A24最大のヒットシリーズ最新作『MaXXXine マキシーン』を鑑賞。80年代のハリウッドでスターを目指すヒロインが連続殺人鬼に立ち向かう!
東京ウォーカー(全国版)
2025年6月6日に全国公開されたスタジオA24最大のヒットシリーズ『X エックス』、『Pearl パール』に続く最新作『MaXXXine マキシーン』。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

【ストーリー】
1985年、ハリウッド。巨大な撮影スタジオに現れたブロンドの女、その名はマキシーン・ミンクス。ポルノ界で人気を極めた彼女は、“本物のスター”になるために新作ホラー映画『ピューリタンⅡ』のオーディションに参加していた。
そんな中、ロサンゼルスでは連日連夜ニュースで報道される連続殺人鬼ナイト・ストーカーの恐怖に包まれていた。マキシーンの周りでも、次々とヒルズのパーティーに呼ばれた女優仲間が殺される謎の事件が起きる。
騒動の中、オーディションで主演の座を射止め、ようやくスターダムへ上りはじめたマキシーン。ところが、6年前にマキシーンの身に起こった猟奇的殺人事件のトラウマを知る謎の人物が彼女に近づき始めて…。

唯一無二の個性が光るミア・ゴスのパワフルな演技が元気をくれる!
『X エックス』、『Pearl パール』に続く3部作の完結編となる本作。監督・脚本を務めるのは、同作で観客から大きな支持を得たタイ・ウエストだ。
シリーズ1作目『X エックス』は、1979年のテキサスを舞台に、映画撮影のために農場を訪れた6人の若者が、史上最高齢の殺人夫婦パールとハワードに遭遇するホラー作品。主演のミア・ゴスは、ポルノ映画スターを目指すマキシーンと、殺人鬼パールの一人二役を演じた。そして2作目の『Pearl パール』は『X エックス』の60年前を描いた前日譚で、ミア・ゴスは主演を務め、若かりし日のパールを演じているほか、脚本と製作総指揮にも名を連ねている。
そして3作目となる本作で再び主人公のマキシーンを演じたミア・ゴス。彼女はラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』(2014年)やルカ・グァダニーノ監督の『サスペリア』(2018年)などに出演し、印象的なルックスで圧倒的な存在感を放っていた。
ミア・ゴスは“眉毛が超絶薄いのにキュート”なのが特徴で、あえてメイクで眉毛を描き足さないところが好きという人も多い。そしてその眉毛の薄さが、不気味な役やミステリアスな役に説得力を与えているような気もする。

最近だと、“観光客は罪を犯しても大金を払えば自分のクローンを作ることができ、そのクローンを身代わりにすればその罪から逃れられる”という奇妙なルールがある高級リゾート地の孤島を舞台にした『インフィニティ・プール』(2024年)でのミアの怪演が印象に残っている。ミアはスランプに陥った作家の男を奇妙で恐ろしい世界に誘う女・ガビを演じていて、後半のガビのヤバさがこの映画をより一層おもしろい作品に昇華させていた。
そして『MaXXXine マキシーン』では、凄惨な事件から一人逃げ延びたあとポルノ界で人気を極め、ハリウッドスターとして有名になることを夢見るマキシーンを生き生きと演じている。

普通ならば、ホラー映画のヒロインが危機的状況に陥るとハラハラするが、マキシーンは過去に殺人鬼パールから逃げ延びているため、連続殺人鬼と対峙しても絶対に反撃できるだろうと安心して観ていられた。
また、劇中の映画のオーディションで「私はスター」とクールに言い放つ姿がカッコよく、“ウジウジしていて自分に自信がないヒロイン”ではないところもマキシーンの魅力に感じた。自分の夢を邪魔する人間を徹底的に許さない強気な姿勢の彼女を見ていると、不思議と元気が出てくるのだ。

ケヴィン・ベーコンやリリー・コリンズなど豪華俳優陣が物語を彩るキャラクターを好演
物語は、『X エックス』で描かれたテキサスでの凄惨な猟奇的殺人事件の現場から、ただ一人逃げのびた主人公・マキシーンの6年後からはじまる。ポルノ界で人気を極めたマキシーンは、ようやく主演の座を射止め“ハリウッドスター”への夢が現実になるときが近づく。
ところが彼女の夢を阻むように、女優仲間が連続殺人鬼ナイト・ストーカーの餌食になってしまい、ここから物語は一気に不穏な展開に。
ちなみに、ナイト・ストーカーは1985年に全米を震撼させた実在の連続殺人鬼。同じ年代を舞台にした本作でナイト・ストーカーが登場するシーンはリアリティがあってゾクゾクする。
キャストには、ホラー映画を心から愛し、マキシーンを主演に大抜擢する女性映画監督のエリザベスを『TENET テネット』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのエリザベス・デビッキ、エリザベス・デビッキ演じる監督の作品で“スクリームクィーン”として人気を博す女優のモリーをNetflixの超人気ドラマ『エミリー、パリへ行く』シリーズのリリー・コリンズ、6年前にマキシーンの身に起きた猟奇的殺人事件の真相を知る謎の私立探偵ジョンを名優ケヴィン・ベーコンが演じている。



また、マキシーンの女優仲間の一人をシンガーソングライターのホールジー、マキシーンの友人レオンをシンガーソングライターのモーゼス・サムニーが演じている。豪華なキャスト陣がそれぞれ個性的な役を好演し、物語に彩りを与えている。
個人的に好きだったのは、マキシーンをホラー映画の主演に抜擢した監督のエリザベスとマキシーンの関係性。二人の間には妙な緊張感があり、そこに彼女たちの“映画にかける本気の思い”のようなものを感じられてグッときてしまった。


80年代にタイムスリップしたような気分が味わえる作品
過去作の話に戻ると、『X エックス』は劇中でポルノ映画を撮影するシーンが不快で正直あまり好きではなかった。けれど『Pearl パール』はミア・ゴスの振り切った演技に引き込まれ、美しかったパールが狂気に目覚める瞬間も興味深く、わりと好きな作品だった。
そして本作では、『X エックス』で描かれていたマキシーンの過去が伏線になっている場面があり、シリーズファンを楽しませようというタイ・ウエスト監督の心意気が感じられて、三部作の中で一番好みの作品だった。
また、ハリウッド大通りを封鎖して撮影を行ったというシーンでは、当時ハリウッドにあったストリップ店や車、当時のファッションを着て歩く通行人など、80年代のロサンゼルスの再現度が高く、まるで自分がそのころにタイムスリップしたような気分を味わえたのもよかった。
80年代のファッションやヘアメイク、当時のハリウッドの雰囲気や映画作りの裏側など、ホラー以外にも楽しめる要素のたくさんある本作。ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。


文=奥村百恵
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