大阪中之島美術館でサラ・モリスの日本初大規模個展を開催!最新作を含む約100点を展示
東京ウォーカー(全国版)
大阪中之島美術館では、ニューヨーク在住のアーティスト、サラ・モリスの日本初となる大規模個展「サラ・モリス 取引権限」を2026年4月5日(日)まで開催する。
国際的アートシーンを牽引するサラ・モリス。同美術館はモリスの作品を日本で初めてコレクションに加えており、大型絵画のほか、映像作品『サクラ』などを所蔵している。
そんなモリスの30年以上にわたるキャリアを総覧する本展では、絵画、映像、ドローイング、そして本展のために制作された大型壁画など、100点近くを展示。出展作品の約90パーセントが日本初公開という、貴重な機会となる。
「大阪中之島美術館らしくない?」を超えて実現した展覧会
内覧会前に行われたプレス説明会には、大阪中之島美術館の館長・菅谷富夫さんが登壇。「今回の展覧会は“大阪中之島美術館らしくない”と言われたこともあった」と明かしつつ、実は開館当初から計画されていた企画であり、現代美術や最先端技術も扱うという同館の守備範囲を示す、開館4周年を迎える節目にふさわしい重要な展覧会だと語った。
当初はコロナ禍や国際情勢の悪化による輸送費・航空運賃の高騰で延期されたが、多くの関係機関の協力により、ようやく開催にこぎつけたという。円安などで状況はさらに厳しくなったものの、作家の全貌と最新作を含む質の高い展覧会が実現できたとし、「サラ・モリスという作家の全貌を、最新作を含めて紹介できる。非常にきれいな展覧会が実現できた」と喜びをにじませた。
サラ・モリス本人も登場!日本初の回顧展への思い
プレス説明会には、サラ・モリス自身も登場。まずは、日本で初めてとなる個展、しかも回顧展を開催できることへの感謝を述べ、「この展覧会は1992年から、文字通り昨日完成した作品までを含んでいます」と語った。完成したばかりの新作壁画『スノーデン』については、「森のイメージや建築的なイメージを込め、日本の寺院も参照した」と説明。
自身の作品については、「一見すると建物や言葉のイメージに見えるかもしれませんが、実際には私たちが空間や社会の中をどのように移動しているかを表す、ナビゲーションのイメージでもあります」と語る。
また、展覧会タイトル「取引権限」については、「私たちが日々、どのような関係性の中で生きているのかを考えてもらうためのもの」と説明。「私たちの関係性には契約が含まれており、それは分単位で変化していきます。アートもまた契約の一部です。アートにはパワーがあり、それは経済的な力ではなく、権限や影響力としての力です。それこそがアートの持つ“取引権限”だと思っています」と、その思いを明かした。
初期の代表作「サイン・ペインティング」シリーズ
展示室に入って最初に目に飛び込んでくるのは、90年代に制作された初期の「サイン・ペインティング」シリーズ。ニューヨークを拠点に活動するモリスが、当時の開放的な空気の中で生み出した作品群だ。
アメリカのホームセンターで販売されている注意看板のタイポグラフィーを引用し、再解釈。「beware of the dog(猛犬注意)」など、人の行動をコントロールするようなアテンション(Attention)を呼びかけるような言葉を意図的に選択。日常にあふれる“注意喚起”の言葉が、アートとして再構築されている点に注目したい。
さらにテキストを全面に配した「テキスト絵画」シリーズでは、タブロイド誌の見出しなどから引用された言葉がキャンバス全体を埋め尽くす、刺激的な仕上がりとなっている。
モリスの代表作のひとつが、1990年代から制作されてきた「ミッドタウン」シリーズ。ニューヨークやマンハッタンの中心部に立ち並ぶ企業ビル群を、抽象的なグリッドで表現している。
そのひとつに描かれているペインウェバービルは、企業合併によって現在はその名前を失っているという。絵画は残り続ける一方で、世界は刻々と変化していく。都市と経済の移ろいや企業のストーリーまでもが、静かに描き留められている。
「ロサンゼルス」シリーズでは、映画の都であるハリウッドがあるロサンゼルスを彩る野心と幻想が鮮やかな色彩で表現されている。きらびやかさの裏に潜む緊張感や欲望も感じさせる、印象的な作品群だ。
映像作品「有限のゲームと無限のゲーム」をきっかけに生まれた「サウンドグラフ」シリーズも。アートとは双方向的な会話であり、私たちの声は常に記録されている——そんな考えから、サラ・モリス自身の声を絵画へと転換したシリーズだ。幾何学的な線のリズムから、音の強弱が想起される。
大胆なビジュアルで目を引くのが、デザイン・デュオ、M/M(Paris)とのコラボレーションによる「フィルム・ポスター」シリーズ。モリスの映像作品のイメージを、M/M(Paris)が自ら撮影した写真を加えつつリミックス。再構成された複雑で不思議なビジュアルが、見る者の想像力を刺激する。
関西ゆかりの「大阪」シリーズにも注目
2017年と2018年に大阪を訪れた際、生まれたのが「大阪」シリーズだ。同シリーズは松や住吉大社のほか、天王寺区に本社がある世界最古と称される建築会社・金剛組などがモチーフになっている。
本展では、全17点の映像作品も上映されている。その中のひとつ『サクラ』では、大阪をはじめ日本各地を巡り、電車の車内や花見でにぎわう公園、工場など、何気ない日常風景を独自の視点で切り取っている。見慣れた光景が、少し違うものに見えてくる感覚が新鮮だ。
会期中だけの特別な体験、新作壁画『スノーデン』
本展示の見どころの一つ『スノーデン』は、同館の空間と会期に合わせて制作された新作壁画。2026年1月初旬から約20日間かけて制作され、内覧会直前に完成したばかりの作品だ。会期終了後には元の壁に戻される予定で、まさに“今、ここでしか見られない”作品となっている。
同館の主任学芸員・中村史子さんは「私はこの壁画に森や建築物のイメージを持つとともに、白いドットには雪のようなイメージを想起しました。展覧会期間中だけの限られた作品なので、少しでも多くの人に見ていただきたいです」と語る。またタイトルから、「世界で最も有名な告発者、エドワード・スノーデンを想起する人もいるでしょう」と話す。このように、ひとつのイメージにいくつかの意味を込めていくのも、モリス作品の特徴と言えるのだ。
近くには、制作時の立体図や制作スケジュールなどの資料も展示。完成作品だけでなく、その思考やプロセスをたどれるのも本展ならではの楽しみ方だ。
「アートは決してひとりで完結するものではない。共同的でコミュナル(Communal)な営み」と語るサラ・モリス。まさにその言葉を体感できる展覧会。現代美術の“いま”を感じに、大阪中之島美術館へ足を運んでみては。
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