就職後も競技を続ける女子学生は1%…仕事とスポーツを両立できるキャリアモデル確立へ向け、SMBC女子バスケチームの挑戦がスタート

東京ウォーカー(全国版)

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「就職後もプロ・社会人アスリートとして競技を続ける予定」と答えた女子学生アスリートは、わずか1%。この数字は、三井住友銀行が「ジェンダーギャップやセカンドキャリア不安による若年層アスリートのスポーツ離れ」をテーマに行った調査で明らかになったものだ。「スポーツは部活で終わり」という日本社会における固定観念を変えようと、挑戦を始めた女子バスケットボールチームがいる。

発表会に登壇し、ガッツポーズを見せるSMBC TOKYO SOLUAの選手たち。新ユニフォームはプロジェクトに賛同するアディダス ジャパンが手がけた


三井住友銀行の女子バスケットボール部を母体とする「SMBC TOKYO SOLUA(ソルーア)」。2025年から新たに掲げたチーム名の「SOLUA」は、ポルトガル語で太陽を意味する「SOL」と月を意味する「LUA」を合わせた造語で、「仕事とスポーツの両立」をコンセプトとしている。2025年10月に開幕する第27回Wリーグ(2025-26シーズン)への参戦という、大きな一歩を踏み出したSMBC TOKYO SOLUAだが、活躍を目指す場はコート上だけにとどまらない。7月17日には都内で発表会が開催され、三井住友銀行 頭取 CEOの福留朗裕さんが登壇。「社員やファンのみなさまに愛され、応援されるためには、バスケで強いだけでなく、女子スポーツの発展に寄与し、社会に貢献できるチームでなければならないと思っています。そうした思いから、真に仕事とスポーツを両立できるキャリアモデルの確立に、取り組んでいくことにしました」と宣言した。

三井住友銀行 頭取 CEOの福留朗裕さんは「Wリーグへの加入を心からうれしく思っておりますし、同時に大変ワクワクしています」と期待を寄せる


発表会は2部構成で行われ、第1部でSMBC TOKYO SOLUAの新体制や新ユニフォームなどを発表。第2部では「SOLUACTION!プロジェクト」の説明に続き、トークショーを実施。「日本の女性アスリートの未来」をテーマに、女子100メートルハードル元日本記録保持者の寺田明日香さん、男子400メートルハードル日本記録保持者の為末大さん、SMBC TOKYO SOLUAの平田彩乃選手らがトークを繰り広げた。

「スポーツは部活で終わり」固定観念はなぜ生まれる?

本記事では初めに、三井住友銀行が行った「ジェンダーギャップやセカンドキャリア不安による若年層アスリートのスポーツ離れ」の調査結果をもとに、女子学生アスリートが置かれている現状を詳しく見ていくことにする。記事の冒頭で「就職後もプロ・社会人アスリートとして競技を続ける予定」と答えた女子学生アスリートがわずか1%という衝撃的な数字を紹介したが、同じ質問に「続ける」と回答した男子は10%。男女ともに、就職後の継続意欲が低いことがわかるが、男女で開きがある点も注目したいポイントだ。

【図】女子はたった1パーセント…多くの学生が競技継続を断念している実態が明らかに


トークショーの中で寺田さんは「私自身は積極的にアスリートの道を突っ走ってきた人間ですが、いろいろな節目でスポーツから離れてしまった仲間たちをたくさん見てきました。何かひとつを選ばなければならない、こうでなければならないという固定観念が邪魔をしていた部分もあるかと思います」とコメント。為末さんは「こんなに男女で大きな開きがあるとはショックですね」と驚きつつ、「男子の場合はロールモデルがあって『実業団に行くとこうか』『プロに行くとこうか』とイメージしやすく、複数の選択肢から選ぶ感じがありますが、残念ながら女性アスリートはロールモデルが今のところなかった」と指摘した。

現役引退後、結婚・大学進学・出産・競技転向を経て再復帰を果たした、陸上選手の寺田明日香さん

元陸上選手で現在はスポーツ・教育事業を手がけるDeportare Partnersの代表を務めている為末大さん


一方、三井住友銀行で総合職として働きながら、SMBC TOKYO SOLUAの選手として活動している平田さんも、もともと競技を継続する気はなかったそうで「今回たまたまSOLUAを立ち上げることになり、挑戦させていただくことに。私の場合は稀なケースだと思います」と説明。さらに、調査で示された男女差について「納得」だと語り、「就職する時に男子の同級生はプロを目指すとか、競技を続ける選択をする人も多かったのですが、女子の同期で競技を続けた人はいなかった」と振り返った。

三井住友銀行で総合職として働きながら、 SMBC TOKYO SOLUAの現役選手として活躍中の平田彩乃さん


今回の調査では「女子学生アスリートの81%が結婚、出産、育児を理由に社会人での競技継続を断念している」というデータも示されている。男性に比べ、女性のほうがライフイベントに影響を受けやすい現実は、どうしても存在する。結婚・出産を経て現役復帰を果たした寺田さんは、「周りの目」による影響も大きいのではないかとの考えを述べ、「私も復帰した時に、母親だから家事育児に専念しろという声があった」と回想。「前例がないと周りからの攻撃もある。そういう声がなくなっていけばいいなと思います」と願いを込めた。

【図】女子学生アスリートが社会人で競技を続けない理由


多くの学生アスリートが社会人で競技を続けない背景には、収入面への不安もある。「競技者として引退したあとの収入やキャリアが心配」と答えた割合は、男子75.3%、女子65.5%といずれも高い。また、「女子学生アスリートの75%が周囲の反対で社会人での競技継続を断念している」というデータもあり、本人のみならず家族など周囲の人々も、ライフステージの変化や収入面に不安を感じている状況がうかがえる。

【図】学生アスリートが社会人で競技を続けない理由


ここまでネガティブなデータが続いたが、一方で「女子学生アスリートの74%が引退後も働きながら競技を続けたいと思っている」「女子学生アスリートの91%が競技と仕事の両立はかっこいいと思っている」というデータも出ている。心の奥底では競技継続を願いながらも、理想と現実のギャップに直面し、断念してしまうケースが多く存在するのだろう。

【図】学生アスリートの本音

トークショー参加者によるフォトセッション。左から高市邦仁さん、寺田明日香さん、為末大さん、平田彩乃さん


「スポーツを通じて女性や次世代の活躍、成長を応援」プロジェクトが始動

ここからは、こうした現状を打開すべく動き出したSMBC TOKYO SOLUAおよび「SOLUACTION!プロジェクト」の取り組みを紹介したい。目標とするのは、女性アスリートが仕事とスポーツを両立できるキャリアモデルを確立し、普及させること。「競技を続けるか、あきらめて仕事に就くか」という二者択一ではなく、学生アスリートが複数の選択肢を持つことができる未来を目指していく。

ロールモデルとしての役割に期待がかかる、SMBC TOKYO SOLUAの選手たち。しかし、その挑戦は簡単なものではない。三井住友銀行 社会的価値創造推進部長の高市邦仁さんは「本当に難しい挑戦だと捉えています。単に日中仕事をして、夕方以降練習するというだけの話ではない」と指摘。「練習も生活も仕事も、時にはデータも活用して科学的に見るべきところは見て、より効果的にバスケに取り組んでいく」と説明した。

続けて高市さんは「将来抱える不安の解消が大事」と引退後のキャリア形成にも言及し、「SMBCグループの中で現役時代から仕事に励んでいただいて、将来に向けて引き出しをいくつか持っていただくべきだと思っています。引退後は相談しながら、適正を見て次のキャリアにつなげていく。この取り組みは人事部を含め、SMBCグループにとって非常に大きなチャレンジだと捉えております」と語った。

三井住友銀行 社会的価値創造推進部長の高市邦仁さん


さらに「SOLUACTION!プロジェクト」では、プロジェクトに賛同するアディダス ジャパンと連携し、幅広い視点で社会貢献活動に取り組んでいく。具体的には、女性アスリートを取り巻く課題に関するアスリート対談や、アスリートに向けた金融経済教育の提供などに加え、さまざまなイベントも実施予定とのこと。女子中学生を対象にスポーツをするうえでの女性特有の体調についてレクチャーするイベントや、三井住友銀行が運営する子どものための施設「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」を活用したユニフォーム製作などの体験イベント、オフィス街にバスケットゴールを設置し、ゴール数に応じて子どもや女性に着目した寄付を行うチャリティイベントなどを検討中だという。高市さんは「スポーツを通じて女性や次世代の活躍、成長を応援するべく動いていきたい」と話していた。

インターハイ会場の岡山などに屋外広告を掲出

最後に、今回の調査で明らかになった課題を社会に投げかけ、取り組みを広く周知することを目的とした屋外広告についても触れておきたい。広告は岡山駅で2025年7月25日から8月21日(木)まで、渋谷駅で8月4日から8月10日(日)まで掲出される。広告デザインには、多くの女子アスリートが学生時代で競技を引退していることを示す調査データを採用。岡山駅の広告には「高校最後の試合は、人生最後の試合なのだろうか?」といった問いかけを、渋谷駅の広告には「女性アスリートは、叶わない夢じゃない」というメッセージを、合わせて掲載している。

岡山駅では7月25日~8月21日(木)まで掲出されている


岡山駅と渋谷駅という掲出場所にも、明確な理由がある。岡山県岡山市では2025年7月27日に「令和7年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」が開幕。この夏、女子バスケットボール部に所属する学生が多く利用する岡山駅に広告を掲出することで、当事者である彼女たちに考えるきっかけや勇気を与えることを目的としている。一方の渋谷駅も、学生アスリートの目につきやすい場所だという点に加え、SMBCグループが社会に投げかけた本気のメッセージを、幅広い層の人々に届ける狙いがある。駅を利用する際にこれらの広告を目にしたら、女性アスリートを取り巻く課題について考えてみてはいかがだろう。

渋谷駅では8月4日~8月10日(日)まで掲出されている

当事者に届けたい思いから掲出先を渋谷駅・岡山駅に決定したという


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