鬱の社員は背後の怨霊にも「無反応」?心が死んだ社畜を見かねた霊が下した、まさかの“強制有給”【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
好きなゲームをしていても心が動かない。楽しいはずのことが楽しくない。「これが噂の鬱状態か」とため息をつく男の背後には、ぴったりと怨霊が張り付いている。本来ならば恐怖の絶頂にいるはずのシチュエーションだが、今の男には怖がる気力さえ残っていなかった。
早々乃曜七さん(@kakesichi67)が描く短編漫画『感情の死んだ男』は、わずか3ページという短さながら、SNSで大きな反響を呼んでいる。セリフを一切持たない怨霊が、精気を失った人間に見せる「斜め上の献身」が読者の心を掴んで離さない。
恐怖は心に余裕がある証拠。逆転の発想から生まれた「介護系怨霊」
本作が誕生したきっかけは、作者が耳にした「鬱の始まりは、これまで楽しめていたことを楽しめなくなること」という話だった。「恐怖も感情の一つなら、心が折れた人間には怨霊も怖くなくなるのではないか」という逆転の発想が、この奇妙な共同生活の起点となっている。
「ホラーを楽しめるのは、心に余裕がある証拠」と語る早々乃さん。怖がってくれないターゲットを前に、怨霊が導き出した答えはあまりにかいがいしいものだった。掲げたスローガンは「健全なる恐怖は、健全な身体に宿る」。まずは男を驚かせるに値するコンディションまで回復させるべく、怨霊による壮絶な「ケア」が始まる。
セリフなしでも伝わる「いい嫁」感。細部まで凝った執念のサポート
作中の怨霊は一言も喋らないが、その行動は驚くほど多弁だ。呪いによって強引に有給休暇を取得させたり、栄養バランスの取れた食事を振る舞ったり、果ては風呂場で背中を流したりと、まるで「健気な嫁」のような振る舞いを見せる。
特に注目すべきは、怨霊の細かな描き込みだ。マッサージの際や料理の際にいちいち着替えるという芸の細かさに、読者からは「顔のわりにやってることが可愛すぎる」「もう悪霊じゃないだろ」とツッコミが殺到している。相手を恐怖させるという本来の目的を一旦脇に置き、男のメンタル回復に全力を注ぐ姿には、えも言われぬ愛嬌が漂う。
ダークだけどコメディ。独自の作風が描く「救い」の形
前作『君の死は』でも、ダークな設定の中にコメディ要素を忍ばせた早々乃さん。本作においても、精気のない人間と、必死に彼を支える怨霊という歪な関係性が、笑いとともにどこか温かい読後感をもたらしている。
表情が読めないはずの怨霊に情が湧いてしまうのは、その行動の一つひとつに「ターゲットを元気にしたい(驚かせたい)」という純粋な情念が込められているからだろう。最悪のコンディションにある男が、怨霊の「恐怖の下準備」によって少しずつ人間らしい生活を取り戻していく皮線な展開は、現代社会で疲れ果てた読者への、奇妙で優しいエールにも聞こえてくる。
取材協力:早々乃曜七(@kakesichi67)
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