『かいけつゾロリ』30周年!原ゆたか「僕はいつまでも“プロの小学生”でいたい」

東京ウォーカー(全国版)

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1987年からはじまった「かいけつゾロリ」は、今年で30周年。これを読んでいる方の多くが、一度は幼いころに「かいけつゾロリ」を読んだことがあるのではないでしょうか。

今回は、そんな“あのころ子どもだった大人”に向けた、大人になってがんばっているいまだからこそグッとくる「かいけつゾロリ」の話を、作者である原ゆたか先生に伺ってきました。

原ゆたか氏「“あのころ子どもだった大人”たちにも、また、かいけつゾロリを思い出してもらえるとうれしい」


――30周年である今年は、新宿の駅貼り広告や「かいけつゾロリ大冒険展」など、”あのころ子どもだった大人”が、グッとくる施策を実施している印象です。そんな私たちに、あらためて「かいけつゾロリ」について教えてください。

原ゆたか氏(以下、原):一冊一冊描いているときは思わなかったんだけど、30周年です、62冊目です、とか言われるとすごい意識しちゃうよね。あんまりピンと来ていないから。

僕はずっと、子どもたちに紙の本の楽しさを知ってほしいと思って「かいけつゾロリ」を描いているんです。本が好きな子はどんなに分厚い本を渡してもどんどん先に進めていけるけど、本が苦手な子は全然読めない。

だから、「かいけつゾロリ」ではいろんな面白い仕掛けや、子どもでも分かる言葉あそびなんかを入れて、本を読む楽しさを教えてあげたいんです。

【写真を見る】記念すべき30周年、シリーズ通算62冊目となる「かいけつゾロリのちていたんけん」[C] 原ゆたか/ポプラ社


原:元々、ゾロリは”悪の水戸黄門”をやろうと思っていて、ゾロリが黄門様、イシシとノシシが助さん角さんをモチーフにして作ったの。それで、ゾロリが各地の悪代官に会って、いろんな悪だくみをするけど失敗するっていうストーリーで、当初は5巻とか10巻で終わる予定だったんです。でも、子どもたちと、“あのころ子どもだった大人”のみんなのおかげで30年も続けてこられました。

構想段階から、ゾロリにはあんまり戦わせたくないなって思っていて。僕らの世代でも「月光仮面」とかはいましたが、現代は戦闘ものが多すぎる。低学年向けのものでも、女の子向けのコンテンツも戦闘ものが当たり前のようにあって、敵をどう倒すかみたいな話になっちゃっていて。もちろん否定はしないけど、ちょっと殺伐としすぎちゃっているなと思っています。

だからゾロリも、最初の「かいけつゾロリのドラゴンたいじ」でアーサーを倒そうと思って剣を持っていったくらいで、あれ以降は相手を倒すっていうより、悪者もがんばって生きてるという見せかたにして、最後はみんなが幸せになるか、反省するくらいにとどめています。

あとは、オナラを使って戦わないで逃げたり、おやじギャグで敵を凍らせたりして、なるべく戦わなくて済むようなストーリーを作っています。

原ゆたか氏「僕はいつまでも子どもの味方でいたい、“プロの小学生”でいたいと思っています」


原:あのころって、おならとかおやじギャグがすごく面白かった時代ですよね。でも、大人たちからは下品だとは言われちゃったりして。1000円近くする本で、大人がお財布を持っているとどうしても元を取ろうとして、教育のため、勉強のためになるような本を読ませようとしちゃう。

僕は、そういうのはつまらないなって思っていて、それよりも子どもたちにはあり余るエネルギーとともに元気で楽しくやってほしいなと思って「かいけつゾロリ」を描いているんです。そういう意味で僕はいつまでも子どもの味方でいたい、“プロの小学生”でいたいと思っています。

――大人になると、若い子の気持ちが分からなくて困るという話もよくありますが、原先生が“プロの小学生”でいられるように意識していることはなんですか?

「アイデアが出なくて苦しいとき、ゾロリに励まされることもたくさんあります」


原:もうだいぶ年寄りの気持ちが分かるようになっちゃっているけど(笑)。でも、「かいけつゾロリ」はずっと、自分がいま子どもならこんな物語を読みたいだろうなっていうものを描いてきたんだけど、それをたくさんの子どもたちが楽しんで読んでくれるっていうことは、自分の感覚は間違ってないんだなって。

でも、一回良いテーマが思いついてそれで物語を作りはじめていても、子どもたちの気持ちになってちょっとでも分かりにくいなって思うものだったら、やり直したりもしています。

「大人になって何をするかが大切なわけで、大人になったからえらいなんてことはないの」


原:大人になると、子どもよりも未来に生きていて、もちろん生きていくうえでいろんな大変な目にもあっていて、自分が失敗したことを子どもたちに失敗してほしくないという老婆心からつい注意しちゃうこともあるけど、それが子どもたちにはお説教に感じちゃんだよね。

でも、失敗しないと分からないこともたくさんあって、反省したことがどんどん身になって成長していく部分もあって。だって、口で言って分かるなら自分も失敗してなかったはずだし(笑)。

歳って何もしなくても取っていくもので、努力なんて必要ないんだよね。大人になって何をするかが大切なわけで、大人になったから偉いなんてことはないの。

だから、なるべくそういった説教っぽいことは「かいけつゾロリ」には描かないようにしています。きっと自分が子どもなら「うるさいな」って思うだろうから。

色々言っちゃいましたが、子どもの気持ちをリアルに想像するのが、“プロの小学生”であるコツなんじゃないかなと思います。

――30年も続けられるクリエイターとして、アイデアの出しかたをお聞きしたいです。

原:いまって大人もそうだけど、子どもも情報が多様化してきて、昔の「コロコロコミック」みたいにいろんな雑多な情報が載っていて、そのたくさんの中から自分の好きなものを選んで読むっていう文化がなくなってきていて、簡単に特定の趣味に特化した本とかコンテンツが手に入る時代なんだよね。だから、みんなが食いつく共通の話題が減ってきている気がして。

でも、UFOとか恐竜とか幽霊とかはやっぱりみんな大好きなテーマで、そういうテーマを使ってみんなが喜びそうなストーリーを今までは作ってきたんだけど、それでも60巻もやっていると、もうやり尽くしちゃっていて。毎回、まだやっていないテーマはないかな、まだ行ってない場所はないかなってすごく考えながらやっています。

だから、毎回物語のテーマを決めた段階では進まなくて苦しいこともあるし、作業になるとしんどくなっちゃうんだけど、ゾロリが動き出すというか、ゾロリならこうするだろうな、こう動くだろうなっていう感じになると考えるのが楽しくなる。苦しいとき、ゾロリに励まされることもたくさんあります。

よく作家の先生が「降りてくる」って表現することがあるけど、あれって一日中そのテーマについて集中して考えていて、そうするとテレビを見たり街に出たりしたときに、そのテーマに関連したことが色々集まってくる、寄ってくるんだと思っています。

だから、テーマが決まってからは、とにかく何をするにも、例えばお風呂に入っているときも、ずっとそればっか考えているようにしているのが、僕流のアイデアの出しかたかもしれません。

あとは、その「降りてくる」ことを意図的に作るために、僕は映画が大好きなので、好きな映画を2本組み合わせたり、かっこいい映画をセコくしたり、子どもが楽しめるようにするにはどうしたらいいだろう、と考えたりしながら映画を見たりもしています。

もともと、「かいけつゾロリ」も本で映画を再現できないかなって思って作っている部分があるので、ストーリーをハリウッド式に組み立てています。『インディ・ジョーンズ』シリーズのようなハラハラドキドキストーリーだったり、『ローマの休日』のようなロマンティックなラブストーリーだったりにオマージュされて作っているものも過去にありますね。

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