オダギリジョーが監督・出演を務める『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』の見どころを紹介。開けてはいけないドアの先に、不思議な世界が広がっている前代未聞のダークファンタジー！

2025年9月26日より全国公開中の『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』は、オダギリジョーさんが脚本・演出・編集を務めたオリジナルのTVドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』に、新たな豪華俳優陣を加えてオダギリ監督が映画化した作品。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。

【ストーリー】
狭間県警鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)。一平の相棒は、数々の難事件を解決に導いた伝説の警察犬・ルドルフの子どもであるオリバー。しかし、一平にはどういうわけか、オリバーが口が悪くやる気がない、女好きで慢性鼻炎の着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えている。

ある日、一平や鑑識課メンバーの前に、隣の如月県のカリスマハンドラー・羽衣弥生(深津絵里)がやってきた。如月県でスーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市)が行方不明になったため、一平とオリバーに捜査協力を求めてきたのだった。

「コニシさんが海に消えていくのを見た」という目撃情報をもとに、一平とオリバー、そして羽衣は、コニシさんのリヤカーが残されていた海辺のホテルに向かうが…。

池松壮亮×麻生久美子×佐藤浩市ら、ドラマから続投の豪華キャストが演じるクセ強キャラに注目！

本作の脚本・監督・編集・出演を務めるのは、俳優として長年キャリアを築き、2019年には『ある船頭の話』で長編映画の監督デビューを果たしたオダギリジョーさん。

オダギリさんはNHKで放送されたTVドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(シーズン1は2021年、シーズン2は2022年)の監督も務めており、今回はオリバーファン待望の映画化となった。

キャストは、池松壮亮さん、麻生久美子さん、本田翼さん、岡山天音さん、黒木華さん、鈴木慶一さん、嶋田久作さん、宇野祥平さん、香椎由宇さん、永瀬正敏さん、佐藤浩市さんがドラマ版から引き続きの出演となっており、映画版には新たに吉岡里帆さん、鹿賀丈史さん、森川葵さん、髙嶋政宏さん、菊地姫奈さん、平井まさあきさん(男性ブランコ)、さらに8年ぶりの映画出演となる深津絵里さんが加わるというなんとも豪華なキャスト陣が集結！あらゆる世代の俳優たちがオダギリ監督をリスペクトし、信頼しているのがわかる。

本作のユニークなところは、池松さん演じる主人公の鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平だけには、なぜか相棒の警察犬・オリバーが、酒と煙草と女好きの欲望にまみれた犬の着ぐるみのおじさんに見えてしまう(一平以外の人間には優秀な警察犬に見えている)ところ。しかもその着ぐるみのオリバーを、オダギリさんが演じるという驚きの設定に、ドラマ放送当時時から大きな話題となっていた。

ちなみにオダギリ監督と池松さんは、石井裕也監督が、韓国人スタッフ＆キャストとともにオール韓国ロケで撮影を行った映画『アジアの天使』(2021年)で共演している。この映画で兄弟役を演じた二人は撮影をとおして親交を深めていったのだろう。

暴言を吐き、慢性鼻炎でやる気がないオリバーに対して、一平が淡々とツッコミを入れるやり取りはとてもユーモラスで、オダギリ監督と池松さんの独特な掛け合いがシュールな笑いを生み出している。このおもしろさは文字で読んでいても伝わらないと思うので、ぜひドラマ版でも映画版でも実際に観て確かめていただきたい。

個人的に大好きなキャラクターが、麻生さん演じる鑑識課警察犬係の一平の上司・漆原冴子。隙あらば前髪を切っているという漆原さんは、映画でも変わらずどこか様子がおかしくて最高だった(笑)。麻生さん自身がチャーミングで、キュートなお顔立ちだからこそ成立する役柄であることは間違いない。

ちなみに麻生さんは過去にドラマ『時効警察』シリーズ(2006、2007、2019年)、映画『たみおのしあわせ』(2008年)などでオダギリ監督とがっつり共演している。二人は長年友人関係にあるようで、本作の登場人物の名前はほとんど麻生さんのアイデアなのだそう。『時効警察』が大好きでDVD-BOXを持っている筆者としては、この二人が仲良くインタビュー取材を受けている記事を見るだけでにやけてしまう。

本作では麻生さんが驚きのダンスを披露しているので、それだけでも鑑賞料金の元は取れると言っても過言ではない。ぜひダンスシーンを楽しみにしてもらいたい。

ドラマの『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』は、オリバーと一平が次々と発生する不可解な事件に挑んでいく姿が描かれていた。ところが本作は、ドラマで起きていた事件とは全く関係のない物語が進行していくため、もしもドラマを観ていないからと躊躇している方がいたら映画から観ても全く問題ないことを伝えておきたい。

ただ、本作では永瀬さん演じるフリーランスの記者・溝口健一と、佐藤さん演じるスーパーボランティアのコニシさんが物語を動かす重要人物として登場するため、ドラマのあらすじぐらいは事前に知っておいたほうがわかりやすいかもしれない。

映画で新たに登場する、吉岡さん演じる漆原冴子のいとこテンちゃんや、鹿賀さん演じる漆原冴子の父・富章、髙嶋さん演じる不思議なおじさんなど、豪華キャストが全員クセ強キャラを演じているところも本作の大きな見どころ。ぜひ彼らの怪演にも注目してほしい。

久々にスクリーンに帰ってきた深津絵里の美しい歌唱シーンに魅了される！

本作のキャスト発表時に一番驚いたのが、犬の気持ちがわかりすぎる超優秀なハンドラー・羽衣弥生役の深津絵里さん。深津さんが映画に出演するのは2017年に公開された『サバイバルファミリー』以来8年ぶり。まさか彼女の久々の映画出演が本作になるとは全く予想していなかった。

ただ、深津さんとオダギリ監督は連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で恋人から夫婦になる役柄で共演しており、トーク番組『ボクらの時代』では、オダギリ監督が「(『カムカムエヴリバディ』の出演を)お引き受けしたのも、深津さんとお芝居をしてみたいなという気持ちだけだった」と語っていた。さらに『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』のパンフレットには、『カムカムエヴリバディ』の撮影時にすでに本作の相談をオダギリ監督がしていたことも書かれていた(パンフレットには深津さんが本作への出演を決めた思いや経緯などについても書かれている)。

本作では深津さん演じる羽衣が、一平や漆原たちとユーモラスなやり取りを繰り広げるシーンやオリバーが羽衣にビビってしまうシーン、そして詳細は書けないが深津さんの美しい歌声を堪能できるシーンまである。なんと贅沢な映画だろうか…！きっと誰もが深津さんの歌声に魅了されるに違いない(パンフレットには深津さんが歌った劇中歌をダウンロードできるQRコードが封入されている)。

オダギリ監督にしか作り出せないアートとユーモアとエンタメが融合したセンス抜群の本作。ぜひ劇場の大きなスクリーンで鑑賞してもらいたい。

文＝奥村百恵

(C)2025｢THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE｣製作委員会