10月開幕!バスケBリーグ10周年は最高の"ライブエンタメ空間”へ。島田チェアマンが語る新時代構想とは?【インタビュー】
東京ウォーカー(全国版)
2025年10月3日(金)、B1リーグがいよいよ新シーズンの幕を開ける。Bリーグ誕生から10年を迎える今シーズンは、節目の年であると同時に、来シーズンから本格始動する「B.革新」へ向けた助走のシーズンでもある。
bjリーグとNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)の2リーグ時代を経て、2016年に新たに誕生したBリーグは、コロナ禍の試練を乗り越え、近年はワールドカップでの日本代表の活躍や映画『THE FIRST SLAM DUNK』のヒットなどさまざまな追い風を受けて急成長を遂げた。いまやバスケットボールは日本のスポーツシーンで大きな存在感を放っている。
スピード感あふれる試合展開に加え、デジタルを駆使した仕組みや新しい観戦スタイルで広がるBリーグの魅力。その歩みとこれからの挑戦について、島田慎二チェアマンに話を聞いた。
Bリーグ10年の歩みと追い風が生んだ成長
――Bリーグは10周年のシーズンに入りました。これまでの歴史をどのように振り返りますか?
【島田チェアマン】Bリーグは2016年9月に開幕しました。当時は、10年後にここまでアリーナが増え、盛り上がりが広がるとは想像していませんでした。ただ、最初のインパクトは大きかった。初年度にLEDコートで開幕戦を実施したこともあり、「ひとつになった」という強い印象をファンに届けられました。そこから右肩上がりに成長を始めましたが、途中で新型コロナが直撃しました。私がチェアマンに就任したのもその頃で、2年ほどは本当に厳しい状況でした。
――そこからどのように立て直したのでしょうか?
【島田チェアマン】2022年から2023年にかけてコロナの規制が緩和され、声を出して応援できるようになったことで、やっと会場に明るさが戻ってきました。さらに沖縄でワールドカップが開催され、日本代表が注目を集めたことも大きな追い風になりました。その頃に映画『THE FIRST SLAM DUNK』のヒットも重なり、外的な要因も力になりましたね。ただ、代表や映画の影響だけでは長続きしません。Bリーグや各クラブがアリーナ建設への働きかけや入場者数の増加、事業拡大に取り組み、さらにクラブ自身も経営力を磨いてきた。その地盤があったからこそ、追い風を確実に成長へとつなげられたんです。
――代表の活躍とBリーグの努力が重なったということですね。
【島田チェアマン】まさにそうです。風が吹かなくても前に進める仕組みを整えていたから、風が吹いたときに一気に加速できました。クラブ経営の足腰が強くなり、リーグとクラブが車の両輪のようにかみ合ってきたことが、持続的な成長につながっています。
――Bリーグの存在は日本のバスケットボール全体にどのような影響を与えたと思いますか?
【島田チェアマン】一番は注目度の向上です。これまではプロバスケットボールがこんなに注目されることはありませんでした。リーグが盛り上がることで選手の年俸も上がり、海外のトップ選手を呼べるようになった。競争が生まれ、レベルアップにもつながりました。それがワールドカップの結果にも結びついたと思います。
――街中でもBリーグの存在を目にする機会が増えました。
【島田チェアマン】そうですね。昔は田臥勇太選手や五十嵐圭選手など限られた名前しか知られていませんでしたが、今では多くの選手がテレビや広告などのさまざまなメディアに登場し、駅や街角で目にするようになった。メディアに起用されるのは価値があると判断されているからで、Bリーグが社会の中で新しい位置づけを得た証拠だと思います。
――代表戦における一過性の盛り上がりにとどまらず、日常の中に根付いたわけですね。
【島田チェアマン】ええ。ワールドカップやスラムダンクが注目を集めたのは事実ですが、それが一過性で終わらず、今も続いているのは「自力」がついてきたから。これが10年で得られた大きな成果だと思います。
Bリーグの魅力と新しい挑戦
――現在のBリーグについて、一番の魅力はどこにあるとお考えですか?
【島田チェアマン】まず、バスケットボールそのものがおもしろい競技だと思います。展開が速く、試合時間も短い。盛り上がるシーンが次々に訪れるので、今の時代にとてもフィットしているんです。エンターテインメントとの相性もよく、とっつきやすさや盛り上がりやすさが大きな魅力ですね。そのうえでBリーグは、アリーナ建設への働きかけや大胆な改革など、日本のスポーツ界では前例のない取り組みに挑んでいます。固定観念にとらわれず、新しい仕掛けを次々と生み出す姿勢がリーグの強みだと思います。
――他のプロリーグ、例えばプロ野球やJリーグと比べて、違いはどこにあるのでしょうか?
【島田チェアマン】一番は時代背景ですね。プロ野球は昭和、Jリーグは平成にスタートしました。Bリーグは平成後半に始まったものの、実質的には令和時代のリーグです。先行するプロ野球やJリーグのよい点を学びつつ、時代に合った最適解を打ち出すことができる。スマホファースト、デジタルネイティブの時代に合わせた経営やマーケティングを重視しているのも特徴です。
――「スマホファースト」というのは具体的にどのような点ですか?
【島田チェアマン】試合をスマホで視聴できるのはもちろんですが、それだけではありません。入場時のチェックインからチケット予約、会場での飲食やグッズ購入まで、すべてスマホを使ってキャッシュレスで完結できます。観戦体験そのものが、完全にデジタル化されているんです。
さらにBリーグでは、全クラブの公式サイトやデータベースを統一しています。ファンクラブのIDも共通で管理されているので、例えばリーグがトップページにある情報を変えたいと考えたとき、各クラブに「このバナーを貼ってください」とお願いする必要がない。リーグのサーバーで一度更新すれば、すべてのクラブに一斉に反映される仕組みです。
プロ野球やJリーグでは、クラブごとに異なるシステムやサイトを運用しています。自由度はある一方で、全体施策を一気に展開するのは難しい。Bリーグは共通プラットフォームを持つからこそ、スピード感をもって動ける。これはガバナンスの面でも強みになっています。デジタルが当たり前の時代に誕生したリーグだからこそできる運営スタイルだと思いますね。
――2025-26シーズンに向けて注目のアリーナはありますか?
【島田チェアマン】今年7月に誕生した、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのホームアリーナ「IGアリーナ」と、10月にオープンするアルバルク東京のホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」は、ぜひ見てほしいですね。
IGアリーナは、メインアリーナの最大収容人数が着席で1万5000人、アリーナ内の天井高は30メートルと、Bリーグクラブのホームアリーナとしては最大級の規模になります。また、これまで日本ではドームでしか実現できなかったライブが、このアリーナでは開催できると聞いています。一方のTOYOTA ARENA TOKYOは、NBAをはじめ世界中のアリーナを参考に、各地のよい部分を組み合わせた施設です。両方とも特色があり、訪れればそのスケールや工夫を体感できると思います。
――アリーナ建設はリーグ主導なのですか?
【島田チェアマン】基本的にはクラブや自治体、運営に携わる企業が判断しています。我々は収容人数やバリアフリー対応などの基準を提示するだけで、あとは各クラブやステークホルダーが考え抜いて投資しています。だからアリーナごとに特色が出るんです。スポーツに軸を置いたり、コンサート需要を意識して音響設備にこだわったり、それぞれが差別化を図っていますね。
――今シーズン注目してほしい選手はいますか?
【島田チェアマン】もちろん全員に注目してほしいですが、11月から「FIBA バスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選」の1次予選も始まりますので、Bリーグの選手から誰が日本代表に選出されるかを予想しながら観戦いただくのも楽しみ方のひとつかもしれません。今回の日本代表はBリーグでプレーしている選手が中心になる可能性が高いと思いますし、新たに招集される若手選手も出てくる可能性もあります。Bリーグの選手たちの活躍を期待しています。
未来に向けたBリーグの進化
――「B.革新」は2020年から取り組まれていると伺いました。来年の2026-27シーズンからは現行体制とどう変わるのでしょうか?
【島田チェアマン】今、BリーグにはB1、B2、B3をあわせると55クラブがあり、41の都道府県にクラブがあります。残り6県にはまだクラブがありませんが、多くの地域に拠点があるので、県庁所在地を中心に身近にクラブを見つけられる環境が整ってきました。だから特別に遠出をしなくても、近くでプロバスケットボールを楽しめるようになっているんです。
バスケットボールのルール自体が変わるわけではありません。ですから2026-27シーズンを境に突然まったく別物になるわけではなく、アリーナが新しくなったり、観客数がさらに増えたりと、じわじわと変化を実感する形になります。むしろ「進化の手応え」は積み重なっていくものだと思います。
ただ、システム面では大きな改革があります。まず「サラリーキャップ」を導入して、クラブ間の戦力を均等化します。資金力のあるクラブだけが有力選手を独占するのではなく、どの試合も勝敗が読めない、最後までドキドキできるリーグにしていくんです。さらに「ドラフト制度」も始まります。新人選手が特定の強豪クラブに偏らず、どのクラブに入るかわからない仕組みにすることで、リーグ全体のバランスを保ちます。
外国籍選手の起用ルールも変わります。これまでは制限が厳しかった部分を緩和し、同時に3人までコートに立てるようにします。国際的なレベルの高さを感じられる試合が増え、日本人選手もそのなかで生き残るために力を伸ばす。結果的に日本代表の強化にもつながっていきます。
――それは従来の仕組みとどう違うのですか?
【島田チェアマン】一番大きな違いは「昇降格制度」をやめることです。これまでは勝てば昇格、負ければ降格というシステムでした。ヨーロッパのサッカーリーグに近いモデルですね。しかし2026-27シーズンからはアメリカのNBA型に移行します。勝敗だけで評価するのではなく、クラブの経営力や地域での集客力も重要な基準になる。地域に根ざした活動を展開し、多くのファンの方に来場いただいているクラブが上位カテゴリーに進む。リーグ全体が安定して成長できる仕組みに切り替わるんです。
――観戦する人に向けて、どんな体験が待っていると伝えたいですか?
【島田チェアマン】これまでのように「強いクラブが毎回勝つ」構図ではなくなります。どの試合も結果が読めないから、観戦がもっとおもしろくなるんです。そしてアリーナも進化しています。体育館のような空間から、音響や演出にこだわったエンターテインメント性の高い舞台へ。観客にとっての快適さも格段に上がるので、スポーツに詳しくなくてもライブや映画を観に行くような感覚で楽しめると思います。
そして、バスケットボールの試合は、2時間で集中して盛り上がれるので、ちょっとした「推し」を見つけるきっかけにもなる。まだ行ったことがない方には、ぜひ一度アリーナに足を運んでほしいですね。きっと「こんな身近なところにおもしろい“ライブスポーツエンタメ”があったんだ」という気づきがあると思います。
――NBAは観るけれどBリーグはまだ…という方もいます。そうしたファンに向けて熱いメッセージをお願いします。
【島田チェアマン】以前は「NBAはすごいけど、Bリーグは…」という見方もありました。サッカーでいえばプレミアリーグやブンデスリーガは観るけれどJリーグは…、野球でいえばメジャーは観るけれどプロ野球は…というのと同じです。でも今はBリーグもおもしろいと感じてくれるNBAファンが増えてきています。初めて来た人も「想像以上に楽しかった」と言ってくれることが多い。子どもから大人まで、誰でも安心して楽しめるのがBリーグです。平和な雰囲気で女性ファンも多い。だからこそ気軽に来てほしいです。もし、「今日、暇だな。そういえば近くにアリーナあったな」と思ったら、ぜひ一歩踏み出してみてください。きっと新しいワクワクが見つかるはずです!
2026-27シーズンからは、昇降格制度を廃止しエクスパンション型へと転換。サラリーキャップやドラフト制度の導入で、勝敗の読めない、よりスリリングなリーグへ進化していく。アリーナの熱気に包まれ、映像や演出が加わった試合は、まさにライブさながらの盛り上がり。映画のように一気に引き込まれる2時間を、体感しない手はない!
「こんな身近なところにおもしろい“ライブスポーツエンタメ”があったんだ」と感じる瞬間が、きっと訪れるはず。次の週末はBリーグのアリーナへ、新しいワクワクを探しに出かけよう!
取材=澤田麻依、浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=阿部昌也
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