伝説の編集者・末井昭が母親とエロを語る! 自伝的エッセイ「素敵なダイナマイトスキャンダル」が実写映画化
関西ウォーカー
柄本佑の主演映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」(2018年3月17日公開)は、母親がダイナマイト心中を図った壮絶な過去をもつ雑誌編集者・末井昭氏の自伝的エッセイを実写化した作品。原作者で映画の主人公のモデルでもある末井昭氏が映画のこと、母親のこと、そして激動な時代をエロと生き抜いた裏話まで語ってくれた。

昭和のアンダーグラウンドカルチャーを牽引した伝説の編集者とも呼ばれた末井昭氏の数奇な運命を描いた本作。母親がダイナマイト心中した壮絶な過去をもつ主人公・末井が青年になり、さまざまな仕事や経験をし、新感覚のエロ雑誌を創刊する。発禁と創刊を繰り返しながらもエロ・カルチャーを築き上げていく姿をユーモアに映し出した作品。主人公の末井を柄本佑、母親を尾野真千子が演じ、前田敦子、三浦透子、峯田和伸、松重豊、村上淳ら個性派キャストが名を連ねる。監督は「パビリオン山椒魚」「南瓜とマヨネーズ」の冨永昌敬が担当。
──映画を観ると、末井さんの人生はハチャメチャだけど実にドラマティックだと感じました。原作は1982年で出版され、それから何度も復刊を繰り返していますね。1982年に発表された原作を今の人生観で振り返ってみてどうですか?
最低な奴ですよね(笑)今が最低じゃないかって言われると、そう一概に言えないですけど。そのころに比べるとマシかな(笑)

──原作を読んだ冨永監督からぜひ映画化したいと直談判されたそうですね。
直談判でもなくて、たばこ吸ってたら隣に冨永監督がいて「映画撮ってる冨永と申します」って。そのとき冨永監督のこと知らなくて「あ、そうなんですか」みたいな感じで返事したら「末井さんの『素敵なダイナマイトスキャンダル』を映画にしたいんです」ってぼそぼそと言うんですよ(笑)だから「いいですよ」って軽いノリで言ったら、それきりで。3年ぐらい前から実現に向けて動き出すことになって。
──「映画にしたい」と言われたときはどうでしたか?
まず、できないだろうって。あの作品は映画にするのは難しいだろうなと思いました。あとは「アレを映画にするの!?」っていうのも気持ちもありました。ろくなもんじゃないって(笑)

──原作にも掲載されていますが、若い頃の末井さんの写真が柄本佑さんにそっくりですね。
顔の作りが似ているわけじゃないんですよね。昔から一緒に仕事してきた編集者は、映画の柄本くんを見て、若い頃の僕にそっくりだって言うんです。周りの人からそっくりって言われることが多いですね。新著のチラシにも柄本くんに似ている若い頃の僕が載っているんです。
──末井さんの役を柄本さんが演じると聞いたときはどう思いましたか?あと、柄本さんとお会いしたときの印象を教えてください。
彼は凄い映画俳優だけど、なんか隣のお兄ちゃんみたいなんですよね。すごく気さくに話ができる人でした。だって初めて会ったとき、話した内容がオナニーの話ですからね(笑)自分が何回オナニーしたとか、そんな話、初対面で普通しないですよね(笑)
──ストリーキングのシーンでは末井さんもカメオ出演されていますね。柄本さんの演技を間近でご覧になってどうでしたか?
(撮影のときが)すごく寒かったんですよね(笑)。柄本くんも真っ裸で演技しているから寒そうで。またペンキも冷たそうだったから「いくぞ!」って気合い入れるんですけど、見てて面白かったです。僕が実際にやったときも11月で寒かったんですが(笑)

──ダイナマイト心中を図る母親は、尾野真千子さんが色気たっぷりに演じていますね。
贅沢なキャスティングですよね。母親も喜んでるかな(笑)喜んでるか、もうネタにするのやめてくれって言ってるかもしれないけど(笑)
──映画では家を出た母親がダイナマイト心中をする前に末井さんの顔を見に帰ってくる描写がありますが、原作では末井さんの記憶の曖昧さから幽霊かもしれないと表現されています。原作の解釈の違いについてはどう感じましたか?
文学なら多分あやふやな状態でも表現できるけど、映画って幽霊か本物かきっちり示してあげないとわかりにくいですからね。あのシーンは愛情を感じてジーンときました。

──末井さんが編集者として手がけた雑誌「写真時代」「ニューセルフ」「ウィークエンドスーパー」はエロの表現が今よりも自由で、そのためか警察とのやり取りがユニークに描かれていますね。
警察にはほぼ毎月行ってましたね。映画で出てくるようなグラビアについてのことを説明しながら、最後に始末書を書いて帰るパターン。毎月だったから、45回ぐらいは通ってました。そりゃ警察官とも親しくなりますよ(笑)
──個人的には菊池成孔さんが演じたアラーキー(荒木経惟)さんが印象的でした。
本当の荒木さんは菊池さんが演じたのより、もうちょっと喋り方とか言葉が早いかもしれない。荒木さんのスピードに乗っちゃうと、女の子は気づいたときには裸になっちゃってるんです。荒木さんは話のもっていき方がうまいんですよ。女の子は裸になるのが嫌だからおっぱいを隠すんですけど、それを見た荒木さんは「どうしたの?乳首、黒いの?」みたいなこと言って(笑)じゃあ女の子は「黒くない!」ってチラっと見せるんですよね(笑)

──あの時代を駆け抜けた末井さんから見て、コンプライアンスを避けられない今の日本をどう思いますか?
なんでも自主規制ですよね。あの頃は「問題は起こったときに考える」でした(笑)起こる前に問題を考えてもしょうがないじゃないですか。例えば、今はコンプライアンスを突き詰めていくと、写真すら撮れなくなるわけですよ。昔はモデルにヌードじゃないって約束したのに裸にしちゃって、後でプロダクションの人からものすごい怒られるってことがあったんです。今はそういうことは絶対にやらないと思う。「私が責任をとる!」って人がいないんだよね、きっと。
──今の時代って情報がありすぎるせいか、妄想力が昔ほど発達していないのかなって作品を観て感じました。劇中でのテレクラのような電話で女性のいやらしい声を聞いて妄想して興奮することって、今の時代にはないのかなと。
僕も高校卒業するまで女性と付き合ったことがなくて、妄想が膨れ上がっていましたからね。今では中学生でも付き合ったりしてるみたいだから、電話で妄想して興奮するってのはないかもしれないですね。ネットで簡単に見れちゃうから。xvideosなんか見ればいっぱい出てきますからね。僕もときどき見ますけど(笑)
映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」は3月17日(土)よりテアトル梅田、なんばパークスシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほかで全国ロードショー。
【関西ウォーカー編集部/ライター山根 翼】
山根翼
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