「大好きな人を嫌いにならないために」若年性認知症の父から逃げ続けた娘。介護における“適切な距離”とは?【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
高校生という多感な時期に働き盛りだった父が若年性認知症を患う。そんな衝撃的な実体験を赤裸々に描き出しているのが、吉田いらこ(@irakoir)さんの漫画『若年性認知症の父親と私』だ。父が発症してから亡くなるまでの23年間にわたる軌跡を娘の視点から描いた本作は、介護の美談としてではなく、戸惑い逃避し葛藤し続けたひとりの人間の記録として多くの読者の心を揺さぶっている。
23年という長い歳月、著者は父の病状について周囲に詳しく語ることは少なかった。リアルの知り合いに話すのは重たいと感じていたが、心の奥底には誰かに聞いてほしいという切実な願いが溜まっていたという。そこで読む読まないの自由があるSNSを吐き出し口に選び、文章が得意ではないため漫画という形で自身の気持ちを描き始めた。
本作を執筆するうえで著者が最も大切にしているのは、正直な気持ちを描くことだ。一般的な介護漫画に期待されがちな、家族のために献身的に尽くす姿は描かれていない。著者は健気に介護をするわけでもなく、何もせずに過ごしてきたありのままの自分を出し、気持ちを吐き出すことだけを考えて描いたと語る。高校生で直面した過酷な現実に呆然とし、逃避するしかなかった自身の弱さをさらけ出す飾らない筆致が、かえって読者に深いリアリティを突きつけるのだ。
父の異変を告げられた十代のころ、著者はあまりに大きな事実を受け入れることができず、まるでドキュメンタリー番組を見ているようで当事者意識が持てなかったという。時間はかかるがいつか元の父に戻るだろうと本気で信じ、完全に現実から逃げていたと振り返る。父が父でなくなっていく恐怖から目を逸らし続けた逃げの感情すらも、現在の著者は否定せずに描き切っている。
現在進行形で介護に携わっている読者に対し、著者は第三者に助けを求め、適切な距離を取ることの重要性を説く。大好きな人を嫌いにならないためにも必要なことだという。家族が病に倒れたとき、一人で抱え込み自分を責めてしまう人は少なくない。著者が描く弱さや逃避の記録は、今まさに苦しんでいる誰かにとって完璧でなくてもいいと許してくれる救いの手になるはずだ。
取材協力:吉田いらこ(@irakoir)
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