がターゲットなら、「社員のウェルビーイングが向上します」といった具体的な価値が伝わる右側のような表現にすべきで、より的確な画像を選ぶよう、社内でも啓蒙しています。

トークセッションの様子。コンサルティング事業のブランディング事例を紹介【撮影=Jaime Miki】


【高橋】 では次に、コンサルティング事業のブランディング事例をご紹介します。これはヒューマンセントリックの考え方を実際のクリエイティブにどう落とし込んだか、というプロセスの話です。「誰に」向けたブランディングなのかをクリアにするため、各社のCDO(Chief Digital Officer)をターゲットとして設定しました。その多くが明確なビジョンもなく、社内の理解も得づらい中で、「何をすればいいかわからない」「孤独とプレッシャーを感じている」というインサイトがありました。その心境に寄り添う形で、3つのコミュニケーションの方向性を検討。その際にゲッティイメージズの素材を使って社内でビジュアル検証を行い、最終的に、一番右の「共に冒険への出発」というアプローチに決まりました。そして完成したのが、「誰もいかない道こそ、未来だ。」というコピーを添えたクリエイティブ。CDOに向けて、新たな挑戦を後押しするようなメッセージを込めて、現在グローバルで展開しています。

コンサルティングサービスの事業ブランド「Uvance Wayfinders(ユーバンス ウェイファインダーズ)」のサイト


【富安】 こうしたビジュアルは、既存のストック素材だけでは表現しきれない部分もありますよね。特に競合も同じようにブランド構築を進めている中で、富士通ならではのオリジナリティはどのように出されているのですか?

【高橋】 オリジナリティを出すことは、非常に重要。とはいえ、予算に限りがある中で、すべてをオリジナルで制作するのは難しいのが実情です。そこで私たちは、選定した画像に富士通独自の要素を加えたり、昨年からはゲッティイメージズのカスタムコンテンツを活用したりして、表現の幅を広げています。カスタムコンテンツは、グローバルのクリエイターに依頼して、テーマに沿ったオリジナル素材を制作いただく取り組みです。

【富安】 楽しみにしています。あとは少し目線を変えて、営業資料もビジュアルが関わってくるということでテコ入れされたと伺っていますけど、その部分も教えていただいてもいいですか?

【高橋】 営業活動において提案書は、ビジネスの生命線となる非常に重要なツール。私たちはその質を高めるためのテンプレートやツールを、国内の従業員約7万人に提供しています。少し前の話になりますが、ある農業生産者向けクラウドソリューションの提案書で、「ドローンを使え」という、上から目線でHowの内容に寄りすぎているものがありました。あらためてヒューマンセントリックの視点で見直しをすると、生産者は「後継者がいなく、いつまで続けられるか不安」と悩んでおり、求めているのは“稼げる農業”より“持続可能な農業経営”だとわかったんです。その気づきをもとに、提案書の冒頭を「共感」から始め、富士通としての想いを伝えたうえで具体的な提案に入る形に変更しました。こうした事例をきっかけに、冒頭にゲッティイメージズの画像を使用するなど、営業資料もグラフィカルで質の高いものが増えています。

【富安】 ブランディングと営業、なんとなく切り離して考えがちですが、そこは企業全体のブランド価値を高めていくうえで大切なのですね。最近ですと、富士通は国際ユニバーサル協議会が実施する「国際デザイン賞」を受賞されました。アクセシビリティや多様性のサービスのビジュアル化についてのお取り組みについて、そして、ビジュアルの活用の仕方についてご紹介いただけますか?

車椅子の女性が自然に映り込んでいる画像


【高橋】 私たちは、誰に対しても平等に伝わるコミュニケーションを大切にしています。聴覚障がいのある方には字幕の付記を徹底し、視覚障がいのある方には画像にalt属性や音声読み上げ対応、色だけで情報を区別しないなど、細かな配慮を行っています。ビジュアル面でも、あらゆる人種・性別を意識的に配置し、車椅子の方もシーンの中に溶け込んでいる写真を選ぶようにしています。ゲッティイメージズの素材は、こうした自然な多様性の表現に非常に役立っています。なお、私たちのチームには聴覚障がいのあるメンバーも在籍していて、当事者の視点を取り入れながら取り組みを推進しています。

【富安】 最後に、今後の富士通におけるブランディングの展望や挑戦されたいことをお聞かせください。

インターブランド社「ベストグローバルブランドトップ100」の上位25社のロゴマーク


【高橋】 私たちが目指しているのは、「ベストグローバルブランドトップ100」に名を連ねることです。上位25社を見ると、どれも世の中になくてはならない存在ばかり。平日はマイクロソフトやAdobeで仕事をして、夜はYouTubeやAmazonで癒やされ、週末はナイキを履いてコーラを飲みながら、BMWに乗って、Googleマップを使い福島へ釣りをしに行く。生活そのものがブランドでできていると感じます。

富士通も、誰かの頭の中に自然と残るブランドを目指していきたい。そのためには、言葉だけでなく、感情に訴えるビジュアルの力が不可欠です。私たちは新しいプロジェクトを始めるとき、まずゲッティイメージズの画像を並べながらアイデアを広げるのです。今後も一緒に伴走してくれる、欠かせないパートナーとしてお付き合いいただければと思います。

【富安】 ここ数年でこれだけの変化を成し遂げたのですね。今後も期待して見届けたいと思います。本日はありがとうございました!

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