水盤の上のカラフルなキューブ…実はこれ、美術館の展示室!「世界で最も美しい美術館」に選ばれた下瀬美術館は広島観光するならマストで訪れたい新名所

東京ウォーカー(全国版)

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広島への旅を考えているなら、ぜひ行程に加えてほしいのが、ユネスコが主催する「ベルサイユ賞」の「世界で最も美しい美術館」の一つにも選ばれた「下瀬美術館」。「アートの中でアートを観る。」がコンセプトなだけあって、館内のどこを撮ってもとにかく絵になる。企画展示はもちろん、まるでアート作品のような美術館そのものもじっくりと味わいたい。360度洗練されたおしゃれ空間で、アートにどっぷり浸かるというのもまた、記憶に残る旅になりそうだ。

広島県大竹市に2023年にオープンした下瀬美術館。広島駅からは電車とバスでおよそ60分だ


2023年誕生の建築とアートが溶け合う瀬戸内の新名所

下瀬美術館は、広島県大竹市に2023年3月に誕生した、まだ新しい美術館。広島駅から山陽本線で約40分のJR「玖波(くば)」駅から、さらに市営バスに揺られて約20分、バス停「ゆめタウン」で下車。車なら中国自動車道から広島岩国道路で約45分で辿り着くことができる。

エントランス棟入り口。美術館のロゴは原研哉のデザイン


建築金物の総合メーカー、丸井産業株式会社の創業者である下瀬家が収集してきたコレクションを公開するため、2018年の創業60周年を機に構想、2023年にオープンしたばかりの新しい美術館だ。建築家・坂茂(ばんしげる)による、カラフルな「可動展示室」は有名で、テレビやネットで見かけた人もいるかも。ロゴマークや施設内のサインなどのデザインはグラフィックデザイナーの原研哉が手掛けている。まさに建築とアートが溶け合うような空間に、四季の草花を楽しめる「エミール・ガレの庭」や、ショップ、カフェ、宿泊できるヴィラ、フレンチレストランを併設。「観る・食べる・泊まる」を一体化した複合施設「SIMOSE」として瀬戸内の新名所となり、国内外から注目を集めている。

敷地内には美術館のほかにも宿泊できるヴィラや、フレンチレストランが併設されている


エントランス棟、可動展示室、企画展示室、そしてエミール・ガレの庭と順に回ってみた。

まずはガラス張りで海を望む、開放的なエントランス棟から

美術館に到着したら、まずは受付のあるエントランス棟へ。たっぷりと陽光が射し込む広々とした空間はガラス張りで、入り口から入ると正面に瀬戸内の海が広がる。2つの大きな柱から天井に向かって延びる36本の梁は、まるで巨大な樹木が枝を広げているかのようだ。木材の柔らかな曲線と複雑な構造は、坂茂の建築の特徴でもある。

受付のあるエントランス棟。ミュージアムカフェで瀬戸内の景色を眺めながらゆったり休憩したい


ここには受付のほか、ミュージアムショップやカフェなどもある。カフェでは、コーヒーや瀬戸内レモンスカッシュなどのソフトドリンクだけでなく、ビールやワインなどのアルコールのほか、サンドイッチや瀬戸内のフルーツを使ったスイーツなど軽食も用意している。アート鑑賞のあとに、瀬戸内の海を眺めながらゆったりとくつろげるスペースだ。

ショップに並ぶミュージアムグッズもおしゃれ。旅の思い出になる


これが美術館の展示室?水盤の上のカラフルな8つのキューブの中へ

下瀬美術館のイメージとして最も有名な、水盤の上の色とりどりの8つの建物は「可動展示室」だ。10メートル×10メートルの正方形のキューブの内部は、その名の通り展示室になっている。展示期間中はもちろん中に入ることができる。この日は「SIMOSE新コレクション展—サム・フォールズ、松山智一」会期中につき、現代アーティスト、松山智一の作品が展示されていた。

水盤に浮かんでいるように見える可動展示室


可動展示室は通常、水深15センチの水盤に固定されているので揺れたりはしない。水深を60センチまで上げると浮力で浮き上がり、人の手で動かせるようになる。8つの展示室の配置パターンは全部で6つ。展示の構成に合わせて動かし、自由に展示室の配置を変形させることができるという仕掛けだ。

カラフルな外観とは反対に、真っ白な空間が広がる展示室内


この水盤を満たす水は海水ではなく浄水。可動展示室を動かすために、まずは本館から引いている電気や空調などをすべて停止したあと、可動展示室を囲うように堰を設置する。水深60センチほど、可動展示室が浮力で浮き上がるまで堰の中にポンプで水盤の水を移動する。浮いた可動展示室を人力で引っ張って移動させ、配置を変える。可動展示室を水盤に固定したら、囲っていた堰を取り外して水位を元の状態まで戻す。

この通路を渡って隣の展示室へと移動する

展示室から展示室へ移動する通路から見える景色


実際に中に入ってみると一般的な美術館の展示室と比べて大きな違いはないが、展示室と展示室の間の通路から見える景色で、箱から箱へと移動していることを実感できる。

カラフルな外壁は合わせガラスでできていて、壁の中に仕込んだライトを点灯すれば夜間はライトアップできる。期間限定で開催するナイトミュージアムのタイミングなら、幻想的な光景を間近に見ることも可能だ。

柱のない、真っ白なキューブ状の展示室が作品の魅力を最大限に引き出す

可動展示室の通路を挟んで向かい側にある企画展示室は、柱が1本もない完全に真っ白なキューブ状の空間となっている。柱を一切排除したことで実現した真っ白な部屋は、作品と一対一で向き合える開放的な展示空間だ。

自然の草花や大気をキャンバスに写し込む手法で制作するフォールズと、植物を中心とした自然の形態を装飾のモチーフに取り入れたガレの作風は重なる部分がある


サム・フォールズの下瀬美術館収蔵作品《Spring to Fall》は、ニューヨーク郊外にあるハドソンバレーの自然豊かな土地の季節の移ろいをキャンバスに写し込んだもの。高さ3.6メートル、横幅45メートルを超える巨大な作品を、大きな弧を描く円形の壁面に展示した。これだけの大きな作品が持つ迫力を損なうことなく展示できるのも素晴らしい。

アート・バーゼルに展示され話題を呼んだサム・フォールズの作品《Spring to Fall》(2023-2024年)

エミール・ガレの作品「蘭文耳付花瓶」(1889年頃)


企画展示棟の屋上は「望洋テラス」と呼ばれる展望デッキになっている。屋上へと続くゆるやかな傾斜を登りきると視界が開け、目の前には瀬戸内の多島美が広がる絶景が。美術館を訪れたら、ぜひ登ってみてほしい。

企画展示室の屋上は「望洋テラス」になっている

「望洋テラス」へと小道を登っていく。まるで丘のよう

「望洋テラス」からは瀬戸内の島々が見渡せる


アール・ヌーヴォーの巨匠ガレの作品に登場する草花を楽しむ庭園

建物から表へ出ると、可動展示室の向こう側には「エミール・ガレの庭」が広がる。エミール・ガレ(1846-1904)は、フランスの「アール・ヌーヴォー」を代表する工芸家。植物学者でもあり、自然界の草花や昆虫を緻密かつ幻想的に表現したガラス作品で知られる。展示室でガラスに刻まれた繊細な自然美を鑑賞したあとに、庭に出れば本物の草花を観賞することができるのも、ガレの作品を多く所蔵する下瀬美術館ならではの体験だ。

「エミール・ガレの庭」

小道を散歩しながら四季折々の植物を観察できる


庭園は自由に散策ができる。鏡面で覆われた管理棟に映り込む空と草花が、庭に奥行きを感じさせる構成だ。可動展示室と厳島(宮島)や江田島など瀬戸内の島々を背景に、季節の草花を楽しむのもいい。

管理棟に映り込む空や草木もまた美しい

エミール・ガレの作品に登場するざくろも植えられている


個性豊かなヴィラと地元の幸を味わうフレンチレストラン

下瀬美術館は複合施設「SIMOSE」として宿泊施設やレストランを併設している。坂茂設計の10棟のヴィラはどれもユニークで、「紙の家」や「家具の家」など、建築ファンにはたまらないラインナップだ。アート空間に宿泊して贅沢な時間を過ごしたい。

フレンチレストランでは、シェフの藤谷圭介による地元広島の食材をふんだんに使ったフレンチのコースを提供。瀬戸内の景色を眺めながら、広島を存分に味わえる。ランチコースは8800円から、ディナーコースは1万5000円から、いずれの時間帯もコースのみ。

アートと建築、そして自然と食が融合した、まさに五感で楽しむリゾートといえる。


下瀬美術館 / Simose Art Museum
住所:広島県大竹市晴海2-10-50
時間:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)
休み:月曜(祝休日の場合は開館)、年末年始、展示替え期間
料金:一般2000円、高大生1000円、大竹市民1500円、中学生以下無料
駐車場:無料駐車場 一般73台※身障者用駐車場2台含む

瀬戸内海の穏やかな潮風を感じながら、最先端のアートと建築に触れられる下瀬美術館。広島市内から少し足を延ばす価値は十分にある。「可動展示室」のカラフルでユニークな姿や、瀬戸内の景色と一体となった館内の景色は、訪れるたびに新鮮な感動を与えてくれるはず。広島の新名所として、次の旅行の計画にぜひ加えてみてはいかがだろうか。


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