「本牧ならまずはここへ!」新しい風が吹く名物店とは

横浜ウォーカー

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本牧といえば、長く愛されている店が多いエリアだ。創業100年を超える店もある。そして、なくなりかけていた街のシンボルのような店を、残そうとしている人もいる。過去の歴史が香りながらも新しい風が吹く、そんな2店舗を紹介しよう。

本牧の四角いピザを広める「IG(アイジー)」


本牧が米軍の接収地(領地)になっていた1945(昭和20)年以降、本牧が誇る食文化のひとつに、四角いピザがある。当時は、本牧なら四角いピザが食べられ、それは日本人の憧れだった。1982(昭和57)年に接収地の全てが日本に返還され、ピザを出す店も徐々に減っていったのだが、その食文化を残そうという取り組みがある。

【写真を見る】ネオンが光る看板と、停まっているアメリカンなオープンカーが目印だ(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


本牧の四角いピザは、「イタリアンガーデン(IGの前身)」が発祥。1952(昭和27)年にオープンし、1960年以降に全盛期を迎えていた本牧の店だ。初代コックは、元イタリア海軍のコックで、潜水艦で出していたピザが四角だったから、という説が有力とされている。その四角いピザを「本牧ピッツァ」とし、その食文化を残し、広めるべく奮闘しているのが、現「IG」のオーナー八木弘之さんだ。

「イタリアンガーデン」は時代により経営者も変わっていくが、結果的には、八木さんが「イタリアンガーデン」の最後のオーナーとなった。当時、レストランバーだけではなく、ライブハウスとしても営業しており、そこで歌っていたのが、「クレイジーケンバンド」の横山 剣というのは有名な話。八木さんは、横山 剣が10代の頃からの知り合いだ。

オーナーの八木さん。「IG」には全国から客が訪れる。(左から)本牧ピッツァの「ハワイアン」(1,300円)にはパイナップル入り。「チェリーコーク」(700円)」(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


1996(平成8)年、地域の再開発のため、「イタリアンガーデン」は、通りを挟んだ向かいに移転、四角いピザの専門店として再オープンさせたのが、現在の「IG」である。「自分が若い頃、本牧の四角いピザは憧れだった。当時はいろんなところで食べられたからね。僕はお酒が飲めないから、バーでコーラと四角いピザを頼んで、店の端っこで食べていた」と八木さんは思い出を語る。

オーナーになって以来、10年以上あたためていた、四角いピザの普及計画を決意。それが、「本牧って、どのお店に入ってもメニューに四角いピザがあるんだよね! 計画」だ。今では、市内外で参加店が40店舗以上というその計画。全貌は、次回に紹介することにし、まずはそのピザを紹介しよう。

「IG」の四角いピザは、1ピースが一口サイズにカットされている(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


「本牧ピッツァのMIX」は1,300円。オニオン、ピーマン、マッシュルーム、ハム、サラミなどがどっさりのって、薄い生地なのが特徴だ。八木さんが一枚ずつ手作しているというこの生地の厚さは約2ミリ。サクッと軽やかさはありつつ食べ応えがある。これ以上薄くしたら「春巻きみたいになってしまう」というほどだ。この生地を卸している店舗もあるそうで、そのぶんも八木さんが手作りしているという。チーズもたっぷりと乗り、バランスもいい。チーズも横浜の会社のものを使っているのがこだわりだ。

移転する前の時代から使っているメニューの看板。レトロさが店にマッチ(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


カウンター10席のみの小さな店だが、本牧のイメージでもあるアメリカンなインテリアが目立つ。酒が何種類あるかは八木さんにも不明。最初はピザ専門店のつもりだったが、お客さんのリクエストに応えていたら、バーのように増えてしまっていたという。

今は八木さんの長男の庄之介(右)さんと店を切り盛り。カウンターの後ろには多くのリキュール類が並んでいる(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


ピザのほか、「ホットドッグ」(600円)にも特徴がある。八木さんは子供の頃、後楽園遊園地に売っているホットドッグが大好きだった。後楽園遊園地が改装になり、もう食べられないと思っていたが、大人になった八木さんが仕事で偶然、出会った人がいた。その人は、後楽園遊園地のホットドッグのソーセージを卸していた会社の営業担当だったのだ。ホットドッグの思いを伝えると、そこまでいうならとソーセージを復刻版で作ってくれた。「自分がホットドッグをやめたら、もうソーセージは作られなくなってしまうから、ずっと販売し続けたい」と八木さん。「600円はホットドッグにしては高価だが、その人の気持ちからソーセージの仕入れ値を値切ることはできない」。パンは本牧で3店舗を展開するベーカリー「本牧館」の特注品を使い、IGの焼印を押して、ホットドッグが完成する。こちらはぜひ本牧で、実物を確かめてほしい。

四角いピザもホットドッグも、IGは昔の思い出が詰まった店だった。だからこそ、店内は懐かしい雰囲気に包まれているのかもしれない。

本牧住民の憩いの場所「ALOHA Café」


「アロハカフェ」は、1976(昭和51)年に創業。カフェバーの元祖としても知られている。現在の「ALOHA Café」は、オーナーは3代目に変わり、店も創業時の小港町から本牧原へ移転している。今は、どのような店なのだろうか。

移転後の本牧通りの店。場所が変わっても、ネオンは創業時のままだ


「アロハとはハワイの挨拶ですが、感謝や愛する気持ちを伝える言葉でもあります。素敵な言葉だと感動し、アロハカフェと名付けられたのだそうです」と話してくれたのは、現オーナーの河原奈里さん。

河原さんは本牧生まれの本牧育ち。「アロハカフェ」は地元の人が集まる場所だった。河原さんが社会人になって数年が過ぎた頃、「アロハカフェ」が閉店する話を聞き「だったら私が店を守る!」と、思い切って店を引き継いだ。

(中央)オーナーの河原奈里さん、(左)マネージャーの山口真志さん、(右)料理長の木下潤一さん(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


河原さんが2006年に引き継いだ時から、すでに旧店舗の老朽化は目立っていた。それでも店を元の場所で続けようとしていたが、老朽化により店舗の柱が朽ちてなくなっていることが判明。お店に来てくれているお客さんの安全の為にも移転を決意し、2014年に閉店。同年に、現在の本牧原に再度オープンした。

入口近くのビリヤード台は、旧店舗からもってきたもの


「名前を引き継いで移転したからには、自分が子供の頃、家族で利用していたように、地元の人に使いやすい店にしたい」と、新しい店作りが始まった。ビリヤード台や、看板のネオンなど、象徴的なものは前店舗からそのまま残した。

入口のヴィンテージの自転車など、センスよく飾られているインテリア。店の奥にはジュークボックスもある(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


普段は家族連れやデートなどで使えるカフェ。イベント時は飾り付けで賑やかな印象になる


禁煙・喫煙のほか、テーブル席、カウンター席やテラス席、赤ちゃん連れや年を重ねて杖が必要な人でも、エレベーターから入りやすい入口なども設け、幅広い客層が利用できるように工夫した。それぞれの席で雰囲気が違うのも特徴だ。

マネージャーの山口真志さんとは、オープン当初から新しい店作りに二人三脚で取り組んできた。料理長の木下潤一さんは、その腕に惚れ込み、一緒に働きたいと5年がかりで口説いて17年に合流した。木下さんは山下町の老舗レストラン「ローマステーション」で料理長も務めたほどの腕前。木下さんの合流を機に、オリジナリティあふれるメニューにも力を入れている。

がっつり肉を食べたい時はこちらを。「サーロインステーキ(アメリカ産牛ロース200g)」(2,000円)(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


「子羊のベーコンロール サルサヴェルテ」(1,780円)。ベーコンを巻いた骨つきの肉は臭みもなく、さっぱり食べられる。酸味のあるグリーンソースはパセリを使用(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


「本牧ピッツァ(写真はヘパロン)」(1,100円)は、本牧で唯一テイクアウト可(1,296円)。奥のドリンクは、セロリが丸ごと刺さった「ブラッディメアリー」(900円)など。(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


ここでも、四角い「本牧ピッツァ」3種(各1,296円)が味わえる。もともとは丸いピザだったが、本牧の四角いピザを出すことになり、"本牧のピザ”というものを細かく研究。全盛期に流行った形を守りながら、独自の本牧ピッツァを完成させた。生地は手打ち、トマトソースも手作りだ。

料理の味も確かだが、注目したいのは西山さんの思い。「『ALOHA Café』は自分の親の世代からある、本牧の風景です。旧店舗をなくす時には、お店を愛するお客さんからたくさん声をかけてもらいました。私がそうであったように、本牧に住む方たちが末長く使えるような店にしたいですね」。

このように本牧には古くから営業する店が、地元を愛する人の手に引き継がれ、営業を続けているケースも多い。歴史が語り継がれるように、形は変わっても創業者の想いがそのまま受け継がれている。そんな古き良き憧れを今に伝えるお店を訪れてみよう。

【取材・文/濱口真由美、構成/編集部、撮影/宮川朋久、写真提供/ALOHA Café】

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