芳根京子「大喧嘩してメンタルもだいぶ鍛えられた」振り返りありがたかったという恩人を語る
東京ウォーカー(全国版)
映画監督としての活躍にとどまらず、舞台でも評価の高い行定勲さんが、中井貴一さんに「ぜひ、昭和の映画界の話を演劇作品にしたい」と熱烈オファーをして実現することとなった舞台『先生の背中〜ある映画監督の幻影的回想録〜』。2015年に上演された舞台『趣味の部屋』以来10年ぶりに行定さんと中井さんの最強タッグが復活する。
日本映画界の名匠・小津安二郎監督をモデルに物語を描いた本作で、中井さん演じる映画監督の小田昌二郎が娘のようにかわいがる食堂の看板娘・幸子を演じるのは芳根京子さん。演じる役柄や本作にかける思い、さらに恩人とのエピソードや芝居との向き合い方を変えた作品などを語ってくれた。

すてきなセリフの言葉について「中井貴一さんから直接言っていただけるのが楽しみ」
――芳根さんにとって舞台作品への出演は2019年の『母と惑星について、および自転する女たちの記録』以来6年ぶりとなります。本作のオファーを受けた時はどんな心境でしたか?
【芳根京子】『母と惑星について、および自転する女たちの記録』で濃い体験をしたからなのか、“舞台でのお芝居はやりきった!”という気持ちがしばらく続いていたんです。でも、2年ほど前から“また舞台作品に挑戦したい”と思い始め、そんな時に本作のお話をいただきまして、主演が中井貴一さん、演出が行定勲さんと聞いて「ぜひお引き受けしたいです」とお返事しました。
――『母と惑星について、および自転する女たちの記録』で母親役を演じたキムラ緑子さんも本作に出演されますね。
【芳根京子】緑子さんは『母と惑星について、および自転する女たちの記録』でとっても怖い母親役を演じてらっしゃいましたが、実際はとても優しい方で、今でもお食事に行くなど仲良くさせていただいています。今回、緑子さんと再び共演できるのが楽しみですし、緑子さんがいてくださるので安心して作品の世界に飛び込めそうな予感がしています。

――行定勲さんとは今回初めてご一緒されると思うのですが、お会いになられましたか?
【芳根京子】まだお会いしていなくて(※本インタビュー取材時)、お稽古もこれからなので、どんな演出をされるのかすごく楽しみです。行定さんの作品に出演経験のある方から「行定さんは優しいよ」とお聞きしたので、役や作品について少しでも疑問に思ったことがあれば、どんどん質問してみようと思っているんです。
ただ、そのためには自分がどういう人間なのかを知ってもらったり、逆に行定さんがどんな思いを持って作品を手がけるのかを知ることも大事なので、行定さんといろいろなお話をする時間が作れたらいいなと思っています。
――主演を務める中井貴一さんとも初共演になりますね。
【芳根京子】今回、中井さん演じる小田昌二郎さんのセリフですてきな言葉がたくさんあるのですが、それを中井さんからお芝居を通して直接言っていただけるのがすごく楽しみです。
――台本を読ませていただいたのですが、個人的に「好きなものを見て好きなものを食べればいいよ。それが君の世界だ。それをこしらえるのが人生だ」というセリフにグッときました。
【芳根京子】とてもすてきなセリフですよね。そういった言葉を中井さんがどんな風に言ってくださるのか、今からワクワクしています。お互いのドラマの撮影スタジオが近かったのでご挨拶させていただいた時に、中井さんは「体調に気をつけてね。体は本当に大切だからね」と言ってくださり、とても優しい方だなと感動しました。座長の中井さんからいろいろなことを学べたらいいなと思っています。

“お芝居は楽しい”と感じるきっかけをくれた作品「向き合い方を変えてくれた」
――小田さんから娘のようにかわいがられている幸子を、芳根さんはどんな人物だと捉えてらっしゃいますか?
【芳根京子】母親と二人だけで食堂を営んでいるので、すごくしっかりした女の子なのかなと。だけど、どこか夢見る少女のような一面もあって、ピュアでかわいい女の子という印象を持ちました。台本を読むと、彼女の幸福を願わずにはいられなくなるようなキャラクターだったので、健気に演じられたらと思っています。
――登場人物の中で一番感情移入できるキャラクターだと思いました。
【芳根京子】確かに一番身近にいるタイプのキャラクターですよね。幸子は素朴で純粋な女の子なので、お客さんにも温かい目で見守ってもらえたらうれしいです。
――幸子にとって小田さんは恩人のような存在ですが、芳根さんにとって恩人といえばどなたでしょうか?
【芳根京子】デビュー当時から7年間お世話になったマネージャーさんです。私が10代の頃、マネージャーさんと大喧嘩したことをすごく覚えていて、当時マネージャーさんは30代半ばだったと思いますが、自分が大人になってみて、怒る時はすごくエネルギーが必要なんだということに気づいたんです。
当時、マネージャーさんが本気で怒ってくれたおかげで、人としての基本やマナーみたいなものを身につけることができましたし、メンタルもだいぶ鍛えられたので、本当にありがたかったなとあらためて感謝しています。

――これまで芳根さんはたくさんの作品に出演されていますが、“お芝居への向き合い方が変わった”と思える作品を教えていただけますか?
【芳根京子】『ファーストラヴ』という映画で、主演の北川景子さん(の役)と対峙するシーンがあって、段取りの時に私がものすごい量の涙を流して泣いてしまったんです。
そのあとメイクを直してもらいながら“さっきと同じように演じなければいけないけれど…もしかしたら無理かもしれない”と思い、堤幸彦監督に自分の正直な気持ちをお伝えしたんです。そしたら堤監督が「さっきみたいにワンカットでいきたいから同じように演じてくれますか」と仰ったので、“どうしよう…”と不安な気持ちになってしまって。
――不安な気持ちを抱えながら本番に挑んだのですね。
【芳根京子】そうです。でも、いざカメラが回って北川さんとのお芝居が始まったら、さっきまでの不安はなんだったんだろうというぐらい段取りの時と同じように感情が昂ぶりまして、しっかりと演じ切ることができたんです。その時に“お芝居は一人でやるものじゃないんだな”とあらためて実感しました。
その撮影の翌日が堤監督のお誕生日だったのですが、「最高の誕生日プレゼントをありがとう」と言ってくださって、すごくうれしかったのを覚えています。それ以来、さらに“もっとお芝居を頑張りたい”、“お芝居って楽しいな”と感じることが増えたので、そのきっかけを与えてくれた『ファーストラヴ』は、私にとってお芝居との向き合い方を変えてくれた作品と言えます。

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