「突然だけど俺、結婚するから」兄の報告に妹は?「家族をとられる気がして…」送り出す側の葛藤を描く【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
幼い頃から何か困ったときに「兄貴、兄貴!」と呼ぶと、いつだって助けてくれる心強い存在だった兄。大人になってからも兄妹2人で暮らし、「持つべきものは頼れる兄だ」「いつまでも便利でいてくれ」と頼りにしていた妹・晴音は、突然の兄からのカミングアウトに打ちひしがれていた。
「突然だけど、俺、来月結婚するから」。兄は唐突に妹にそう告げた。「家賃の節約になる」と2人で暮らしていた部屋も、もちろん出て行くことに。「しかも私を置いて。見知らぬ他人の元へ…?」と妹は複雑なモヤモヤを抱えていた。
本作を描いたのは漫画家のしばたさびまる(@pizakuigumatori)さんだ。『君たちに幸あれ!』はWebマンガサイト「くらげバンチ」(新潮社)にて掲載された作品で、担当編集が付き、担当編集とともに一緒に作り上げた作品とのこと。しばたさびまるさんに本作について、詳しく話を聞いてみた。
――本作は担当編集さんと一緒に作り上げたとのことですが、本作の構想のきっかけなどについて教えてください。
実は晴音に起こったことは、わりとそのまま私が体験したことでして、「家族が突然家からいなくなることに対して、なんかいろんな感情を覚えたんですよね」と担当さんに軽くお話したのがきっかけでした。担当編集の方がその話にとても興味を持ってくれて「貴重な経験・機会なのでぜひ作品にしたい、しよう!」と話が進みました。
描き初めのころは「いろんな感情」の正体が自分でもよくわかっていなかったのですが、晴音を通して整理がつき、作品に昇華できてよかったと感じています。
――本作でこだわったシーンを教えてください。
イルミネーションの中で、にぎやかな家族と対比して一人で歩く春音のシーンでしょうか。今見ると「寂しがりやで人の幸せを祝ってあげられなくて未熟だなあ」と思いますが、当時は少なからずショックを受けていたので、その気持ちを晴音にも体現してもらえるように頑張って描いた記憶があります。
あとはとても細かいですが、晴音と兄を不自然にならない程度に仲良しに表現したところですかね…?実際の兄妹間のやりとりは、仲がよくても第三者からは喧嘩っぽく聞こえてしまうので、それをどう読者に伝えるかこだわった気がします。あまりにも脚色してしまうと気持ち悪い距離感になってしまうので、その微調整は楽しかった覚えがあります。エッセイではなく読切漫画として、現実に起こったことや人間関係を表現することは難しいなあと感じました。
本作『君たちに幸あれ!』は、ずっと当たり前のようにそばにいてくれた存在が急にいなくなる寂しさを描いた作品である。「そうか、やっとわかった。私は…家族をとられる気がして悔しいんだ」と気づいた妹・晴音が「家族をとられる」ではなく、「家族が増える」と感じられるようになった瞬間までを丁寧に描いている。「兄貴、幸せになってね」と送り出すことができたラストシーンまで晴音の気持ちの変化を追いながら読み進めてほしい。この春、誰かを送り出すことがある人にぜひ読んでほしい一作だ。別れのあとには出会いの春がきっと待っている…!
取材協力:しばたさびまる(@pizakuigumatori)
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