【第41回】老若男女の憩いの場。にぎわいが絶えない和菓子店「和泉屋」
東海ウォーカー

岡崎城がある岡崎公園にほど近い商店街。シャッターが閉まったままの店も多い街並みで、人だかりが絶えず目を引くのが、創業から80年を超える和菓子店「和泉屋」だ。
餅の販売からスタートし、現在は和洋菓子まで
「和泉屋」の創業は1932(昭和7)年。今年で創業85年目を迎えた。創業当時は“一銭餅”という餅だけを販売しており、今でも餅菓子を扱うため、“お餅屋さん”として認識している人もいるとか。現在は、ショーケースにずらりと並ぶ定番の和菓子やオリジナルの和洋菓子、関東煮(かんとに)と呼ばれるおでんまで取りそろえる、メニュー豊富な店となっている。

店を取り仕切るのは2代目店主の奈倉ひでよさんと、妻の通世さん。3代目の啓介さんも店に入り、新商品の開発、姉妹店のオープンなど、若い世代ならではの視点や発想を生かして活躍している。

自家用車を利用する市民が増えて以降、店がある康生町の商店街を歩く人は少なくなったが、和泉屋の客足は変わることなく続いているという。ただ、長い歴史のなかではさまざまな時代があったようで、「和泉屋」の苦労話を通世さんに尋ねると「戦時中は食材の調達が難しく、祖父が京都まで買い出しに行ったこともあるそう」と答えてくれた。

幅広い世代が集い、小腹と心を満たすオアシス
「和泉屋」に集まるお客さんは実に多種多様。子どもの手を引いたお母さんや高齢の女性グループ、帰り道の大学生、手みやげを買い求めるサラリーマンなどが絶え間なくやってくる。「朝シャッターを開けると、何人か待っているのよ。休日には向こうの信号まで行列ができることもあるし」と、目まぐるしく働き続ける通世さんが、「和泉屋」の人気のほどを教えてくれた。テレビ番組などの取材も多く、壁には有名人のサイン色紙がいっぱいだ。

店頭に並ぶお菓子は、「みたらしだんご」(1本75円)や「おはぎ」(110円)などの定番から、「餅パイ」(180円)、「和栗ぷりん」(230円)などの創作和洋菓子まで幅広く、シニアや子ども、若い世代にも好まれる商品がそろっている。

店内には「関東煮」(1本120円)が煮えていて、好みのネタを選んで「赤飯」(110円)などと組み合わせれば、軽食として小腹を満たすのにも十分だ。
時代とともに進化しながらも、基本には忠実に

餅にムースを包み、和栗ペーストをのせた「モンブラン大福」(260円)や、「和栗deシュー」(280円)などは、3代目の啓介さんが考案したオリジナル商品。和菓子店らしからぬ商品に見えるが、あくまでも和の要素を基本にした“和洋菓子”であることを心掛けているという。シュークリームにもあんを使用するなど、和菓子店ならではのアイデアと技が生かされている。

商品の作り置きはせず、販売状況を見ながら店舗奥の調理場で随時仕込むなど、作り立てのおいしさにもこだわっている。一番人気の「みたらしだんご」も、70年は販売しているというロングセラーだが、作り方や材料はほとんど変わらないそうだ。

常連客が4世代目に入り、店を取り巻く状況もずいぶんと変わってきた。「和泉屋」も2017年10月に「おとぎの蔵 豆の樹」という姉妹店をオープンしたところで、啓介さんはもっぱら新店の運営に携わっている。伝統を守る世代と新しい時代を切り開く世代。両者が一体となって支える「和泉屋」のにぎわいは、まだまだ変わらず続いていきそうだ。【東海ウォーカー/豊野貴子(エディマート)】
豊野貴子(エディマート)
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