宇宙食から伝統のチーズまで!EU通商部長兼通商部長アデリンさんに聞く、品質の高いヨーロッパの食品飲料が日本の食卓に届くまで

東京ウォーカー(全国版)

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日本のスーパーマーケットでも、EUのお菓子を見かける機会が増えてきた

ワインやチーズ、オリーブオイルなど、私たちの食卓を豊かに彩るヨーロッパの食材。近年、スーパーやレストランでその魅力を目にする機会が一段と増えたと感じる人も多いのではないだろうか。

こうしたヨーロッパ製品が日本でより身近になった背景には、2019年に発効した日EU経済連携協定(EPA)の存在がある。この協定をきっかけに、日本市場においてヨーロッパ製品の存在感は着実に高まっている。

今回は、FOODEX JAPAN 2026に来場していた、駐日欧州連合代表部で通商部長を務める公使参事官、アデリン・ヒンドゥラーさんにじっくりと話を聞いた。

アデリンさんは、長年にわたり欧州委員会の通商分野で活躍し、日本をはじめとするアジア地域との貿易協定を牽引してきたスペシャリスト。社会・環境問題のアドバイザーとしての経歴も持ち、現在は日本で農業や気候、環境など幅広い政策を担当している。

そんな日本とヨーロッパの架け橋である彼女に、関税を削減したりルールを共通化して貿易を活発にする協定であるEPAがもたらした変化や、日本市場へのアプローチ、そしてヨーロッパの食が持つ多様な魅力について語ってもらった。

EPAから始まる、日本とヨーロッパの新しい「貴重な関係」


ーー2019年のEPA発効以降、日本における欧州製品の存在感や受け入れはどのように変化しましたか?

【アデリン・ヒンドゥラー】2019年のEPA施行により、日本とヨーロッパの双方が非常に様々なメリットを享受しています。お互いの商品についての知識が高まるとともに、両地域での消費量も増加傾向にあるのは大変喜ばしいことです。

駐日欧州連合代表部 公使参事官兼通商部長のアデリン・ヒンドゥラーさん


EUの農産物輸出において、日本は第5位という非常に大きなマーケット。データを見ても、EPA締結前の2018年と比べて農業製品の対日輸出額は30%も増加しました。同期間の他の輸入品への増加率が16%であることを踏まえると、農業製品はEPAのおかげで輸出高が大きく伸びたと言えるでしょう。

具体的な取り組みとしては、関税の削減はもちろん、一定数量までは低い税率で輸入できる制度であるTRQ(関税割り当て枠)の恩恵もチーズ分野などで受けています。また、食品の安全性や動植物の健康を守るためのルールであるSPS(衛生検疫措置)も、この枠組みの中で有効に機能している手段の一つです。ワイン醸造の技術を日本の企業様が取り入れてくださるなど、技術の促進や交流も進んでいますね。

赤と黄色のPGIロゴと、EUオーガニックロゴを掲げる、ヨーロッパ産チーズ


さらにEUの特長である、特定の産地ならではの品質を持つ特産品をブランドとして守るPGI(地理的表示保護)に関しても、ヨーロッパの291製品が日本で認められ、逆に日本の農産物132品目がヨーロッパで認められています。今年はさらにこの品目数が増加する見込みであり、EPAによって両国の貿易がさらに進展している状況です。

「本物らしさ」をどう伝える?ヨーロッパが大切にしているメッセージ


ーーEUは日本市場の開拓や欧州製品の競争力向上について、どのようなことが必要だとお考えですか?

【アデリン・ヒンドゥラー】日本の消費者に欧州の商品をより深く知っていただくためには、きちんとしたメッセージの伝達が不可欠だということです。特に、味や伝統、文化的な遺産、ノウハウといった、欧州の食品のユニークさを正しく伝えることが重要だと考えています。

EUの製品は、健康への配慮や動物福祉など、世界に誇る非常に高い基準で生産されています。また、ヨーロッパならではの地理的な多様性も大きな特長であり、バラエティ豊かな食品を楽しんでいただける点こそが素晴らしさです。多様性とともに、真実性という「本物らしさ」も一つの強みと言えるでしょう。

食の祭典からアジアへ。ヨーロッパ食材の魅力を広げるFOODEX


ーーFOODEXを、日本およびアジア全体でのシェア拡大のためのプラットフォームとしてどのように評価されていますか?

【アデリン・ヒンドゥラー】パートナーシップやビジネス機会を開拓する上で、FOODEXは非常に大切なプラットフォームと位置づけています。最大の国際見本市であり、日本だけでなくアジア全域から多数の来場者が訪れるため、大変重要な存在です。特に目を引くのは、2024年の出展者が前年比で2倍に増えたこと。ヨーロッパ企業にとって、アジアを幅広くターゲットにできるこのイベントは、なくてはならないものです。EUパビリオンのオープニングセレモニーには、輸入業者、バイヤー、小売業者、流通業者、ならびに各省庁の関係者を招待し、有意義なネットワーキングの機会となりました。

「FOODEX JAPAN 2026」EUパビリオンの全景


ーー日本における欧州製品のプロモーションは、「パーフェクト・マッチ」キャンペーンや大阪・関西万博の取り組みとどのように連携されていますか?

【アデリン・ヒンドゥラー】「パーフェクト・マッチ」はまさに私たちのフラッグシップ。ヨーロッパの食材と日本食をうまくブレンドするという点で非常に効果的でした。昨年の万博でもこのコンセプトを取り入れ、EUを表現する有意義な機会となりました。

高品質で、地球に優しい。ヨーロッパの農業が目指す未来


ーーEU製品の品質やサステナビリティに関するメッセージに対して、日本の消費者はどのような反応を示していますか?

【アデリン・ヒンドゥラー】日本の消費者の皆様は、EU製品がどのように生産されているかという点に強い関心を持ってくださっていると感じます。特にEUが設ける高い安全性や生産基準に、大変興味を抱いていただいていますね。また、どこで作られ、どの地域にゆかりがあるかを証明するGI(地理的表示)への関心も高いです。高品質なヨーロッパワインの多様性や、長い伝統に基づく製法に対しても、深い共感を得ていると感じています。

EU産ワインも数多く紹介された


ーーライブデモンストレーションを通じて品質やサステナビリティを伝える際、どのような教訓を得られましたか?

【アデリン・ヒンドゥラー】EUの農業政策は、環境への配慮、グリーンファーミング、生物多様性、オーガニックを含むサステナブルな農法など、多岐にわたる留意事項を持っています。ライブパフォーマンスでは、シェフが生産地や歴史、価値、生産基準などを取り入れながら実演を行います。これにより、消費者の皆様に私たちの取り組みを知っていただく良い機会になっていると考えています。

ーーFOODEX JAPAN 2026のあと、日本との農産食品貿易の成長についてどのような期待をされていますか?



【アデリン・ヒンドゥラー】今回のFOODEXでは、27の加盟国すべてを代表するパビリオンを構え、375の製品を紹介しています。さらに、海外パビリオン内に各国のエリアやブースが17あり、全体を補完する位置づけとなっています。

EU産の商品を展示するディスプレイ


これほど多くのEU加盟国が出展するのは、やはりより多くの方々に味わって、知っていただきたいという思いがあるからです。私たちの生産基準や商品をより深く知っていただくことが、さらなる貿易拡大につながると見込んでいます。

EUの味覚が楽しめる試食も、EUパビリオンで行われた


有機JASマークが目印に!さらに広がるヨーロッパのオーガニック製品


ーー日本との有機認証の同等性協定が最終化された場合、EUのオーガニック製品にどのような新しい機会が生まれるとお考えでしょうか?

【アデリン・ヒンドゥラー】2025年5月、EUと日本は既存の行政取決めの適用範囲を拡大することで合意し、より多くの有機製品が両市場間で円滑に取引できるようになりました。対象には、乳製品を含む畜産物および畜産加工品、さらにワインや蒸留酒などが含まれています。

持続可能性や高品質、健康志向への消費者の関心の高まりと相まって、この拡大はEU産有機食品の対日輸出をさらに後押しするものと期待されています。ベルギー産チョコレートやスペイン産ワインといった優れた製品も、今後は有機認証やJASマークをより容易に表示できるようになり、消費者がその認証を認識し、信頼する一助となります。

将来的には、この行政取決めは国際協定へと移行する予定であるが、その基本原則は維持される見込みであり、EUと日本の当局間における緊密な協力関係と共有される価値観のもと、二国間の有機取引は引き続き恩恵を受けていくと考えています。

アデリンさんイチオシ!絶対に味わってほしいヨーロッパ食材3選


EPAの恩恵や厳しい品質基準といった制度面の魅力に加え、実際の製品が持つ豊かな味わいやその背景にあるストーリーも、ヨーロッパ食品の大きな魅力のひとつ。ここからは、多種多様なヨーロッパ製品の中から、アデリンさんが特におすすめする食材について具体的に聞いてみた。

ーー魅力的なヨーロッパの食品がたくさんありますが、特に日本の消費者に味わってほしい、おすすめの食材をいくつか教えていただけますか?

【アデリン・ヒンドゥラー】そうですね、個人的にチョコレートでしょうか。ベルギーチョコの素晴らしさは、長い伝統と歴史の中で培われてきたノウハウと高品質にあります。最高品質の原材料をどう加工すれば最高のものになるか、そのノウハウを有しているからです。

伝統とイノベーションがEU製品の根幹にある


伝統、ノウハウ、そして真実性。これがキーポイントですね。ヨーロッパは陸続きであり、ベルギーのノウハウを域内で共有することで、各国でチョコレートの品質が向上するという相乗効果も生まれています。

また、伝統だけでなくイノベーションも大きな特長です。例えば、宇宙産業で使われるような、ビタミンやミネラルを豊富に含むフリーズドライ商品。リトアニアなどで作られているこのような宇宙食品も、我々の加工食品におけるイノベーションの代表例として展示しています。

ーー伝統的なチョコレートから最先端の宇宙食まで、本当に幅広いですね。他にもおすすめはありますか?

【アデリン・ヒンドゥラー】日々の食卓に欠かせないオリーブオイルもぜひおすすめしたいです。オリーブオイルの魅力は、何よりも真実性と伝統です。何世紀にもわたり、レシピを改良しながらも守り続けてきました。これほど長くオリーブオイルを食してきた歴史は他に類を見ず、その長い歴史こそが重要だと考えています。


ーーなるほど、長い歴史がその味わいを支えているのですね。

【アデリン・ヒンドゥラー】ええ。そしてもう一つ、チーズも忘れてはいけません。チーズはヨーロッパを代表する食品であり、フランス出身の私にとっても大変大切なものです。最も特長的なのは、生産地域と密接にリンクしていること。例えばノルマンディー地方のカマンベールのように、かつてはその地域でしか食べられなかったものが、貿易のおかげで広く楽しめるようになりました。しかし、根底にあるのは地域ごとの歴史と培われた伝統です。

アデリンさんは「根底にあるのは地域ごとの歴史と培われた伝統」だとヨーロッパの魅力を語った


チーズはストーリーを語るもの。どんな人が、どんな場所で技術を培ってきたか。場所によって使うミルクも製法も異なります。まさにヨーロッパの多様性(ダイバーシティ)を体現する存在だと感じています。

ーーありがとうございました。

アデリンさんの言葉の端々から感じられたのは、ヨーロッパの食文化が持つ深い歴史と、それを日本へ届けようとする確かな情熱。かつて環境や持続可能性のアドバイザーとしても活躍していた彼女だからこそ、食の背景にあるサステナビリティへの思いや、品質に対する深い理解が真っ直ぐに伝わってきた。

EPAによる貿易の促進やオーガニック市場の拡大により、今後さらに私たちの身近な食卓へヨーロッパの豊かな味わいが広がるだろう。伝統と革新が交差するヨーロッパの食品から、これからも目が離せない。

取材・文 = 北村康行、撮影 = 樋口涼

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