創業124年、”ブタまん”で有名な「江戸清」代表取締役社長・高橋伸昌氏に中華街でのビジネスの秘訣を聞いた!
横浜ウォーカー
2019年で創業125周年を迎える「江戸清」。大きな”ブタまん”が看板メニューだが、横浜中華街で食肉の卸売業から始め、現在も業務用の精肉一次加工、ハンバーグやカツなどの食肉加工の卸売が売上の9割を占める。横浜中華街の中で日本人経営の企業として、発展を共にしてきた4代目社長・高橋伸昌氏にお話を聞いた。

お客様はほとんど日本人。だからこそ、中華街で日本人としてできること
「私の父である三代目社長・高橋柢祐(ていすけ)は、1971年に発足した横浜中華街発展会協同組合の初代理事長を務めているんです。なぜ、日本人である父が初代の理事長になったのかといえば、横浜中華街のお客様のほとんどは日本人であるということが理由の1つだったのではないでしょうか」と高橋社長。高橋柢祐前社長は、中華街のインフラ整備や中華街パーキングの設置など、中華街の発展に尽力した。
「私は生まれも育ちも横浜中華街です。今でこそ、中華街は店舗だけで自宅は別の場所というお店も多いですが、私が子供の頃は、1階が店舗で、家族はその上に住んでいました。中華街に住んでいるというと日本人の子供たちにからかわれたりしたものですが、私は子供の頃から店の手伝いで肉を扱っていましたからね、腕っぷしには自信があって(笑)。そんなことに負けていませんでしたよ」

「春節や関帝廟、媽祖廟は中国の方たちの文化を残していくための重要な手段だと思います。春節といえば、子供たちが大人に“新年好(シンネンパオ=あけましておめでとう)”というと、大人はお年玉をあげなければいけない、という風習もいいですよね。みんなで盛り上げていきたいと思います。伝統を守り、次の世代へ引き継いでいくのは、今の世代の義務です。最近は権利ばかりを主張する人が増えていますが、義務を全うしてこそ、権利を主張できると思います」と高橋社長。
「ただ、中華街では3世代、4世代目になって店を譲り渡してしまうケースも多くなってきています。私自身はいずれは家業を継ぐものだと思っていました。大学卒業後に就職した野村證券も3年くらい勉強して、家業に戻るつもりでいたのです。ところが野村證券での仕事が頑張れば頑張るほど楽しくなってしまって…、続けてもいいかと父に相談したところ、父からは“やってみろ”と。結局14年もいてしまいました」。そして1994年、高橋社長は野村證券を退職し、江戸清に入社する。
「父からは言われなかったのですが、母から、これからの江戸清にはどうしてもお前の力が必要だからと。もう泣き落としですよ(笑)」。高橋社長が家業に戻ってからも、江戸清の事業としてだけでなく、中華街、そして日本全体ともいえる危機に次々と襲われた。口蹄疫、BSEなどの家畜の疾病の問題、食肉偽装や、食中毒による風評被害、そして東日本大震災。日々の経営にいくら努力を積み重ねていても防ぐことが難しい外からの危機だ。
「東日本大震災のあとは、お客様も全く中華街を訪れてくれませんでしたが、そんな中でもお店を開け続けることが企業としての責任であるし、中華街は元気だと知らせるためにも頑張ってきました。そしてとにかく一人ひとりが心を込めて商品を作る。”報恩感謝”という言葉は、いつも自分自信にも社員にも言い聞かせています。自分や会社は、常に社会によって生かされている。自分一人では、何もできないということです。私は“江戸清”の袋を下げている方を見かけたら心のなかでいつも“ありがとうございます”とつぶやいています」。

人のために誠心誠意努力していれば、必ずいい巡りがやってくる
日々の努力を重ねていても環境によるピンチは必ずやってくる。そんな中、高橋社長を支えているのは何か。「成蹊大学の“成蹊”は、司馬遷の『史記』の“李将軍列伝”から引用されたのは有名ですね。“桃李不言 下自成蹊=桃李(とうり)もの言わざれど下おのずから蹊(こみち)を成す”。桃や李(すもも)は、話さないけれど、美しさや香りに惹かれて人がやってきて、その下には自然と小道ができるという意味です。つまり人格者は黙っていても、徳を慕って人々が集まってくるという意味ですね。同じ意味で、『論語』に“徳不孤 必有隣=徳は孤(こ)ならず 必ず隣り有り”があります」と高橋社長。ちなみに横浜が本店の書店・有隣堂は、この言葉から名付けられた。
「”報恩感謝”も“桃李不言 下自成蹊”も“徳不孤必有隣”も、世のため、人のため、地域のため、と思って頑張っていれば、運や縁に恵まれ、いい巡りがやってくる、そして常に感謝するということを肝に銘じています」。

異国の雰囲気が漂う中華街の中で、和の雰囲気を残す「江戸清」。中華街を代表する名物の1つである”ブタまん”のコピー「中身が2倍、美味しさ3倍」には、第一に"お客様に喜んでもらいたい"そんな思いが込められている。社長をはじめ、”人のために”という熱い精神に満ちた従業員の方や関係者の思いが詰まったホクホクの逸品を食べに出かけてみよう。
【撮影/後藤利江】
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