コーヒーで旅する日本/関東編|ゆったり過ごせる空間づくりを大切に。夫婦で迎える“通える”コーヒー&焼き菓子の店「Coffee and Baked Ura」

東京ウォーカー(全国版)

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刺激にあふれていて、常に先端のモノ・コトが集まっている、日本一の大都市・東京。また、東京近郊の街にもそれぞれに個性があり、その分だけ衣食住を彩る店も多数。コーヒーショップも然りだ。

「暮らしやすい街にはいいコーヒー屋さんがある」
そのことを実感できるコーヒーのバトンリレーの旅へ。

淡い青色のドアが目印。ひと目でカフェとわかるよう、窓辺に焙煎機を置く

第5回は神奈川県横浜市にある「Coffee and Baked Ura(ウラ)」。深浦さん夫婦が営むカフェは“通えるお店”がコンセプトで、特に子連れで利用しやすくファミリー層からの支持が厚い。ご主人はハンドドリップの日本チャンピオン、奥様は有名店での経験を活かしてお菓子づくりを行うなど本格的なコーヒーと焼き菓子が味わえるのも魅力。まずは開業までのエピソードを聞いてみた。

【写真】深浦哲也さんがコーヒーを担当し、焼き菓子は理恵さんが手がけている

Profile|深浦哲也(ふかうら・てつや)・理恵(りえ)
哲也さんは東京都大田区生まれ。理恵さんは神奈川県横浜市生まれ。哲也さんは大学卒業後、楽器店に就職。社会経験を積むなかで自分のカフェを持つという夢を抱き、転職。有名カフェで店長を勤め、バリスタとしての技術、店の経営について学んだ。カフェ勤務中にはバリスタの日本一を決める「SCAJ主催 JHDC(ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ)」に出場。2018年大会でハンドドリップの日本チャンピオンに輝き、その技術を確固たるものに。理恵さんはカナダ留学中に通ったコーヒースタンドに居心地のよさを感じ、帰国後にはコーヒースタンドでバリスタをしながらメニュー開発を担当。もともと2人は鎌倉にあったレストランに勤務していた同僚で、そこで出会い、結婚。2023年10月に夫婦で「Coffee and Baked Ura」を開業。現在3歳の娘さんの子育てに奮闘しながらカフェを営んでいる。

日本一の称号で、夢は大きく前進

哲也さんはSCAJ認定コーヒーマイスターの資格も持つ

コーヒーを担当するのは哲也さん。開業前にはレストランやカフェで料理や接客をしていたが、「コーヒーをしっかりやりたい」とコーヒー専門店でバリスタとしての経験を積むことに。

「開業前に勤めた『Cafe Sucre(シュクレ)』はハンドドリップの日本チャンピオンがいる店で、コーヒーを学ぶ場所として間違いないと思いました。入社後すぐ思わぬ形で店長を任せられたのですが、コーヒーの技術をイチから学ぶ貴重な経験に。また周りのバリスタが大会に出場していて、そんな人たちに触発され、大会への参加を決意。コーヒーの技術をもっと高めたいと意気込んだものの、2016年、2017年は右も左もわからないまま予選で敗退し、苦しんだ時期もありました。それから抽出方法を徹底的に研究し、とことん勝ちにこだわった結果、2018年、3回目の出場で初めて決勝に進出し、そして優勝することができました」

3回目でいざ決勝進出となると「出るからには優勝したい」と気持ちがより強くなっていったという哲也さん。日々の努力の積み重ねが生んだ日本チャンピオンという称号は彼にとって大きな自信となり、開業の夢を大きく前進させた。

コーヒーは浅煎り〜深煎りまで幅広い。無料でデカフェにできる

「Cafe Sucre」で特にハンドドリップの技術を高めた哲也さん。4年勤務した後、カリフォルニア発のスペシャルティコーヒー専門店「VERVE COFFEE ROASTERS(ヴァーヴ)」に入る。

「『Cafe Sucre』ではおもに技術面で大きく成長できました。『VERVE COFFEE ROASTERS』でも店長をしていましたが、管理業務がメインで店舗マネージャーのような立場。ここでは現場よりもおもに経営に関する業務がメインでした。店の規模が大きく、とにかく忙しいなかでしたが経営について勉強できたので、自分の店を持った今もその経験が活かせています」

開発経験を活かした素朴で優しい焼き菓子レシピ

ケーキやクッキーなど子どもから大人まで食べやすい焼き菓子が並ぶ。すべて理恵さんの手作り

焼き菓子を作るのは理恵さん。「Good People & Good Coffee」「パンとエスプレッソ」「TINTO COFFEE(ティント)」と有名なコーヒースタンドで約10年、バリスタとしても腕を磨いていった。そんな理恵さんはそれぞれの有名店でコーヒーのお供に欠かせない焼き菓子づくりをしており、新商品の開発にも携わっていた人物だ。

「特に『TINTO COFFEE』ではメニュー開発を自由にやらせてもらったので、レシピを楽しく考えながら同時にお菓子づくりを学べた、とてもよい経験でした。実はそこで考えたオリジナルレシピを密かにため込んでいたんです」

軽い食感の焼き菓子はテイクアウトも可能。素朴で食材の風味はしっかりと感じる

「焼き菓子はシンプルに素材を活かすことで、毎日食べても飽きない味を目指しています。お酒やスパイスをほんのり効かせたり、旬の果物を取り入れたり、どれも自信作なのでぜひ食べてほしいです」

理恵さんが手がける焼き菓子はパウンドケーキやバナナブレッド(各500円)など種類豊富。素朴で甘すぎない味わいなので、おやつとしてはもちろん、朝食代わりにもなるのでモーニング(8時〜10時)の日替わりコーヒー(300円)と一緒に堪能するのもおすすめだ。

トイレにおむつ替えシートがあるなど子連れも安心。キッズメニュー(300円)も用意

自身も子どもを持つ親として子連れでも安心して通える店づくりを行っている。ベビーカーでも入りやすいように席間を広くとった優しい空間。また、おもちゃや絵本を置き、子どもがぐずっても安心してゆっくり過ごせるようにと、うれしい心遣いをしてくれている。

自家焙煎と確かな抽出で思い通りの味わいに

【写真】豆の水分量やしわの伸び、香りなど細かく見極め、微調整しながら焼き上げる

自分の思い描く味を出すために自家焙煎が最適と考え、「フジローヤル 半熱風式3キロ」で焙煎を行っている。焙煎度は浅煎りから深煎りまでレンジが広く、どれもバランスがよくすっきりとした味わいを重視。

酸味や苦味を楽しめるが、後味はすっきりとして「また飲みたい」と思える

「焙煎は抽出の理論と似ていて、焙煎の火入れと抽出の味の引き出し方がリンクするんです。たとえば浅煎りだと焙煎の火入れは浅く、抽出ではさらっと入れればフルーティーな酸味が引き出せる。まずは出したい味を考え、焙煎の段階から調整しておくと抽出ではその味を出すための、お湯の注ぎ方といったアプローチがしやすくなります。自家焙煎にこだわったのは、仮にほかの焙煎士が焼いた豆だと、どんな味にしたいのか、どう淹れるのが正解かがわかりにくく、思うようなコーヒーにならないかもと考えたからです」

ドリッパーやカップなどは開業前から愛用している「ORIGAMI」で統一

豆は「Uraブレンド」(150グラム1300円〜)などを販売する

抽出は豆の状態や膨らみ方に合わせて注ぎ方を変え、焙煎の段階から出したい味に調整していく。

「ドリッパーは昔から愛用している『ORIGAMI』です。お湯の抜けがよく、飲みやすさを出すのに最適。注ぎのコントロールが味に素直に反映されるのが大きなメリットです。逆に言うとブレやすいのですが、それでも豆ごとにベストな抽出ができると考えているので、自分の淹れ方に一番合っていると思いますね」

「チーズケーキ」(600円)。コーヒーは「Uraブレンド」(500円)

ブラジル産とエチオピア産の中煎りをブレンドした「Uraブレンド」が看板商品。哲也さんが思い描くバランス感、すっきり感とともに楽しめる一杯だ。ほかには季節のブレンド、3種類のシングルオリジン、デカフェも用意。

理恵さん自慢の「チーズケーキ」はサブレ生地に、ヨーグルトとチーズのさわやかな味わいにハマる一品。焼き菓子とのベストな組み合わせに思わずコーヒーが進むが、おかわりをしなくてもいいように量を多めに提供してくれているのもうれしいポイントだ。

「男女どちらも入りやすいお店に」という想いを表現した看板。店は白楽駅から徒歩5分ほど

今回出会った深浦さん夫婦から優しさ、朗らかな雰囲気を存分に感じ、心がほっと落ち着いた。コーヒーと焼き菓子の味わいは本格的ながら、それも「心地よく過ごすためのひとつの要素です」と教えてくれた2人。そんな2人がつくり上げた特別な空間で、とても有意義な時間を満喫できそうだ。

「Coffee and Baked Ura」レコメンドのコーヒーショップは「coffee stand 早川亭」

「中野区・東中野にある『coffee stand 早川亭』は、地域に愛される自家焙煎のコーヒースタンド。訪れた人にゆったり過ごしてほしいと、空間づくりを第一に考えるすてきなお店です。心地よく過ごしてもらうためのひとつの要素がコーヒーという店主の早川さんの考えは、自分たちの店とも重なり、いいなと思えます」(店主 深浦哲也さん・理恵さん)

【「Coffee and Baked Ura」のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 半熱風3キロ
●抽出/ハンドドリップ(ORIGAMI)、エスプレッソマシン(ECM シンクロニカ)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/150グラム1300円〜

取材・文/GAKU
撮影/大野博之(FAKE.)

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