小手伸也、舞台初主演作で演じるのは“妖精おじさん”!?自己顕示欲と承認欲求を抱え「僕だけがずっと難色を示していた」
東京ウォーカー(全国版)
俳優・小手伸也と演出家・村上大樹がタッグを組み、シェイクスピア作品を現代版にアレンジして上演する“俺もそろそろシェイクスピア シリーズ”の第1弾『コテンペスト』が2026年6月27日(土)に東京・本多劇場で開幕する。
本作が初舞台主演作となる小手さんに、この企画が誕生した経緯やシェイクスピア「テンペスト」の魅力、作品が愛され続ける理由など、演劇人としての思いを熱く、そしてユーモアたっぷりに語ってもらった。
シェイクスピアは演劇の必須科目
――本作は“俺もそろそろシェイクスピア シリーズ”と銘打たれており、この先もさまざまな作品を展開していかれるかと思います。小手さんにとっては舞台初主演作にもなりますが、どのような思いですか?
【小手伸也】30年ぐらい舞台を続けてきた中で、シェイクスピアをモチーフにしているとか一部取り入れているとか、そういった作品の経験はあるものの、実は真正面からシェイクスピア作品を演じたことがないということに最近気づいたんですね。演劇の必須科目とも言える題材をちゃんと履修しないまま演劇を続けていいものかと、50歳にしてそういう意識が芽生えまして。周りからの一度やってみたらいいんではないかという後押しもいただき、実現することになりました。
シリーズとは言っていますが、アメリカのドラマみたいにシリーズ化をうたっておきながら…っていう可能性も、今は否定はできないんですよ(笑)。そこまで楽観視はしていないです。これはもう、評判次第。本当に皆様のお力にかかっておりますので、何卒、よろしくお願いいたします。
――題目を「テンペスト」に決めたのは、どんな経緯があるのでしょうか。
【小手伸也】演出の村上やチームと何をやろうか話し合い、シェイクスピア最後の単独執筆作品である「テンペスト」がいいのではないかということになりました。僕ら演劇人としては演劇史において重要な作品だと思っています。ただ、ほかの作品に比べて一般認知度は高くないこともあり、現代的なアレンジの余地がある…といったらおこがましい言い方ですが、この復讐劇を村上の手腕によって喜劇化していく、そういうシェイクスピアとの向き合い方を提案されました。
僕としては正直、「リア王」とか「マクベス」とか「リチャード三世」といった王様を演じてみたいという自己顕示欲と、「30年続けてきて、いよいよ小手伸也もそれなりにシェイクスピアのセリフをしゃべれるようになってますよ」ということを世間様に認めてもらいたいという承認欲求もあり、「正面からシェイクスピアをやりたいよ」っていうことを僕は散々申し上げてはいたんですけど、どうも伝わらなかったのかな(苦笑)。
村上とは学生時代から長く一緒にコメディをやってきた間柄でもあるし、当然こうなることは予測できたはずなんですけども。…非常に遺憾ながら結果的に申し上げると、彼から出てきた「コテンペスト(仮)」っていうタイトルのせいで、何が「俺もそろそろ」なのか僕自身サッパリわからない、真正面どころかかなり角度の入った作品になってしまいました。
――小手さんの主演作というのが前面に出て、かつ語呂もよく、すてきなタイトルだと思います。
【小手伸也】皆さん口をそろえてそう仰ってくれるんですけど、僕が背負うタイトルとしてはすごく気恥ずかしさが漂うというか、僕だけがずっと難色を示していたんですよ。代案も出したのですが、結果的には(仮)が取れて正式名称になったという…つまり先ほど「何故テンペストなのか」というご質問に対して申し上げたさまざまなことも、結局全部後付けであるということですね(苦笑)。村上が思いついちゃったからです。
早々に参加を表明してくださった鈴木保奈美さんを味方につけようとして、「このタイトル、どう思います?」とお話をしたら「めちゃめちゃいいタイトルじゃん」と言われて。「僕が欲しい答えじゃないですよ…」と思いつつも、そこから腹をくくったような感じでしょうか。
知っている人には新鮮に、知らない人も楽しめるステージに
――「テンペスト」は演劇史において重要な作品とのことでしたが、本作ではかなりアレンジが加えられるようですね。
【小手伸也】よくよく原作を読み返すと、意外とシンプルで現代的な再解釈もしやすそうな内容なんです。弟に地位を奪われたミラノ大公・プロスペローが無人島に流され、島に住むエアリアルという妖精の力を借りて復讐を企てるものの、なんだかんだあって最後に許すというお話。国を追われた者が自らの国を取り戻す、という壮大なテーマを描いているのですが、まさか、その島が地方の老舗百貨店に置き換わるとは思わなくて。
しかも、僕は原作でいうところのプロスペロー役だと思っていたら、まさか、その手助けをする妖精のほうだったんです。プロスペローの復讐を手伝わされるエアリアルが何を思っているかという目線で解釈したお話になっています。
――小手さんが演じるのは、妖精おじさんこと内木弁慶。花形の仕事から理不尽な人事異動をさせられた黒須太郎(崎山つばさ)の復讐劇に巻き込まれながら、白熊こずえ(鈴木保奈美)への恋心で奮起する役どころですね。
【小手伸也】復讐のために重労働を強いられる妖精が、復讐する側と復讐される側を両方見たうえで、なんかどっちも気に食わないぞ、となるわけです。復讐劇の外側にいる第三者による復讐という、新たな構造というのでしょうか。シェイクスピア作品の翻案で、おそらく古今東西見当たらないものになっているというおもしろさがあると思います。もともと「テンペスト」を知っている人には新鮮に映るかもしれないし、全く知らない人にとっても単純に楽しめる作品になるのではないのかな、と、そんな予感はすごくします。あとはもう、小手伸也が妖精を演じる、というワードの強さで勝負していくしかないと思っています(笑)。
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