【第40回】おしどり夫婦が営む岐阜・大垣のアットホームな老舗うどん店「東京庵」
東海ウォーカー
1923(大正12)年に創業した岐阜県大垣市の「東京庵」。3代目夫婦の温かい人柄や、名物の中華そばなど昔ながらの優しい味が、地域のたくさんの人に愛されている。
大正時代から続く老舗うどん店
JR大垣駅から南に向かって徒歩8分、かつての大垣城の城下町に店を構える「東京庵」。現在は3代目にあたる中村さん夫婦が店を切り盛りしている。大将の俊光さんは真面目で凝り性、女将のみねこさんは明るくておしゃべり好き。性格は好対照なれど、まさにおしどり夫婦といった仲のよさが、店のアットホームな雰囲気を作り出している。
創業は1923(大正12)年。「台湾のうどん屋さんで修業した私の祖父が、地元の大垣に帰ってきて、この店を始めたんだと聞いています」とみねこさん。「東京庵」という店名は、その台湾にあった店の名を引き継いでいるそうだ。
ただし、創業時の店は戦争のときに一度焼けてしまっている。「この辺りも空襲が激しかったものですから」とみねこさん。戦後、簡素なバラック小屋で営業していた時期を経て、1956(昭和31)年に現在の店が建てられた。なんと店内にあるテーブルの幾つかは、店が建てられた60年以上前から変わっていない。「変えようと思ったときもあったのですが、常連さんが『これがいいんだよ』って(笑)。だから今も大切に使い続けているんです」
懐かしくて優しい味の中華そば
「東京庵」の名物は、まずなんといっても「中華そば」(550円)である。ツユはカツオ節と鶏ガラでダシを取った醤油味。今どきのラーメンとは一線を画す、昔ながらの優しい味わいだ。そして、麺はかんすいを控えめにした自家製麺。「かんすいが多過ぎると、ダシの香りが損なわれてしまうんです」と俊光さん。そうしたこだわりのツユと麺に合わせて、カマボコとメンマ、チャーシュー、多めのネギが添えられる。なお、俊光さんの代からはチャーシューも自家製。毎朝、圧力釜で手作りしているという。
毎年、秋から春先にかけては八丁味噌を使った「味噌煮込みうどん」(850円)も出している。「寒い季節はとても人気ですよ」とみねこさん。「中華そば」と同じく、こちらも自家製麺である。「こねるときに、隠し味としてある調味料を足しているんです」と俊光さん。なるほど、麺自体にも少し色が付いており、味に奥行きがある。なお、麺類のメニューはすべてご飯と冷奴、漬け物付きの定食(+250円)にできるほか、無料で天かすやおろしショウガを足すこともできる。味にコクを出したいときにオススメだ。
「東京庵」は麺類だけでなく、丼のメニューも充実している。とくに一番人気は「親子丼」(750円)。カツオ節と昆布を使ったうどんのダシに、さらにみりんと砂糖を足して、鶏肉と卵を甘口に煮込んでいる。まるで子どものころに祖母が作ってくれたような、どこか懐かしくてクセになるおいしさだ。
おいしく作るためのこだわりが随所に光る
店内には俊光さん作の絵や陶の置物などがいくつも飾られている。「とにかく細かい手仕事が好きというか、多趣味で凝り性な人なんですよ」とみねこさん。温厚な俊光さんは、ただニコニコと笑っているばかりだが、そうした1つのことをコツコツと積み上げていく生来の生真面目さが店の味を支えているのは間違いない。
「昔は中華そばの麺を朝にまとめて茹でていたのですが、それではどうしても歯応えが落ちてしまう。今は、少し時間はかかってしまいますけど、注文の度に茹でるようにしているんです」と俊光さん。ほかにも、米はすべて岐阜県・揖斐産のコシヒカリを使用。しかも玄米で仕入れて、使う分だけをこまめに精米するというこだわりようである。
店の雰囲気や料理の味に懐かしさを残しつつも、「少しでもおいしく食べてもらいたい」という思いで随所に工夫を凝らしている「東京庵」。同店の中華そばやうどんで育った子どもが大きくなって、今度は親子で食べに来たり、「ここの中華そばしか食べられない」という常連さんがいたり、これからも地域に欠かせない人気店として多くの人に愛されていくだろう。【東海ウォーカー/藤原均】
藤原均
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