熱中症は子どものほうがなりやすい!?スポーツの現場でも注目される熱中症の基本&最新対策

東京ウォーカー(全国版)

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2025年の夏は警報級の暑さが予想されているようだが、夏休みには屋外でのイベントやスポーツなど、どうしても炎天下でも過ごす機会が多くなりがち。そこで心配なのが、「熱中症」だ。環境省が毎日のように「熱中症警戒アラート」を発表しているなか、大人が気をつけていてもなってしまうこの熱中症。実は子どものほうがなりやすいということは知っているだろうか?

2025年6月26日、Jリーグ・名古屋グランパスとパートナー契約を結ぶ大正製薬が、名古屋グランパスの育成組織であるグランパスアカデミーのコーチとトレーナーに向けた勉強会を開催した。今回の記事では、そこでの内容をもとにして、熱中症が起こるメカニズムや熱中症対策の基本、さらには最新の熱中症対策についても紹介していきたい。

熱中症はときに命にも関わる。絶対に軽視することなく注意して過ごしたい


子どもの熱中症リスクゼロを目指す勉強会を実施

名古屋グランパスのクラブハウス内で開催されたこの勉強会は、熱中症のリスクゼロを呼びかけ、研究結果に基づいた情報提供を行う大正製薬と、プロサッカー選手の育成を行う名古屋グランパスアカデミーによる共催。12歳以下(U-12)の小学生~18歳以下(U-18)の高校生が所属するグランパスアカデミーの子どもたちを熱中症から守るべく、同アカデミーのコーチやトレーナー、スタッフを集め、メカニズムや対策について学んだ。

勉強会の講師を務めたのは、大正製薬 商品開発部の山本さん(C)KADOKAWA


今回の勉強会に先んじてグランパスアカデミーは、所属する子どもたちの保護者にアンケートを実施。その結果、保護者の約9割が「子どもの熱中症リスクを感じている」と回答したという。また、約半数の保護者は、「過去に子どもが熱中症(軽度を含む)を実際に発症したことがある」と回答した。

「名古屋グランパスアカデミー」のコーチ、トレーナー、スタッフら約20人が勉強会に参加した(C)KADOKAWA


プロサッカーの現場を知る名古屋グランパスも、そこで戦う選手を育成するうえでその危険性を重く考え、本気で対策に取り組んでいる「熱中症」。具体的に、「熱中症」とはどんな病気なのか。そして予防するには、どんな対策が必要なのだろうか。

熱中症のメカニズムとは?なぜ子どもは熱中症になりやすい?

そもそも「熱中症」とは、高温多湿な環境下で体温調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまう状態のこと。体温が上昇し、水分や塩分のバランスが崩れることで、めまいや立ちくらみ、筋肉痛、頭痛、吐き気、意識障害などの症状を引き起こす。重症化すると後遺症が出るばかりか、命に関わることもあるため、適切な予防と対策が重要だ。

気象庁による3カ月予報を見てもわかる通り、今年の夏は日本全国で平年より気温が高くなると予想されている出典:気象庁 2025年暖候期予報


熱中症は、「環境」「からだ」「行動」の3要素によって引き起こされるという。人間は体温が上がると、汗や皮膚温度で調整しようとする。しかしながら、昨今の夏のように気温や湿度が高すぎると、この汗や皮膚温度を通じて体内の熱を逃すことができなくなってしまう。そこに、体調が悪いなどの「からだ」の要因と、激しい運動や炎天下での作業といった「行動」の要因が合わさって、熱中症は引き起こされる。

大人よりも子どもの方が熱中症になりやすい


また、子どもは大人よりも熱中症になりやすいと言われている。その理由は大きく3つある。1つは、「体温が上がりやすい」こと。体の体積あたりの表面積を比べたとき、その割合は大人よりも子どものほうが大きくなる。体重の割に表面積が大きい、と考えるとわかりやすいかもしれない。これによって、外の熱を体の表面から吸収しやすくなってしまう。そして、「汗をかく能力が未発達」なこと。まだ汗をかくことに慣れていないため、うまく汗をかけずに体温がこもりやすい。最後は、「地面からの照り返し(輻射熱)を受けやすい」こと。身長が低い子どもは地面からの照り返しを受けやすく、大人よりも体感温度が2℃ほど高いと言われている。

黄色の体積1立法センチあたりの表面積は2平方センチだが、緑色の体積(=1立法センチ)あたりの表面積は6平方センチにもなる(C)大正製薬株式会社


こういった理由から、子どものほうが熱中症になりやすい。加えて、子どもは自分の体調の変化に気づきにくいということも忘れてはいけない。大人がしっかりと子どもの熱中症対策をして、様子を見ていることが大切なのだ。

【熱中症対策】基本の“キ”

誰でも、どこでも発症する危険性がある「熱中症」。だが、しっかりと予防・対策をすれば防げる病気でもある。ここでは、熱中症対策の具体例を見ていこう。

対策その1/暑さに負けない体をつくる

熱中症対策には、こまめな水分補給が大切だ


熱中症予防に最も大切なのが「暑さに負けない体をつくる」こと。熱中症対策には、水分と塩分を取り入れることが効果的だ。まずは、こまめな水分補給をすること。熱中症を発症すると、喉の渇きを感じにくくなる。そうなってしまう前に、喉が渇いていなくても水分を摂ることを心掛けよう。また、水分だけでなく塩分の摂取も忘れてはいけない。大量に汗をかくと、水分だけでなく塩分も体から失われていく。普段の食事で塩分を適度に摂取するほか、激しい運動などの前後には、塩分タブレットやキャンディーなどを口に入れておくといいだろう。

また、同時に重視すべきなのが、丈夫な体をつくることだ。睡眠をしっかりとって体調を整えたり、バランスのいい食事を摂ったりすることで、暑さに負けない丈夫な体を目指そう。

熱中症対策その2/“暑さ指数”を参考にして環境を整える

市販の冷却グッズなどもうまく活用しよう


夏の暑さは、生活の工夫や心掛けでやわらげることができる。体温が上がり過ぎないよう、自分で環境を整えて対策することも1つの手だ。

そこでまず気にかけてほしいのが、環境省が発表する「暑さ指数(WBGT)」だ。暑さ指数とは、人間の熱バランスに影響が大きい「気温」「湿度」「輻射熱」を取り入れた温度指数のこと。この暑さ指数が28を超えると、熱中症患者が急増するというデータがある。この暑さ指数を事前に調べ、その時期・その地域の熱中症リスクがどのくらいあるかを把握しておくことは、熱中症対策をするうえで効果的だ。全国の暑さ指数は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で見ることができるので、ぜひ熱中症対策に活用してほしい。

暑さ指数(WBGT)と熱中症患者発生率の関係を表したグラフ出典:環境省ホームページ


そして「環境を整えること」とは、すなわち温度や湿度を適切に保つことだ。室内にいる場合には、エアコンなどを利用して適度に室温を下げよう。屋外の場合は、風通しのいい衣服を着用し、帽子や日傘を利用して直射日光を避けることも重要だ。さらに最近では、ネッククーラーやハンディファン、冷感スプレーといった冷却グッズも多く市販されている。こういったものも有効に活用しよう。

熱中症対策その3/“深部体温”を下げる

熱中症対策では、深部体温を下げることが大切(C)N.G.E.


外が暑いとわかっていても、屋外で活動しなければならないときもある。エアコンが効いていない室内での作業やスポーツなども同様だろう。そんな中では、ここまでに紹介した対策を講じても体温が上がってしまい、熱中症を発症してしまうことがある。それほどまでに現代の日本の暑さは危険なのだ。

過酷な環境下で熱中症を防ぐには、「深部体温」を下げることも重要だ。人の体温は、体の中心から離れた手や脚など、外部からの影響を受けやすい「皮膚温」と、脳や臓器といった体の中心機能を守るために一定に保たれる「深部体温」がある。「深部体温」は外環境からの影響を受けにくい反面、一度上がってしまうと外部からの冷却ではなかなか下げることができない。熱中症になった際は、この深部体温が上昇してしまっており、脳や消化器官、肝臓などに影響が出ている可能性が高い。これによって意識が朦朧としたり、頭痛、吐き気、体のだるさ(倦怠感)などの症状が出たりする。

では、深部体温を下げるにはいったいどうすればいいのだろうか。そこで昨今注目されているのが、「アイススラリー」だ。

注目!最新の熱中症対策「アイススラリー」

深部体温を下げる効果が期待できる「アイススラリー」(C)大正製薬株式会社


「アイススラリー」とは、液体と微細な氷の粒が混ざったシャーベット状の飲料のこと。通常の氷よりも結晶が小さいのが特徴で、流動性をもっているため高い冷却効果を発揮する。飲用すれば短時間で効率的に深部体温を下げられるといい、最新の熱中症対策として注目を集めている。

アイススラリーのイメージ。細かい氷の粒子が液体に分散している(C)大正製薬株式会社

アイススラリーと凍ったスポーツドリンクなどの清涼飲料水(糖酸液)を顕微鏡で見ると、氷の粒子の大きさの違いが一目瞭然(C)大正製薬株式会社


また、アイススラリーを用いて深部体温を下げることで、睡眠の質の向上や、運動パフォーマンスの向上にも効果が期待できるとされている。

広島大学の長谷川博教授と大正製薬が共同で行った研究では、アイススラリーを摂取すると、暑く過酷な環境下でも深部体温の上昇が抑制され、注意力を維持できることなどが科学的に確認された。

アイススラリー摂取による体温変化を調査したサーモグラフィ画像撮影協力:広島大学 長谷川教授


1993年にカタール・ドーハで行われたサッカーW杯アジア最終予選の日本対イラク戦で、終了間際の同点ゴールを許した日本代表がW杯初出場を逃した「ドーハの悲劇」に衝撃を受けたという長谷川教授。「なぜ最後にバテてしまったのか?」という疑問から運動生理学の道へ進み、現在はスポーツ環境生理学・適応学などを研究している。2015年からは国立スポーツ科学センターの研究員を務めるほか、2017年の国際サッカーユース大会では、U-17日本代表チームの身体冷却などを担当。その後もテニスやセーリングの日本代表チーム、U-23サッカー日本代表の選手たちをサポートするなど、長谷川教授は日本における熱中症予防や暑さ対策、身体冷却、体温調節、スポーツパフォーマンス研究における第一人者だ。

そんな長谷川教授も熱中症対策の1つとしてすすめているのが、アイススラリーなのだ。アイススラリーは、「労働安全衛生規則」や日本サッカー協会の「熱中症対策ガイドライン」にも記載され、熱中症対策に有効な手段として推奨されている。また、2023年の夏の甲子園では、慶應義塾高校野球部がベンチでアイススラリーを飲む姿も話題となった。

市販のアイススラリーはパウチに入った状態で販売されていることが多い(C)N.G.E.


現在さまざまなメーカーがアイススラリー関連商品を販売しており、スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどで手軽に購入できる。多くの場合は、ゼリー飲料のようなパウチに入った状態で売られているので探してみよう。なお冷却効果が高いため、適量を超えて飲用すると体を冷やしすぎてしまう可能性があるそうなのでそこは注意しよう。

「名古屋グランパスアカデミー」での勉強会では、アイススラリー商品の試飲も行われた(C)KADOKAWA


今年も酷暑が長く続くことが予想される日本。日頃の熱中症対策を忘れずに、健康に夏を乗り切ろう!

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取材・文=民田瑞歩

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