今の気持ちをカクテルに。渋谷で出合う「グラスと歌詞のコトバ」の新しいBAR体験
東京ウォーカー(全国版)
重厚な扉を開け、静寂の中に身を置く。バーという空間には憧れるけれど、何をどう頼めばいいのかわからなくて、つい足踏みをしてしまう。そんな少しの緊張感を、ふわりと解きほぐしてくれる場所が、期間限定で渋谷にオープンした。
サントリー主催の体験イベント「BAR グラスとコトバ」。第3弾となる今回は、「今の気持ち」を選ぶだけで、バーテンダーがカクテルを仕立ててくれる企画だ。
期間も規模も拡大。前半は「歌詞」、後半は「言葉のプロによる書き下ろし」
昨年は約3900人が来場し、その後およそ300人が実際に街のBARへ足を運んだという。この体験をきっかけにバー文化を楽しんでほしいという主催者の思いから、今年は開催期間を約1カ月へと大幅に延長し、座席数も全24席に拡大した。
さらに今回は、日程によって2つの異なるテーマが用意されている。2026年7月7日から21日(火)までの前半は、ソニーミュージックとのコラボレーションによる「グラスと歌詞のコトバ」。King Gnu、YOASOBI、緑黄色社会など、豪華120組ものアーティストの楽曲から選ばれた「歌詞」を手がかりにカクテルを注文するという、音楽好きにはたまらない趣向だ。
そして、7月23日(木)〜8月3日(月)の後半は「グラスとみんなのコトバ」へとテーマが切り替わる。こちらには、カツセマサヒコ、モモコグミカンパニー、木下龍也など、言葉のプロフェッショナル総勢17人がこのイベントのために書き下ろした特別なコトバが並ぶ。ふとした感情の揺らぎや、まだ名前のついていないような複雑な気持ちを代弁してくれるコトバに出合えるはずだ。
さらに、夏本番を迎えるこの期間だけの限定として、夏らしいカクテルメニューが約10種も追加され、よりバリエーション豊かに。どちらの期間も、カクテルのプロフェッショナルであるバーテンダーたちが、選んだコトバの気分に応える最高の1杯を仕立ててくれる。
無数のグラスが輝く「GLASS ROOM」で、今の気分を探す
今回、メディア向けの内覧会が開催されたので、筆者もさっそく体験してきた。会場となるのは、SHIBUYA CAST. SPACE。エントランスを抜けると、まずは「GLASS ROOM」へと案内される。
黒を基調とした空間。白い照明にきらきらと照らし出されているのは、ロックグラスにカクテルグラス、ブランデーグラスなど、目移りしてしまうほどの数と種類のグラスたち。多種多様な空のグラスがずらりと並ぶ光景は、別世界のようだ。この空間はすべて自由に撮影可能。お気に入りのコトバとグラスを手に、SNSでシェアしたくなる1枚を撮るのも楽しい。
グラスのそばには、イベントのテーマに合わせた「コトバ」がデザインされたコースターがスタンドに立てられている。ここから、今の自分にピタリとはまるコトバを選ぶ仕組みだ。前半期間は、多彩なアーティストの楽曲から切り取られた歌詞のワンフレーズがずらり。どれも心に響く言葉ばかりで、「どれにしよう?これもいいな。あ、あの曲の詩かな?」と、思いを巡らせながら1つを選ぶワクワクがたまらない。
ちょうど夏のセール時期で頭を悩ませていた筆者の目に留まったのは、「あれがほしい これもほしい」という率直すぎるコトバ。うん、今の気分はまさにこれだ。お気に入りのコトバとグラスを手に、奥の「BAR ROOM」へと足を踏み入れる。
「BAR ROOM」で味わう、私だけの1杯
そこは、2つの長いカウンターテーブルが据えられた、上質な大人の空間。席に着き、バーテンダーに先ほどのグラスとコースターをそっと手渡した。
カクテルを待っている間、バーテンダーに促されてコースターの裏側に印字された二次元コードをスマホで読み込んでみる。すると、Spotifyの画面がぱっと立ち上がり、選んだ歌詞の楽曲へとリンクした。w.o.dというバンドの「TOKYO CALLING」。偶然選んだコトバから、知らない楽曲、知らないバンドにつながる。そんな思いがけない出合いもうれしい。
カチャカチャっと氷が静かな音を立て、目の前で鮮やかにカクテルがステアされていく。
「『あれがほしい これもほしい』ということで、カクテルの王様、マティーニです」
バーテンダーの心地よい声とともに透き通った1杯が目の前に置かれ、一流の解説に耳を傾けながらゆっくりとグラスを傾ける。肩肘張らず、自分の気持ちのままにお酒と向き合える穏やかな時間だ。
ちなみに、ノンアルコールカクテルやアルコール度数の調整にも柔軟に対応してくれるため、お酒があまり得意でない人も心配はいらない。この本格的なバーの空気が、カクテル1杯付きで1000円という手軽さで味わえるのもうれしいポイントだ。
次の扉を開ける、小さなきっかけ
帰り際、バーテンダーから名刺と、特別なカクテルブック、そして何も書かれていない真っ白なコースターを手渡された。
「この余白に今の気分を書いて、対象店舗にいらしてください。その気分に合わせたカクテルをご用意します」
それは、実際のバーへ足を運ぶきっかけをくれる、気の利いたチケットのよう。もらった無地のコースターをカバンに大切にしまい、会場をあとにした。帰路の途中にイヤホンから流したのは、先ほど出合ったばかりのw.o.dの「TOKYO CALLING」。心地よい音楽とともに渋谷の街を歩きながら、次はどんなコトバを書いてお店に行こうかと思いを巡らせる。少し敷居が高く感じていたバーの扉も、今の筆者ならすんなりと開けられそうだ。
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※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。
取材・文・撮影 = 北村康行
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